トップ 新規 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

〈里村《海鳳》茜〉

ヘッドライン

最近の更新

各種艦艇 / 〈長岡《加賀》志保〉 / 大ドイツ連邦軍指揮体制私案(2015年) / 世界設定 / ヘーアに関する覚え書き / クリーグスマリーネに関する覚え書き / ルフトヴァッフェに関する覚え書き / 大ドイツ帝国の年代別状況 / その他兵器 / 日本帝国陸軍歩兵火器に関する設定案

〈里村《海鳳》茜〉 Aircraft Carrier Satomura-KAIHOU-Akane,IJN

Tactics「ONE〜輝く季節へ〜」里村 茜


 〈長森《大鳳》瑞佳〉級2番艦。艦を示すエンブレムは「パラソル(傘)」である。
 1番艦〈長森《大鳳》瑞佳〉とともに東太平洋海戦(1943)を皮切りにカリブ海、北大西洋と転戦し、歴戦の艦として海軍部内に高い人気を誇っていた。ルフトヴァッフェの三日連続昼間強襲をしりぞけるなど武勲も数多く、自由ベルギー軍兵士が乗り組んでいたことから激甘なベルギー・ワッフルが戦闘食として配られるなどほほえましいエピソードにも事欠かない。しかし悲運の艦という印象がつきまとうのは、その悲劇的な最後によるものかもしれない。

雨〜第2次クレタ沖海戦〜


 1951年におこなわれたクレタ島奪還作戦(総旗艦〈KGV〉、サー・トーマス・フィリップス中将指揮)に〈里村《海鳳》茜〉は参加している。その1月26日、航空支援の行動中に独伊空軍の攻撃を受けた。
 独伊連合の当初の作戦構想では、ドイツ第8航空艦隊が敵機動部隊への主攻を担当し、イタリア空軍独立第88航空群(グルッポ)が陽動を実施するはずだった。しかし囮としてすりつぶされることに憤ったイタリア空軍前線部隊(司令フェラーリン大佐)が全てをひっくり返してしまった。
 フェラーリン大佐率いるマッキ〈神楽坂《MC208》潤〉隊と、マルコ・パゴット少佐のサボイア・マルケッティSM97隊(SM79と誤記されることが多い)とに分かれてギリシア本土を進発し、戦域を大きく迂回してドイツ空軍が枢軸軍機動部隊に攻撃を開始した後になって到着したのである。
 〈里村《海鳳》茜〉をはじめとする枢軸軍機動部隊は先に殴りかかってきたドイツ空軍機を全力で迎撃した。枢軸軍はカリブ海での経験からイタリア空軍(レジア・アエロノーティカ)の実力を過小評価しており、脅威度の高いドイツ空軍機を先に排除すべきと判断していた。
 事実、ドイツ空軍の力は侮れなかった。カリブ海の戦訓から防空艦をまず潰し、防御火網に空いた穴から主力攻撃隊を送り込もうとしたのだ。枢軸軍機動部隊もカリブ海航空戦を彷彿とさせる猛烈な火網で迎撃した。
 ドイツ空軍の戦術は功を奏し始めていた。狙い撃ちにされた〈相沢《秋月》祐一〉級防空駆逐艦〈柚月〉は自艦を守るために転舵しなければならなくなり、防御陣形が崩れ始めた。なだれ込んでくるドイツ空軍機を阻止すべく全艦隊の砲火が攻撃隊に向けられたとき、反対方向からイタリア空軍フェラーリン隊とパゴット隊が突入してきたのだ。

 マッキ〈神楽坂《MC208》潤〉は開発当初はレシプロ機だったのだが、設計者のマリオ・カストルディはジェット・エンジンをも搭載できるようにしていた。枢軸軍が知っているマッキ〈神楽坂《MC208》潤〉の姿は、カリブ海でのプロペラ推進しているものである。待望のジェット・エンジンを得て容姿を激変させたマッキ〈神楽坂《MC208》潤〉は、恐るべき高速で枢軸軍の防空輪形陣をぶち抜き、枢軸軍に対応の時間を与えなかった。
 独立第88グルッポの狙いは空母を1隻でも無力化することであった。結果、彼らの進撃路にいた〈里村《海鳳》茜〉に攻撃が集中した。進撃路の途上にいた英国海軍S級駆逐艦〈サウス〉をフェラーリン大佐が対艦誘導弾〈ドライザック機咾琶敢佞掘⇔愀楚悗瞭睇瑤北り込んだ。フェラーリン隊10機は、〈ドライザック機咾魄貔討鉾射した。〈里村《海鳳》茜〉に命中した数は4発に及ぶ。フェラーリン隊の開けた穴に続いて、雷撃を担当するパゴット隊12機が突入した。

