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〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉

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イタリア海軍軽巡洋艦〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉

フェアリーテール「Natural2-DUO、NaturalZERO+」鳥海千紗都&鳥海空

双子巡洋艦

 フランスの超駆逐艦を撃滅を目的とした〈コンドッチェリ〉型巡洋艦の最後のクラスであり、その強い絆で二度の大戦を戦い抜いた。
 前級である〈アブルッチ〉級と主砲、スペースド・アーマーによる防御(やや厚い)は同一だが高角砲を〈V・ヴェネト〉級と同じ9センチとし、艦橋構造物も同様の形状とされ、より洗練された美しい艦となり、実質的に1万トン軽巡洋艦に匹敵できる存在となった。
 設計者はアゴスフェーラ造船官。「巡洋艦の代表作と呼ばれるものを目指した」とは彼の弁であり、実際彼女達の戦歴はそれにふさわしいものとなった。
 36/37年計画(*注1)で2隻が発注され、OTOリヴォルノ造船所で同一日起工、同一日進水、そして念のいったこと同一日完成。同じ設計図から創られた同型艦であることを考えてると正に「双子」といっても誰も文句のない「姉妹」として就役した。
 識別点は〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉が艦橋構造物の背後にピンと立ったマストを設けている(後にこの部分に独から輸入したホーン型レーダーを装備)のに対し、〈鳥海《ヴェネチア》空〉はマストを艦橋構造と一体化している(後、艦橋上に網型レーダーを装備)のが違い。それ以外は寸分たりともスペック上は同じである、公式には。(*注2)。

出会い

 竣工後は最新鋭の巡洋艦として2隻で第9戦隊を結成。さっそく沿岸部隊指揮官のリカルディ提督の将旗を掲げている。
そのアルトゥーロ・リカルディの弟子とも息子とも言える存在が第9戦隊参謀のクェルティ・カヴァリーノ中佐。後にサン・マルタン沖海戦でその名を轟かせる「タフネス」リサイアンとは同期である。 そして「頼むぞ」と一言命じられた彼はこの姉妹艦の面倒を見ることとなる。彼へのリカルディ提督の信頼は厚く作戦のほとんどを任せて自らは調整役に徹するほどだった。
割とおとなしい行動を取り、戦闘を避ける傾向があった〈鳥海《ヴェネチア》空〉と比較して〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉の方は戦意旺盛、マタパン岬沖海戦で〈霧島《ローマ》佳乃〉に沈められて焦った英艦隊の前に機雷をバラ撒いて足止めを食らわせるなど「落とし穴」戦術が得意で地中海を活発に駆け回った。
ただし最新鋭、かつシルエットが戦艦に近いために日英部隊によく狙われ(*注3)たがその度にカヴァリーノの見事な戦術をもって損害を最小限度に食いとめる。正に両艦にとっては「兄様」「お兄ちゃん」とも言える頼りになる存在として。


落とし穴

 英日軍はマルタ島にいる巡洋艦と駆逐艦をまとめてK部隊(アグニュー大佐)を編成した。内容は軽巡洋艦〈ネプチューン〉〈オーロラ〉〈美坂〉と英日蘭豪駆逐艦7隻という国際色豊かな部隊である。他にマルタ島の航空部隊や潜水艦部隊。この勢力によって北アフリカへの交通路遮断に全力を傾け実に412隻もの商船を沈めている。
 これに対しドイツも腰を上げた、Uボートの地中海派遣と航空兵力の強化を決定。地中海の戦いは混沌と動きつつあった。
 そんな中、伊独アフリカ軍団への緊急支援のために1941年11月13日、〈アルベルト・ディ・ジュサーノ〉と〈アルベルコ・ダ・バルビアーノ〉と水雷艇〈ルポ〉(トスカーノ)があらゆる場所にガソリンを詰め込んで出撃、これを〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉と駆逐艦が間接護衛する。
 14日夜、〈ジュサーノ〉と〈バルビアーノ〉がトリポリ目指して注意深く夜の海を進んでいた。英側も偵察機の情報から迎撃を決定、K部隊とそれから分派された駆逐隊(ストークス中佐)が攻撃に向かう。〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉もまた間接護衛のため少し離れて進む。都合4部隊が交差する形となった。
まずはストークス部隊がトスカーノのガソリン巡洋艦部隊を不意打ちに近い形で攻撃。放たれた魚雷は〈ジュッサーノ〉に命中、アっという間に火達磨になって轟沈。残った〈バルビアーノ〉が反撃・・・ガソリンの上で火を使えばどうなるか・・・言う必要がどこにある。ついてきた水雷艇〈ルポ〉に出来たのは乗員救出だけであった。この間たったの2分。
 カヴァリーノは仰天した、水平線に赤々と燃え上がる炎は明らかに味方のもの。だがあっけにとらけている場合でもない、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉はK部隊と戦わないといけないのだ。こちらの巡洋艦2隻と駆逐艦3隻に対してあちらは巡洋艦3隻と駆逐艦6隻。砲数は15センチ20門対15センチ14門(8+6)+14センチ8門(〈美坂〉)。戦うか逃げるか非常に難しいところだが、アグニューは戦闘を、カヴァリーノは撤退を選んだ。当然闘士満々のアグニューは一挙攻略を目指して突撃、逃げられないように駆逐艦には雷撃をさせるため左右に展開。しかしK部隊は先に何が待っているかを考えてから突撃するべきだった。まず先頭を突き進んでいた〈ネプチューン〉が突然大爆発を起こして轟沈、続けざまに〈オーロラ〉が大破、助けに行った〈巻波〉も艦尾を吹き飛ばされて沈没。〈美坂〉も小破。ものの3分もしない内にK部隊は事実上消滅(主力がみんな損傷したので)という信じられない惨状を呈してしまった。この正体は3ヶ月前に〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉が敷設していた機雷、つまり「落とし穴」。1発も弾を撃たずに敵艦隊を消滅させる離れ業を演じたのだ。まさに「スペシャル」である。


