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〈楠《T1》若菜〉

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〈楠《T1》若菜〉 Torpedoboot Kusunoki-T1-Wakana,KM

Marron「秋桜の空に」楠 若菜

概要


 隆山海軍軍縮条約における「600トン条項」を利用して建造された35型水雷艇の一番艦。その条項は、600トンを越えざる艦艇の無制限建造を可とするものであった。
 同級艦12隻のうち、〈楠《T1》若菜〉から〈T10〉までがエルビンクのシーヒャウ社で建造され、残り2隻がブレーメンのデシマークで建造された。設計はガヤロー設計局のフェルゼンブルク造船官である。1940年の2月から7月までに全艦が就役している。
 船型はシアーの強い平甲板型で、居住性の向上を図って艦橋が幅いっぱいに拡大されているのが目立つが、これが頭身の低い幼児体型と言われる所以となっている。
 主兵装は魚雷とされ、砲兵装は副次的なものとされた。設計上ロー・シルエットと高速力の2点が重視され、後者に関して要求速力を達成すべく、他国の5倍以上という1616psi(約113気圧)の高圧蒸気タービンを採用したのだが、これが本級の重大なハンディ・キャップとなってしまった。
 高圧蒸気を用いることで機関の重量や容積を節減することができる。そのコンセプト自体は健全であったが、〈楠《T1》若菜〉が就役した1940年2月の時点では、なおシステムに解決すべき技術的問題が多々残されていた。脆弱で敏感なボイラーは、バルブ、ジョイント、シーリングやパッキングに絶えず劣化・弛緩を引き起こし、ために〈楠《T1》若菜〉は度々発作をおこして入院を余儀なくされたのだった。
 この問題は大変に厄介なもので、船体寸法が小さいことから修理整備の便が極端に悪くなっていた。船体自体も600トンの制限を遵守するために著しい軽量構造とされており、強度不足を引き起こしている。このため改装もままならず、本級にこれ以上の成長は望めないとして、準同級艦の37型を経て、排水量を65%増しの1200トンとした39型艦隊水雷艇〈姉倉《T22》子鹿〉が建造されている。
 主砲は10.5センチ単装砲1門のみ。後甲板へ配置されて隠密雷撃後に避退戦闘に最大限使用できるようになっていた。
 就役後、缶出力不足で計画速力を確保できないことが判明している。計画段階での計算が楽観的過ぎたためで、さらに航洋性不足と艦橋設備の不足も判明した。航洋性不足については前没癖克服のため艦首形状をクリッパー・バウへと改めた。
 1945年には「バルバラ改装」で、FuMO64〈ホーエントヴィール〉レーダーが左舷にオフセットする形で搭載され、Sゲレート(音波探知機)、GHG(聴音機)、爆雷投射機も増設された。さらにバウ・チェイサーに37ミリ連装機関砲1基、艦橋ウィングに20ミリ連装2基、海図室上に20ミリ連装2基、中・後部甲板上に37ミリ単装各1基が増設されている。8.6センチRAGロケットランチャー21門も配備された。主砲もSKC/32、C32型砲架に装備し直されて最大仰角は70度に引き上げられたのだが、スットコドッコイなことに高射指揮装置が装備されていないためにほとんど意味がなかったのである。

 就役後、本級からなる各艇はスカゲラク、北海での機雷敷設任務にあたり、40年9月にはフランス、41年にはバルト海へ戻って侵攻作戦に参加、42年8月のケルベルス作戦では主力艦の護衛をおこなった。8月25日から26日にかけて〈鷹丸〉級曳船と交戦して土下座する羽目に陥っている。
 もっとも、これらの活動に〈楠《T1》若菜〉が加わることは希であって、大部分の時期をドックで過ごしている。まずしい人生(戦歴)というより他はなかった。それでも〈楠《T1》若菜〉の艇長は他の艦艇が陽光輝く海で過ごせるのならば、それだけで満足なのだと嘆くともなく語っている。
 しかし、その〈楠《T1》若菜〉が戦い抜いこうとした舞台がある。1949年2月のパナマである。
 第2次大戦において、1000トン未満の艦艇が大西洋で攻撃的に活動するにはいささか無理がありすぎることが判明していた。その常識に従ってドイツ海軍総司令部では本級を本国沿岸海域で用いることにしていたのだが、常識の通じないヒトラーの横槍が入って、ドイツ占領下となったパナマへと派遣されたのだった。
 〈楠《T1》若菜〉はドックの壁の内側から憧れているよりなかった世界で、そこに居続けるために耐えた。その努力は、彼女に苛酷な運命を強いることになる。

要目

  • 全長 84.3メートル
  • 全幅 8.62メートル
  • 主機 ギヤード・タービン2基2軸
  • 主缶 ワグナー缶4基
  • 機関出力 31000hp
  • 最大速力 35kt
  • 航続距離 1200海里/19Kt
  • 基準排水量 845トン

兵装

  • 主砲 10.5センチ単装砲1基
  • 機銃
    • 37ミリ機銃単装1基
    • 20ミリ機銃単装2基
  • 雷装 53.3センチ魚雷発射管三連装2基
  • 機雷 30発

同級艦