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〈芳乃《ラファールD》さくら〉

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ダッソー〈芳乃《ラファールD》さくら〉 Dassault RAFALE D

Circus「D.C.〜ダ・カーポ〜」芳乃 さくら


 ドイツ海軍機動部隊の主力をになう小型軽量多目的戦闘機(注1)。箒に乗った魔女のエンブレムで著名である。 航空機の「魔法使い」アレクサンダー・リピッシュが提案した無尾翼デルタ翼機の正統な後継であり、子供な見かけによらず高いポテンシャルを秘めていて、多彩な任務に活躍している。 ルフトヴァッフェの主力戦術戦闘機フォッケウルフFw401〈朝倉《ファルケ》音夢〉からは「魔女(キルケ)」と呼ばれて忌み嫌われた。

開発の経緯


 本機の開発生産はフランスのダッソー社。自国の技術を誇って止まないドイツがフランス製航空機を採用するという珍しい事例であるが、それにはルフトヴァッフェとクリーグスマリーネとの確執が背景にある。
 第3次世界大戦後、反応動力潜水艦を中心に戦力の再建を図ってきたドイツ海軍は、60年代に軽空母〈古坂《オーデル》綾〉(注2)と回転翼機搭載空母〈愛沢《ライン》ともみ〉が相次いで退役したこともあって、空母機動部隊復活の途を探ることとなった。海軍の任務の一つとして、ヨーロッパ本土と北米東部を結ぶ航路を維持しなければならず、反応動力潜水艦では制海権の確保はできないからだ。
 研究が始められると、早速立ちはだかったのが搭載機の問題だった。空母そのものの建造は、容易ではないとはいえドイツ海軍にとってできないことではなかったが、搭載機ばかりはどうしようもなかった。空軍とは多少の雪解けがあったものの、日本機動部隊を長距離ミサイルで迎撃する作戦計画の主導権争いがあったからである。空軍にいじめ抜かれてきたハインケルは弱体化してフォッケウルフに吸収されていたので、空軍省で採用されなかったハインケル機を確保することもできなかった。となれば国外のメーカーより選ぶ他はない。
 ドイツ海軍が艦載機メーカーの選定を進めているとき、フランスのエンジン・メーカーSNECMA社が経営危機に陥っていた。ドイツ空軍の激しい「いじめ」にあってフランス戦闘機の輸出が伸びないが為であった。
 救いの手をさしのべたのは、1972年に海軍総司令職を辞したゲオルク・S・ノルトマンである。国外に多くの知己を持つ彼は、ドイツ海軍はヨーロッパ諸国の海軍と共同してPACTOに当たらねばならないと考えていたし、海軍内部に多くの賛同者を得ていた。中でも空母運用に経験の長いフランスとは協力関係を維持しなければならない。イタリアは日本地中海艦隊と向かい合わねばならず、大西洋で共闘できるのはフランスに東部連合だけだからであった。そう言うときに、フランス空海軍へのエンジン供給を担うSNECMAが倒産する事態は避けるべきだった。
 折良く、ドイツ空軍の戦闘機マフィアがLGJ(軽量戦闘機)計画を発足させており、ノルトマンはフランス政府にSNECMA社がLGJ計画に参加するよう奨めたのである。フランス国内でもACT計画やACM計画があることを見越してのことであった(注3)。同じ時期にドイツ・アルグス社も債務不履行に陥りかけており、アルグスにSNECMA製エンジンをOEM供給することで両社を救済できた。
 かくして、SNECMAのM88エンジンに大量発注の見込みが出たことで信用の回復がされたのだった。

 SNECMAを救うことになったM88エンジン(アルグスでの名称はAs488)を2基搭載するのが、ダッソー〈芳乃《ラファールD》さくら〉である。彼女の開発はLGJ計画に参加すべく大車輪で進められ、ライバルとなるフォッケウルフのP401よりも数ヶ月早く進空している。そして1975年に、ACX(試作戦闘用機)のデモンストレーションがルフトヴァッフェのお歴々の前で披露されたのだが、結果は敢えなく落選であった。
「なぜ?どうして?Why!?」とダッソーの技術陣は叫んだが、ルフトヴァッフェは騒々しい従姉妹よりも、おとなしい親戚の子どもを引き取ることを選択したのである。そのおとなしかった筈の子どもが無意識の計算高さを発揮することになるのは、遠い未来のことではない。
 ともあれ、ACXはドイツ海軍が採用することとなり、〈芳乃《ラファールD》さくら〉と名付けられたのである(注4)。量産型初号機は1980年に初飛行し、翌年に部隊配備が開始された。しかしドイツ海軍の空母は建造中なので東部連合へ留学することになった。この別れの時、〈朝倉《Ar707E3》純一〉と何か約束したと言われているが、内容は定かでない。

