〈鈴原《エムス》琴美〉
ヘッドライン
最近の更新
連絡用掲示板 / 各種艦艇 / 〈長岡《加賀》志保〉 / 大ドイツ連邦軍指揮体制私案(2015年) / 世界設定 / ヘーアに関する覚え書き / クリーグスマリーネに関する覚え書き / ルフトヴァッフェに関する覚え書き / 大ドイツ帝国の年代別状況 / その他兵器
〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉/ドイツ海軍航空母艦〈鈴原《エムス》琴美〉Flukzeugtrager Suzuhara-EMS-Kotomi,KM
(元ネタ:Active 「ねがぽじ〜お兄ちゃんと呼ばないでっ!!」より鈴原琴美)
〈鈴原《エムス》琴美〉は不運な艦である。
同艦は1930年代、アメリカの中堅海運会社、ベルフィールズ・シーラインが〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉として、社運を賭けて建造した豪華客船であった。その外観、内装は豪華にして典雅、「天然お嬢様100%」との異名を取る美しい客船だったと言われている。
今、「言われている」と伝聞形で書いた。なぜなら、同船の資料はほとんど散逸してしまい、特に外見について記した記録…設計図や写真が残っていない為である。それらは1948年の第三次世界大戦勃発―ドイツ北米総軍の合衆国侵攻と、その後の混乱の中でベルフィールズ社自体が消滅した為に失われたのである。そして、ドイツ海軍に鹵獲された同船の運命もまた、大きな…そして、悲劇的な転換を余儀なくされる。
ニューヨーク港で鹵獲された当時の〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉は、調査の為に内部に入ったドイツ海軍の技官によって、船体に余裕があり、機関も強力な事が確認され輸送任務よりも空母化が適当であると報告された。これを受けて同船はただちに欧州に回航され、改装工事を受ける事となった。
大西洋の覇者となったドイツ海軍であったが、それでも空母戦力では日英の強大な空母機動部隊に劣っており、今後、やはり強力な空母部隊を持つ合衆国が敵として参戦する事を考えれば、空母の数はいくらあっても足りなかった。使える船であれば、次々に空母に改装する事が求められていたのである。そうした意味では、豪華客船であって貨物輸送に適さない〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉は空母化にぴったりの船であるはずだった。
しかし、彼女の速力は、実際には23ノットと空母としては低速なものだった。ドイツ海軍の「マスコット・ガール」〈愛沢《ライン》ともみ〉と比較しても5ノットも遅く、第一線で使うには不安の残る性能であった。
さらに、彼女の設計図がワシントンでベルフィールズ本社ごと反応弾の炎に焼き尽くされていた事も、不安の材料だった。ドイツに到着した〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉に対し、設計局はできる限りの調査を行ったが、〈愛沢《ライン》ともみ〉のような性能への改造は無理であると判断した。
そこで、ドイツ海軍が打ち出した方針は、練習空母への改造だった。これまでのドイツ海軍は外洋海軍への脱皮を果たすべく、ひたすらに己の戦力を高める事に腐心してきた。そう、まるで位階を高める事を望む天使のように。
だが、これからはようやく築き上げてきたものを後進に継承させる為の努力をするべきだ。そうした意見を受け、〈鈴原《ユナイテッド・ステーツ》琴美〉の練習空母への改造が始まった。
それまでの上構は、これから空母になる同船には不要であるとばかりに「首を落すように」ばっさりと撤去され、代わりに格納庫と飛行甲板、そして小さな島型艦橋が設置された。〈鈴原《エムス》琴美〉と改名されたのもこの時である。
改造を完了した〈鈴原《エムス》琴美〉は滅多な事では枢軸軍の手が及ばないバルト海に配備された。それは、さながらショッピングセンターの空き箱の陰に大事なものを隠すような慎重さであった。そこで、彼女は練習空母として、多くのパイロットを育て上げる事になる。彼女はこの戦争中、ひたすら自分を建造したのではない勢力の為に奉仕させられ、パイロットを生み出す「母体」として扱われたのだ。
しかし、不思議な事に、この時代の写真や図面も現存しておらず、彼女の正確な外見は全くの謎である。一説によれば、合衆国の設計した船体にドイツ式の艤装を施した為、極めて醜い艦容になってしまったからだ、とも言われているが真偽のほどは定かではない。
そんな〈鈴原《エムス》琴美〉に、遂に最期の時がやってきた。1952年、欧州連合最後の大規模攻勢作戦<北の暴風>において出撃した彼女は、枢軸軍空母機動部隊の猛攻を受け、大破。漂流状態に陥った。
追撃中の〈広場《バンカーヒル》まひる〉を中核とする部隊は漂流中の〈鈴原《エムス》琴美〉を発見して息を呑む。そんな状態でも、彼女は降伏せず、生き残った火砲をもって反撃してきた。それは、まるで意志のない操り人形同然の姿だった。
気勢を殺がれた〈広場《バンカーヒル》まひる〉以下にかわって〈鈴原《エムス》琴美〉に止めを刺したのは、後方にいた〈広場《プリンストン》ひなた〉の艦載機だった。彼女から放たれたTBFアヴェンジャーによる雷撃が命中、既に傷付いていた〈鈴原《エムス》琴美〉は真っ二つに折れて沈没し、彼女の自由を奪われた生涯は幕を閉じたのである。
【要目】
- 基準排水量 12.900トン
- 全長 203メートル
- 全幅 24メートル
- 速力 23ノット
【兵装】
- 高角砲 10.2センチ単装 6基
- 機関砲 20ミリ連装 16基
- 搭載機 推定23〜25機
会議室を出る