 〈長森《大鳳》瑞佳〉級の飛行甲板装甲は厚さが最大95ミリに達するが、格納庫側面の装甲はそれほど厚いわけではない。重装甲の結果として高くなりがちな重心を、これ以上あげる訳にはいかないからだ。800キロ以上の速度で突入した〈ドライザック機咾蓮薄い装甲と居住区を破って格納庫内に飛び込んだ。そこには爆装状態で待機していた攻撃機があった。
 250キロ弾頭の爆発と、ロケット燃料の焼夷効果により〈里村《海鳳》茜〉の格納庫は瞬時に焦熱地獄と化した。攻撃機は立て続けに誘爆し、整備員達を吹き飛ばした。重量100トンにもなるエレベータが甲板上に吹き上がった。
 悪いことに、〈長森《大鳳》瑞佳〉級の弱点(日本空母すべてに共通する弱点だった)である弾薬庫から飛行甲板まで直通する揚爆弾筒の無防備さにより、弾薬庫に火が回りかけた。火の着いた機体の一部が、弾薬庫エレベータの格納庫内開口部に転げ落ちたのである。弾薬庫の温度上昇でこの事態を知った艦長O大佐は、弾薬庫区画への緊急注水を命じた。この処置により辛うじて〈里村《海鳳》茜〉は爆沈を免れた。
 そこにSM97隊の放った航空魚雷3本が命中した。常備排水量5万トン超の船体は鳴動した。命中箇所は幸いなことに4層の隔壁で守られている缶室であった。わずか2層の航空燃料タンク付近に命中していたならば、これまた爆沈していたであろう。
 しかし、その事実は僅かな慰めにもならず、〈里村《海鳳》茜〉を襲う炎は収まらない。閉鎖型格納庫のため燃えている航空機の投棄もままならないのだ。排水管は残骸で埋まってしまい消化剤の排水すらできなくなってしまった。被雷による浸水も危険なレベルに達しつつあった。
 断末魔にあえぐ〈里村《海鳳》茜〉が沈まなかったのは艦長O大佐以下、艦乗組員の努力のみならず暴風雨の下に逃げ込めたことと、付き添った〈柚月〉〈澪月〉の奮戦によるものだった。〈柚月〉は長12.7センチ高角砲で〈里村《海鳳》茜〉に防空の傘をさしかけて、追撃せんとする独伊空軍を牽制した。〈澪月〉自身もマスト基部に誘導弾を被弾(不発だった)してマスト倒壊、通信室破損により手旗信号でしか通信できないという状態でありながらも、消火に乗員救助にと、くるくると走り回って目が回るほどだった。
 そして〈里村《海鳳》茜〉はアレクサンドリアにかつぎこまれるように帰港できたのだが、そこで力尽き着底してしまった。

 クレタ島の奪還には成功し東地中海の制空権を確実なものにしたものの、〈里村《海鳳》茜〉の惨状は勝利に驕りかけていた枢軸軍首脳部にガラスが割れた音を聞かせた。欧州連合軍は戦意を失ってはいない、と。
 欧州連合では不沈を誇った〈長森《大鳳》瑞佳〉級を大破着底せしめた、ということでゲッベルス麾下の宣伝省が勝利を喧伝している。連合軍艦艇の損害が相次ぐ中、久々の明るいニュースだからだ。
 その「勝利」に対する報復として、枢軸軍はポートサイドに展開させた爆撃兵団にバクー、マイコプ、プロエシチの各油田に対する絨毯爆撃を開始させた。斯くして、ドイツの柔らかい下腹部を舞台に激烈な航空戦が戦われる。

 着底した〈里村《海鳳》茜〉へは、すぐさま大々的な調査団が日本からアレクサンドリアに派遣され、忘れてはならない戦訓が調査された。そしてその戦訓は以後の戦闘と日本空母の構造に強い影響を及ぼす。
 まず対艦誘導弾の脅威に対抗するため、より遠距離での探知の徹底と対空射撃管制盤の強化を図ることになった。総合的な対空指揮管制能力の向上も図らねばならない。そのために〈折原《吉野》浩平〉の指揮統制艦への改装が決まった。搭載機数が護衛空母なみに減少した空母の格納庫に、指揮管制用の機器(試験中の統制システム「ウィッチ・リング」が搭載された)や電算機を積み込み、艦隊司令部用の戦闘指揮所を設けるのだ。コロンの浮きドックに入渠した〈折原《吉野》浩平〉の改装と習熟訓練には初冬までの時間が必要となった。これら枢軸軍の努力は、ほぼ1年後に発生したノルウェー沖海戦において報われることになる。
 1年で対処できないのは艦の構造に関する戦訓だった。完全閉鎖式の格納庫は改められ、閉鎖式と開放式の利点を折衷しかつ飛行甲板の強化に有利だったことから舷側エレベータが採用される。弾薬は一旦格納庫甲板にあげられ、水平方向に移動したのち装甲化された専用エレベータで飛行甲板へ揚げられるようになった。これは合衆国の〈エセックス〉級空母の構造が参考にされた。 他には防火設備の強化、航空燃料供給方法の誘爆対策がおこなわれ、ダメージ・コントロールの訓練も強化されることとなった。
 こうして、すでに就役している〈長森《大鳳》瑞佳〉級には大規模な改装がおこなわれることが決定されたが、それには第3次世界大戦の終結を待たねばならない。さらに〈小出《葛城》由美子〉級や〈宮田《飛天》健太郎〉も誘爆対策の改装をおこなうことが決まっている。

 あの大破した日の2年後、すでに退役したO元艦長以下かつての乗組員(〈柚月〉の乗組員も混じっている)はアレクサンドリアに集まった。〈里村《海鳳》茜〉はアレクサンドリアに着底したまま解体されることが決定したからだ。浮揚修理するより新造した方が早い、という理由だった。戦争の終結も影響している。人員規模の縮小した日本海軍では〈里村《海鳳》茜〉までも維持できなかった。
 銀色に光る雨のそぼ降る中、彼ら乗組員一同は〈里村《海鳳》茜〉に献花し、敬礼を捧げた。
 それが、永遠の別れであった。

要目

  • 基準排水量 45000トン
  • 常備排水量 56000トン
  • 全長 295メートル
  • 全幅 35メートル
  • 主機 艦本式オール・ギヤード・タービン4基4軸 200000hp
  • 速力 32.5ノット

武装

  • 10センチ連装高角砲8基
  • 40ミリ連装機銃32基
  • 25ミリ3連装機銃40基
  • 12センチ28連装対空噴進砲8基
  • 搭載機 最大94機(格納庫内82機+露天繋止12機) 昭和17年時点
  • 飛行甲板 292メートル×38メートル
  • 装甲
    • 飛行甲板95ミリ
    • 舷側55〜165ミリ

同級艦