魔女の帰還


 東部連合での留学から戻った〈芳乃《ラファールD》さくら〉飛行隊は、早速教導部隊として後進の指導にあたることになった。小さいさくら先生ばかりでなく、フランス〈里見《ラファールC/M》こだま〉飛行隊が吹かすお姉さん風にドイツ海軍航空隊は振り回されることになる。
 唖然とする者、教官の頭を脇に抱え込んでぐりぐりする者、「はい、撤収〜」と呆れている者と反応は様々だったが、何はともあれ授業は進んでいくのだった。

                        ◆

 〈芳乃《ラファールD》さくら〉〈里見《ラファールC/M》こだま〉には似た面も多いが、違う面もある。全長全幅全高は同じだが、機体重量は〈里見《ラファールC/M》こだま〉の方がやや重い。これは搭載エンジンがアルグスAs488B(推力約5トン)の〈芳乃《ラファールD》さくら〉に対して、7トン強を発揮するM88−6を〈里見《ラファールC/M》こだま〉が搭載するからである。そのため空戦能力の面では、(外観はともかく)成熟した女性が「おいで…」と誘いをかけて見事に虜にしてしまうのに対して、子どもが手足をばたつかせるばかりである。〈芳乃《ラファールD》さくら〉にとっては如何ともしがたい事実ではあった。
 しかし内蔵する電子機器の能力では確実に上回る。文学少女と飛び級で大学を卒業した少女くらいの違いがある。
 レーダーはジーメンスとダッソー・エレクトロニクの共同開発によるフェイズドアレイ型レーダーRBE2で、100km以上の探知能力を持ち、複数目標の同時捕捉、同時攻撃が可能で、低空高速侵攻時には「探検ぼくの町モード」で機体の低空飛行経路を自動的に作り出すことができる。 さらに出色なのが自動妨害システムSPECTRAで、このシステムは脅威を探知、識別、そして記録しておくことができ、自動で最適な妨害手段をとれるようになっている。操縦や航法などで忙しいパイロットを補助し、パイロットの気づかぬ間に脅威を排除してしまう。
 そして情報ネットワーク〈ユグドラシル〉最深部へのアクセス権を有している。ルフトヴァッフェのいじめに恒常的に苛まされたことから、ドイツ海軍は空軍の有する早期警戒/空中管制機の支援を受けられない可能性を考慮して、個々の機体が〈ユグドラシル〉の支援を受けられるようにしたのである。実際には〈朝倉《Ar707E3》純一〉とは相性が抜群だったのだが。
 搭載兵装は内蔵機関砲がマウザーの27ミリ機関砲(リボルバー・カノン)を固定装備。AA9M〈ツヴェルク〉は最大8発搭載が可能であり、最大の武装としてはAS34〈コルモラン〉または〈《ANS》うたまる〉自律誘導式長距離超音速ミサイルといった空対艦ミサイルがある。前者は「長ドス」とも「金属バット」とも呼ばれる強力なミサイルであり、後者とは「俺とお前は死ぬときは一緒だあ〜」と強く結びついた仲であった。
 彼女の行動力を強化する増槽は、〈里見《ラファールC/M》こだま〉が機体の背中に張り付ける形式を取ったのに対して、普通に機体下に懸架している。「にんじん」と呼ばれる大きな増槽を抱えた姿は枕を抱きかかえたパジャマ姿の少女を思わせ、萌えどころの一つになっている。フランスの「ねこリュック」は恥ずかしさ故の萌えを誘発するのだが、こちらは自然さを追求したところがひと味違う。
 海洋通信衛星を通じた強力なデータ・リンクを受けて、〈芳乃《ラファールD》さくら〉は大洋の空を自在に飛び回った。〈白河《アドラー》ことり〉の長距離探知はアクティブ・ステルスで無効とし、〈朝倉《ファルケ》音夢〉の監視をかいくぐって〈朝倉《Ar707E3》純一〉にすり寄ってのける(注5)。
 しかし、〈ユグドラシル〉のあまりに強力な支援はパイロット達を不安にさせた。自分たちはただ飛行機に乗っているだけなのではないか。もしかしたら全自動で全てが進んでいるのではないか。自分たちは世界に存在しているのだろうか。
 マン/マシン・インターフェースの最適化がパイロットの存在意義を揺るがした。最終的に自存についての不安を払拭させたのは、〈朝倉《Ar707E3》純一〉の管制支援だった。
 〈朝倉《Ar707E3》純一〉からエネルギーを分けてもらうことによって「1000万%」の力を得た〈芳乃《ラファールD》さくら〉は、大西洋におけるPACTO軍艦載機との戦闘を互角に近い形勢に持ち込むことに成功したのである。

