嵐天下の中、演習を行う88(cm)艦隊。
 そのなかでも異端の色を放つ空母<藤田>は敵軍艦隊の水雷戦隊の攻撃にさらされていた。
「今日という今日は逃さないわよ!」
 水雷戦隊は強力な通信設備を持つ通信艦<長岡>艦長の強引かつでたらめな指示を受け(るフリをしつつ)、<藤田>をおいつめる。
「なんでいつも俺に突っかかる!?」
 と悲鳴を上げつつ操艦を続ける<藤田>艦長。
 彼がもうこれまでかと思った、そのとき!
「!」
 突如、敵水雷戦隊と<藤田>の間に割り込む一隻の小艦艇があった。
 水雷艇、<神岸>。<藤田>の直衛艦である。目立たぬ艦であるはずの水雷艇は瞬く間に水雷戦隊の各艦を翻弄、<藤田>を援護する。
「なぜただの水雷艇ごときに!」
「違います、艦長! あれは<神岸>です。<神岸>は普段は全くと言っていいほどぱっとしない、性能もあまり良くない水雷艇でありますが、なぜか<藤田>の援護につくときのみはすさまじい攻撃力を発揮します。援護の仕方はまるで<藤田>性能を知り尽くしている感です。その姿は主人になつく”犬”そのもの! <藤田>に近づく艦はみな殲滅すると非公式に公言もしております。危険です、艦長! このままでは、我々も」
「この艦をなんだとおもっているの? GFのもっとも信用されている情報源たる<長岡>よ。あちらが怪物ならこっちも怪物。受けてたとうじゃないの」
 信用されているのはその情報の不確かさじゃないかと思う人間大多数だったが、艦長にそれをいうわけにはいかないので皆だまっていた。
 数分後、大破の判定を受けた<長岡>は遁走する<藤田><神岸>の後ろ姿を見送っていた。
「きぃぃー、むかつくぅー!」
 屈辱の色を顔にうかべる<長岡>艦長だったが、その他の人間はこの程度ですんだことを己の幸運として認識していた。
 なぜならば、彼らは水雷艇<神岸>の船腹に表記されているその艦の名の二文字目が、いつのまにか”岸”から”城”に変わっていたことを知っていたからだった。