〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉

〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉

フェアリーテール「Natural2-DUO」萌木玉緒

　イタリアで始めて両用砲を主砲とし、防空能力を一気に高めた〈コマンダンテ・メダリエ・ドロ〉（受勲者）級駆逐艦のテストタイプとして先行建造された艦、著名な海戦に参加して武勲を挙げたことでも名高い。
　備砲は同じ１３．５センチ両用砲だが連装２基、単装１基として配置したため（＊注１）艦容は前級〈ソルダティ〉（兵科）級に近いロー・シルエットとなっている。
　また、名造船官として著名なヴァスティコ・アゴスフェーラの手がけた最初の艦船でもあり、実用性の高さとレーダー搭載を最初から考慮したマストにその特徴が観て取れ、実際就役後はさまざまなレーダー（リボン型）を搭載。
　極めて実用性の高い駆逐艦であり、１９４２年から１９５１年までの間に総計５４隻（南部連合用を引き取った４隻含む）が着工、そのうち４２隻が完成してＷＷ２からＷＷ３までの主力駆逐艦として活動することとなる。大きく分けて原型の第1グループ、缶室分離配置の第２グループ、南部連合用を引き取った第３グループ、最初から自動砲を搭載し航続力を伸ばした第４グループがある。
　その一番手として完成した〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉は就役後、駆逐艦らしく艦隊の「妹」たる存在として護衛や戦闘に活躍。特に彼女が護衛すればその防空能力の高さから大抵輸送船は無事であり、港は物資を受け取るお客たる補給部隊で大繁盛。輸送部隊からは「寝ても醒めても忘れられない」と称され、英日潜水艦や航空部隊からは「破壊力（対空と対潜の？）が高過ぎる」と嘆かせた。
　ＷＷ３ではカリブ海艦隊に所属、ドイツ北米艦隊で不採用になった塗装パターンを独自にアレンジして〈鳥海《ヴェネチア》空〉と戦隊を組み「お兄ちゃん（護衛）歴」の長さを生かして支援や補給に活動。地中海に戻った後は〈高山《アッティリオ・レゴロ》小麦〉と共に〈霧島《ローマ》佳乃〉のアドリア海派遣時の護衛を担当、最後は５２年１月のエオリア諸島襲撃戦にマリアーニ艦隊の旗艦として参加、卓尾の一撃を加えている（＊注２）
　第三次大戦後は掃海母艦としてポテトコロッケばかりの食事にもめげず活動、その後はアイルランドにジャガイモとのバーター取引で〈メイ《エスポシーコ》〉（〈イェーツ〉）とともに引き渡され、〈レディ・グレゴリー〉と改名、同国海軍の礎として長く活躍している。
　本級は他の列強国駆逐艦が大型化する（日本の〈満月〉級に至っては約５０００トンとなった）中では２０００トン台はいかにも小さく第三次大戦後半では苦戦を強いられたが、最後まで駆逐艦の本分である軽快さと運動性の良さは失われず、艦隊の「妹」をまっとうしたと言えよう。


＃注１：他は単装４基の背負い式配置
＃注２：これについては木俣滋郎氏による「なぐり込み艦隊」が詳しい。

要目（〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉：新造時）

• 基準排水量　2067トン
• 常備排水量　2702トン
• 全長　120.7メートル
• 全幅　12.3メートル
• 喫水　3.6メートル
• 主機　ベルッツォ・ギアードタービン２基／２軸
• 主缶　ヤーロー缶３基
• 出力　６００００馬力　速力　３５ノット
• 航続距離　１５ノットで２０００海里
• 兵装
  • ４５口径１３．５センチ連装両用砲２基
  • ４５口径１３．５センチ単装砲１基
  • ５４口径３７ミリ単装機銃１２基
  • ５３．３センチ３連装魚雷発射管２基
  • 爆雷投射機４基
  • 機雷５２個

同型艦

• 試作タイプ：〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉　１９４２年６月８日竣工　
• １９５７年アイルランドに売却、〈レディ・グレゴリー〉と改名、１９９７年除籍

（これ以後、全艦名の先頭に「コマンダンテ」が付く）

• 第１シリーズ
• 〈バローニ〉〈ボルジーニ〉〈ボッティ〉〈カサーナ〉
• 〈デランノ〉〈ディ・クリストファーロ〉〈マルゴッティーニ〉〈ルータ〉
• 〈トスカーノ〉〈フォンターナ〉〈コルシ〉〈ジオッペ〉
• 〈モッカガッタ〉〈ノヴァーロ〉〈ロドカナッチ〉

• 第２シリーズ（２１２０トン）
• 〈メイ《エスポシーコ》〉〈ミラーノ〉〈ジョルジス〉〈フィオーリ〉
• 〈カルドヴイッチ〉〈アルフィエリ〉〈バティスティ〉〈ミラベロ〉

• 第３シリーズ（本来南部連合用を同国崩壊のため引き取ったもの：形容詞艦名：２４２０トン）
• 〈《クリオシーネ》よしみ〉〈《ペレクーセ》ひとみ〉〈ヴィバーゼ〉〈ポスティボ〉

• 第４シリーズ（風艦名：２３５０トン）
• 〈シロッコ〉〈テセオ〉〈ディボーレ〉〈ポパ〉
• 〈テンペスタ〉〈ブラッシア〉〈ブレザ〉〈トラモンタナ〉
• 〈マリネーロ〉〈カルマ〉〈ブフェーラ〉〈ミストラル〉
• 〈ガレルナ〉