 ドイツ海軍の保有状況は、空母〈牧野《フリードリヒ・デア・グロッセ》那波〉と〈大和《ゾフィー・ヴィルヘルミーネ》鈴蘭〉がそれぞれ50機の〈芳乃《ラファールD》さくら〉を搭載し、その内訳は制空任務の1個飛行隊(14機)と戦闘攻撃任務の3個飛行隊(36機)である。とはいえ主任務に違いがあるだけなので、4個飛行隊全てが制空または攻撃任務に当たることができた。そして交代用に50機ずつの2個空母飛行隊があり、合計200機強となる(注6)。
 ドイツ海軍の空母運用は攻撃任務に重点が置かれていた。この辺り、海洋から大陸内部へのパワー・プロジェクションを主任務とする日本海軍の巨大空母と異なっている。ドイツ海軍は日本海軍を主力とするPACTO艦隊から制海権を奪取しなければならない立場にあるからだ。
 このため戦時には空母飛行隊に1個戦闘攻撃飛行隊の12機を追加配備することになっていた。代わりに電子戦部隊と対潜哨戒隊のAS534〈森《フュリース》青葉〉が下りることになる。

                        ◆

 第4次世界大戦での〈芳乃《ラファールD》さくら〉の活躍は枚挙にいとまがない。
 開戦直後にはアイスランドのPACTO軍基地へ空襲をおこない、地上設備や滑走路を破壊してのけた。開戦前から演習と称して北大西洋を遊弋していた機動艦隊から発し、鮮やかな奇襲を決めたのである。ドイツ機動艦隊を子供扱いしてまともに取り合わなかったPACTO軍は、したたかにしっぺ返しを食らったのだった。
 ブンカーの破壊はノルウェーから長駆飛来したFw401〈朝倉《ファルケ》音夢〉の役目で、誘導爆弾AG130を分厚い辞書を投げつけるようにぶつけている。〈朝倉《ファルケ》音夢〉としてはまず英本土へ空襲を仕掛けたかったのだが、海軍の巧みな説得と挑発によって、PACTOのグリーンランド(G)−アイスランド(I)−英本土(UK)を結ぶ哨戒線を破壊することが最優先になったのである。
 最初は大いに渋っていた空軍だったが奇襲の成功をうけて、アイスランドを占領してケフィラビクから英本土を空襲しようという計画が持ち上がっている。しかし〈芳乃《ラファールD》さくら〉が発電設備を破壊していたために基地機能の復旧に時間がかかることと、戦時にあっては孤島への補給が容易でなく、アイスランドを無力化できたことで満足しなければならなかった。
 ドイツ機動艦隊はビスケー湾に面した基地を拠点とし、〈芳乃《ラファールD》さくら〉は英軍相手の小競り合いを繰り返した。アクティブ・ステルス機能を全開にして迎撃する〈芳乃《ラファールD》さくら〉は、相手は子供と舐めてかかった英軍攻撃機に痛撃を浴びせている。このことを英軍では 「いきなり桜の木の枝が落ちてきた」と表現している。

