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〈天枷《Bv105》美春〉

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ブローム・ウント・フォス〈天枷《Bv105》美春〉 Blohm + Voss Bv105 Unterstutzungbombor

Circus「D.C.〜ダ・カーポ〜」天枷 美春

Lovable pup

 1962年のドイツ空軍の要求に基づいた近接航空支援攻撃機で、1970年に採用された。「フントヒェン(わんこ)」という愛称が示すように、戦場上空を子犬のごとく縦横無尽に駆け回った。「キーン」とやってきては「んちゃー」と戦車を吹き飛ばし、歩兵達から絶大な支持を得ている。

 〈天枷《Bv105》美春〉は、手堅い設計の日本から見ればマッド・サイエンティスト揃いのドイツ航空界の中でも最右翼、異端の天才リヒャルト・フォークト博士の最終作品として著名である。
 どこかのねじが外れているとしか言いようのない作品ばかりのフォークト博士の航空機群だが、その設計は一貫して筋が通っている。それは何かというと、その航空機に要求された目的を最大限に満たすことである。
 例えば、非対称機として有名な偵察機〈高屋敷《Bv237》春花〉の形状は、偵察員の視界を最大限に確保するために視界を遮るものは極力追い払わねばならない、という論理の帰結であった。
 つまり、フォークト博士の設計は目的に対して一途に過ぎるのである。
 〈天枷《Bv105》美春〉の開発にあたって提示された空軍当局の要求は、「歩兵のみなさんのお役に立つ」ことだった。大威力の機関砲とバナナの房のように大量の兵器を搭載すること、戦場上空での滞空時間と運動性、さらに敵弾に耐える生残性が要求された。
 これにフォークト博士は独自の理念でもって応えた。開発名称HM−A05、後の〈天枷《Bv105》美春〉は、故に近代のジェット機らしからぬ形状を取ることになった。


 エンジンは胴体の後部に2基のユモ030を平行して背負わせ、H型の双尾翼で排気口をマスクしている。これは地上から発射される赤外線誘導ミサイルを回避し、片方のエンジンの被害がもう一方に及ばないといった合理的な理由がある。
 ユモ034(空軍番号109−034)は多燃料ターボファンで、ジェット燃料以外にもレシプロ機用のガソリンから灯油、軽油まで使用できる。甚だしくはバナナ・シェークのように流動性が低くなってしまった燃料でも大丈夫という、野戦飛行場向けのエンジンである。もっともシェーク状になった燃料を大量に流し込むと、盛大に黒煙を吹き上げてしまってエンジンの調子も悪化してしまうので厳重に注意しなければならない。バナナの食い過ぎは、やはり体に良くないのだ(注1)。
 特異なのはエンジン始動機構だった。ドイツではスピナーにリーデル・スターターと呼ばれる小型ピストン・エンジンを仕込んでおり、ひもを引きさえすればリーデル・スターターがかかり、スターターがタービンを回転させる。フォークト博士は小型ピストン・エンジンを廃し、代わりに「ぜんまい」を使用したのである。野戦飛行場にスターター用のガソリンが常にあるとは限らない、スターターはもっと簡便でなければならない、というのが博士の意見であった。
 そのためにパイロットは、ねじ巻きを常時携帯することが義務づけられた。ねじ巻きを機体背部の穴に差し込んで「ぜんまい」を巻き、「ぜんまい」がはじける力をフライホイールに蓄え、フライホイールとダイナモを組み合わせて発電する。そしてコクピットから始動ボタンを入れるとエンジンがかかる仕組みだった(注2)。
 主翼は幅広で厚く、主脚は半引き込み式でタイヤが露出している。ハード・ポイントは主翼と胴体の下、合わせて11箇所で、バナナのような爆弾にロケット弾を多数搭載する。
 胴体の前半を占める30ミリ機関砲は、ラインメタル・ボルジヒMK119多砲身機関砲で、最大1350発の弾薬を搭載し、発射速度は毎分3000発である(注3)。
 コクピット周りは厚いチタニウム装甲板でバスタブのように囲まれ、装甲だけで自重の約14%を占めるに至っている。この辺り〈天枷《Bv105》美春〉が、試作だけに終わったヘンシェルHs219や、第2次世界大戦でドイツ軍から「黒いペスト」と忌み嫌われたIl−2〈シュツルモヴィク〉を設計の参考にしていることが分かる。事実、〈天枷《Bv105》美春〉は対空砲火で受ける傷が多いものの、頑丈きわまりない機体はよく耐え、撃たれても撃たれてもとにかく墜ちることはなかったのである。