 そして、〈芳乃《ラファールD》さくら〉が全存在をかけて挑むことになったのが、第二次ニューヨーク沖海戦である。
 大西洋を突き上げるように北上してくるPACTO艦隊を覆滅しなければ、北大西洋の制海覇権を握ることができず、それができなければドイツ海軍の存在意義は消滅し、つまりは〈芳乃《ラファールD》さくら〉は夢のように消えてしまう。引くことのできない勝負だった。
 GETTO陣営の母艦戦力は、ドイツからは〈牧野《フリードリヒ・デア・グロッセ》那波〉と〈大和《ゾフィー・ヴィルヘルミーネ》鈴蘭〉、フランスは〈葉月《ダルラン》彩音〉と〈島津《ラ・サール》一葉〉、そして東部連合の〈ミッドウェー〉級3隻の計7隻。率いるはフォン・ウルリヒ大将。腺病質な印象を与える長身痩躯の男である。
 対するPACTO陣営は、開戦当初にグアンタナモへ地対艦ミサイルの飽和攻撃を受けて〈小出《葛城》由美子〉、〈畝傍〉、〈吾妻〉、〈磐城〉の攻撃空母群が損傷したために合衆国カリブ海艦隊が主力を受け持つことになり、インド洋から喜望峰経由で増援されてきた〈轟天〉と〈蒼天〉を合わせても正規空母は5隻にしかならない。制海艦2隻と強襲揚陸艦2隻が加わって、やっと数を揃えている。これらを指揮するのが新江幸生中将である。会議中に船をこいだり、戦闘指揮所要員の女性士官と艦内不倫のあげくに司令室で痴話喧嘩したりと、素行にとかくの噂がある将官だが、戦闘モード時の指揮能力と運の強さは日本海軍屈指と評判であった。

 日本艦隊から発した攻撃隊を邀撃した〈芳乃《ラファールD》さくら〉は、相手に向かって片膝を付いて挨拶をしてみせた。
「お控えなすって!手前、遠くドイツからやって参りました〈芳乃《ラファールD》さくら〉という不束な者です。これから先、同じ組で肩を寄せ合う同胞として、ケジメをつけさせて頂きたく参りました」
  これを受けたのが四三式戦闘攻撃機〈藤宮《青嵐》わかば〉で、「まあ、丁寧にありがとうございます」と会釈をしている。
 戦場はつかの間ほんわかした雰囲気になりかけたが、いつのまにか乱戦となっていた。
 〈藤宮《青嵐》わかば〉が対艦ミサイルを放とうとすれば色魔の〈剣《ジャガー供媾次咾ナンパをしかけ、そこに妹の貞操の危機を救うべく四○式戦闘機〈藤宮《剣光》望〉が剣を振るって乱入する。四三式支援戦闘機〈丘野《陽光》ひなた〉はあちこち駆け回って「うにゅ〜」と目を回している。〈里見《ラファールC/M》こだま〉〈芳乃《ラファールD》さくら〉が突撃すると〈藍澤《シュライクN》眞穂〉〈藍澤《シュライクM》華穂〉が「遊びませんか」とまとわりつく。
 互いに決定的な攻撃を仕掛けることができないまま空戦は夕刻より夜間にかかり、煌々と照らす月明かりの下、まさに「魔女の舞踏場(ヘキセンタンツプラッツ)」のようになって、混乱はいや増していった。

「おっ死んじゃえ〜」
 空戦の間隙を突いて、〈芳乃《ラファールD》さくら〉攻撃隊は対艦ミサイルを放つことに成功した(注7)。この金属バット攻撃を一身に受ける羽目に合衆国艦隊(マクダニエル)は陥った。エスコート艦艇に着弾が相次ぎ、艦隊外郭(スクリーン)に空隙が生じてしまっている。日本艦隊には目立った損害は無い。新江提督の悪運の強さは無類であった。
 PACTO艦隊の輪形陣を崩し、防空網に穴を開けたと判断したフォン・ウルリヒは艦対艦ミサイルの一斉発射を命じた。ノルウェー沖の復仇を果たし、ドイツ海軍が大西洋の覇者となる未来、自分が望む世界を作り出す機会は今より他にない。ほぼ同時刻、新江もまた艦艇搭載のミサイルでの殴り合いを命じている。
 両陣営は90海里の距離でもってミサイル戦を開始した。日本海軍は防護巡洋艦を初めとした防空艦艇を揃えており、ドイツ海軍もまた「炎の壁(フラメ・ヴァント)」と名付けた防空システムを搭載した艦艇でミサイルを迎え撃つ。両者の迎撃能力は互角である。その筈であった。
 敗北を喫したのはドイツだった。システムに欠陥があった訳ではない。エリア・ディフェンス担当の〈瀬能《ザクセン》透矢〉と〈宮代《ヘッセン》花梨〉が原因不明の機能不全を起こしたことで閉じているべき大岩が消え、出現した回廊を日本軍のミサイルが通過、総旗艦〈牧野《フリードリヒ・デア・グロッセ》那波〉に10発ものミサイルが命中したのである。フォン・ウルリヒは獣に喰われるように身体をつぶされて戦死した。新江が命じた中枢への集中攻撃が功を奏したのだった。
 その後は戦艦同士の大砲撃戦となり、〈木ノ下《シャルンホルスト》留美〉を撃沈されたGETTO艦隊が後退することで、海戦は終結した。
 なお、炎上漂流していた〈牧野《フリードリヒ・デア・グロッセ》那波〉は、生存者の救助後に〈瀬能《ザクセン》透矢〉のミサイルに射抜かれて海没処分される結末を迎えている。