 試作機の実験を担当したのは、急降下爆撃航空団(StG)のエース、ハンス・ウルリッヒ・ルーデル中将であった。ロシアのみならず北米でも活躍し、騎士十字章剣付黄金柏葉ダイヤモンド章をただ一人受章したルーデルは、「理科準備室」という秘匿名称を持つ基地で〈天枷《Bv105》美春〉試作機を見て、直ちに彼女の面倒を見なければならないと心に決めた。ソ連軍のT−34/78や、日本軍の〈ODW〉の撃破に苦労した日々を思い起こしたのである。
 ルーデルと共に試験をおこなう日々において、〈天枷《Bv105》美春〉はドイツ軍にとって理想の近接航空支援機となるための試練をくぐり抜けていった。
 とはいえ、それは苦難の日々でもあった。ラインメタル・ボルジヒMK119は大威力であったものの反動もまた凄まじく、連射を繰り返している内に照準がずれていって一つ隣のものを撃つようになり、爆弾照準器も大幅な狂いを見せていた。
 さらに高級な電子機器をもたないことによる夜間及び全天候能力の不足は、〈天枷《Bv105》美春〉にとって、ある意味致命的であった。開発員とルーデルの報告は上がっていたが、第4次世界大戦時、彼女の限界を越えた夜間攻撃に出、同士討ちや墜落などの事故を引き起こしたのである。それは1960年代当時の技術の限界でもあった。
 ともあれ、ルーデルと試作機は幾多の技術上の困難を乗り越えていき、制式化を勝ち取ったのだった。それは、覚えている筈のない記憶を思いだし、大樹の根本からタイムカプセルに入れたオルゴールを掘り当てるような苦難の末であった(注4)。

 ドイツ連邦空軍では、21世紀になっても現役で使用することにしている。約150機が高速前線航空統制機として改修され、他にも低高度における安全強化を図る改修が加えられた。
 〈天枷《Bv105》美春〉は、まさにJu87G〈大砲鳥〉、Il−2〈シュツルモヴィク〉の正統な後継として、「元気いっぱい、夢いっぱい」、空を飛び回っている(注5)。


注1:日本には、B+V社技術者のちょっとした冗談である〈天枷《Bv105》美春〉が小型原子炉を搭載しているという情報が伝わって、技術陣や軍関係者にパニックを引き起こしている。〈天枷《Bv105》美春〉を市街上空で撃墜しようものなら都市壊滅の危機すらあるからだった。結局、誤報ということで関係者は胸をなでおろしている。
注2:パイロットが「ぜんまい」を巻いている姿を撮影した写真が日本にもたらされ、さらなるパニックを引き起こした。ドイツは「ぜんまい」で飛行機を飛ばしている!ドイツ超科学力恐るべし!フォークト博士の弟子である土井武夫技師は、苦笑いしつつパニックを抑えるのに尽力している。
注3:ラインメタル・ボルジヒMK119は7本の砲身を持つ。砲身から弾倉までの大きさは、フォルクスワーゲン1台を軽く凌駕する。
注4:ドイツ空軍では、第3次世界大戦での経験により、地上攻撃は戦闘機の戦闘爆撃機化をもって対処する方針が主流だった。北米や英本土において攻撃機は、高速かつ身軽でなければ生き延びられなかったのである。ために純然たる地上攻撃機である〈天枷《Bv105》美春〉の開発・試験に反対する意見が強かった。実際に、制空権の得られない空域では危険すぎるので、常にFw401〈朝倉《ファルケ》音夢〉の後をおいかけるようにして飛んでいる。
注5:フォークト博士が遺したスケッチには、ドリルや触角の付いた〈天枷《Bv105》美春〉が描かれていたという…。

要目

  • 全   長 16.26m
  • 全   幅 17.53m
  • 全   高  4.47m
  • 重   量 9,770kg
  • 全備重量 22,680kg
  • エンジン  ユンカース・ユモ034B(推力4,032kg)×2
  • 最大速度 706km/h(海面上)
  • 戦闘行動半径 460km(戦場上空滞空1.7時間)
  • フェリー航続距離 3,950km
  • 武    装
    • ラインメタル・ボルジヒMK119 30ミリ多砲身機関砲×1
    • 爆弾、ロケット弾、ASM等
  • 兵装搭載量 7,260kg
  • 乗    員 1名
  • 生 産 数 715機