 海戦に戦術的勝利を納められなかったドイツ海軍ではあったが、PACTO艦隊の英本土への打通を阻止することで戦略的には勝利することができた。新江は徹底的な追撃を命じたのだが、合衆国艦隊の被害が大きいことと、〈芳乃《ラファールD》さくら〉〈里見《ラファールC/M》こだま〉の死力を尽くした防戦によって断念せざるを得なかったのである。
 以後、バミューダとアゾレスを結ぶ線をはさんでの睨み合いと小競り合いが休戦まで続くことになる。大西洋は夏でもなければ冬でもない、桜の咲き乱れる春のような状況であった。

                        ◆

 〈芳乃《ラファールD》さくら〉〈朝倉《Ar707E3》純一〉と一緒に空を飛んでいた。〈朝倉《ファルケ》音夢〉は遠慮しているのか、ちょっと遠いところにいる。
「充電は必要かな?」
「ううん、大丈夫」
 ドイツ海軍は第3次世界大戦の時のように決定的な敗北をすることがなかった。であれば母艦戦力は半減したとはいえ、回復は難しくない。
「立派なレディーになるからね」
 子供と言われてきた彼女だが、より強力なP&W社製エンジンへの換装が予定されている。そのためにはアメリカ東部へ行って、諸々の作業をこなさなければならないだろう。しかし、その期間は永くはないはず。
 翼を振って、〈芳乃《ラファールD》さくら〉は空軍の兄妹に別れを告げた。
「また会おうね」
 かくして魔法使いは大西洋へ帰還を果たしたのである。


注1:フランスの主張する「中型」ではないことに注意。
注2:第1次世界大戦後に英国が、ドイツで建造中だった5万トン高速客船〈古坂《ビスマルク》唯〉を戦利品として手に入れて〈古坂《マジェスティック》唯〉としたが、1942年の英本土占領で取り戻したドイツが病院船に転用、さらに第3次世界大戦末期に空母〈古坂《オーデル》綾〉へと改装している。竣工は1952年の春で、駐英ドイツ軍への補給作戦「ルフトシュピーゲルン(しんきろう)」に参加した。
注3:フランスの計画は〈里見《ラファールC/M》こだま〉として結実している。
注4:アメリカ東部連合海軍のグラマン〈剣《ジャガー供媾次咾盡補に上がっていたのだが、計画中の空母のカタパルト運用能力に問題があることから見送られた。というのは建前で、実際には悪質極まる女たらしな性格がドイツ海軍首脳部に拒否されたためである。
注5:ステルスの一環としてキャノピーを金でコーティングしている。このため金髪の少女に見えた。〈里見《ラファールC/M》こだま〉も同様だが、こちらは透過率の関係で青く見えている。なお、アクティブ・ステルスによって同一機体が複数箇所に同時に出現するように見えることがあり、PACTO軍の警戒を誘うことになった。
注6:空母は三隻目〈ルイーゼ・ウルリーケ〉が建造中であり、搭載機として100機が追加発注されていた。さらに空母二隻(予定艦名は〈フリデリーケ・ルイーゼ〉、〈フィリピーネ・シャルロッテ〉)の建造準備がされていたが、こちらは未成に終わった。
注7:ドイツ攻撃隊が抱える対艦ミサイルにはペンキでいろいろと落書きがされていた。特に好評だったのが日本の名物を書いたもので、「スシ」、「テンプ〜ラ」、「フジヤマ〜」と、勘違いしたアメリカ人状態であり、はっきり言って「日本なめてんのか、てめぇ…」というものであった。

要目

  • 全   長 15.30m
  • 全   幅 10.80m
  • 全   高 5.34m
  • 重   量 8,500kg
  • 全備重量 20,500kg
  • エンジン  アルグスAs488B(ドライ4,970kg リヒート7,650kg)×2
  • 最大速度 M1.8+
  • 戦闘行動半径 1,100km(対艦攻撃時)
  • フェリー航続距離 3,000km
  • 武    装
    • マウザーBK27 27ミリ機関砲×1
    • ハードポイント×12
  • 兵装搭載量 6,500kg
  • 乗    員 1名