別れ

 42年4月のマルタ沖海戦の後、カヴァリーノは巡洋艦隊参謀から陸上勤務に戻されることとなった。リカルディ提督もマルタ沖後の人事改変によって軍令部に異動している。
もうすぐ異動という4月28日、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉は珍しく〈鳥海《ヴェネチア》空〉と分離してトブルク行きの船団護衛をしていた。すると小船団が見えるではないか。マルタ島への輸送船団らしい。
「あの船団を取ります」
そう言って〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉艦長は船団攻撃に向かう。別れる前に戦果と活躍をプレゼントしてあげたい。そういう気持ちだったのだろう。しかしそれは最悪の結果を生むこととなる。
潜水艦の雷撃、突き刺さる魚雷、衝撃で吹っ飛ぶ乗員、傾く船体。後から考えればあの小船団は囮だったのかも知れない。〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉は艦橋舷側と艦首に受けた魚雷で司令部がほとんど潰滅。腕に重傷を負いながら唯一無事だったカヴァリーノは片手で操艦して辛うじてタラントに戻ることに成功する。
大慌てでドックに入る〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉乗員はじっと見ていた。そう、自分達の責任のように。
なお、修理時に〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉の艦橋左舷舷側に「傷」が残ったが、不思議なことに〈鳥海《ヴェネチア》空〉の艦橋右舷舷側にも全く同じ「傷」が出来ていた。
いつついたのかは全く不明。姉妹艦同士の「シンクロ」と言う妙な説が飛び交ったが結局現在まで不明のままである。


宿敵対決WW2編・マタパン岬

 英国は第二次ゼーレヴェに耐え切れずついに夜逃げするよう本土から撤退した。しかしまだ地中海が残っている。
 しかし頼りの日本はというと太平洋の激闘にはまり込んで苦戦の連続。このままでは今度はエジプトから夜逃げするしかない。
「日米戦が終れば」と言うがいつ終るんだ?しかし何か時間稼ぎをするしかない。
「つるぺた」のまま転がり込んできた超大型護衛艦(実質は主砲のない戦艦に高角砲を載せただけ)〈スフィー〉と空母の〈リアン〉〈神尾《イラストリアス》観鈴〉などをかき集めてタラント港に奇襲をかけこれが大成功。見事過ぎる。何せ英艦隊は飛行機以外なんと無傷(!)こうなったらとっとと逃げるだけだ。しかしそうは問屋がおろさない。
 そう「ぴこぴこ」と怪しげな音を立てて飛ぶ〈Ca316《ポテト》〉の誘導の元、〈霧島《ローマ》佳乃〉と巡洋艦部隊が追っかけてきたのだ。
 空母の攻撃隊はタラント攻撃から戻ったばかりであり、ここは戦果拡大をぐっとこらえるべき。〈スフィー〉は意外な行動に移った。巡洋艦部隊、中でも〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉に向けてまっしぐらに突っ込んで来たのだ。ネルソンタッチもそうだが英国は時々無茶をする。高角砲のバーゲンセール艦だということを忘れたのか。
 突っ込まれた〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉には「ホットケーキ」という言葉の連呼が聞こえてきた。まるでホットケーキの亡者がホットケーキを追い求めるように突進してくるのである。近くにいた〈マコティーニ〉がすれ違いざまに13.5センチ砲8門を〈スフィー〉に叩きこんで〈スフィー〉と子供の喧嘩を始めたがこれでは止められない。
「夜逃げ野郎(英国人)にはホットケーキすら無くなったか!」
 そうやってブラックジョークを飛ばせる程状況はよくない、まともに相手をした〈カドルナ〉と〈コレオーニ〉が蜂の巣になって燃えている。駆逐艦部隊も雷撃する前に沈められ頼りの〈霧島《ローマ》佳乃〉は同士討ちを恐れて射撃が出来ない。
 しかし〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉はというと2隻で〈スフィー〉の左舷に回りこんで15.2センチ砲20門を叩きつけている。なんとアウトレンジしていたのだ。そして撃てる高角砲が無くなった〈スフィー〉は「おぼえてろ!」ばかりに撤退していった。
なお、〈スフィー〉は後に「世界史上唯一、巡洋艦にアウトレンジ射撃された戦艦」というありがたくない称号を頂いている。


再会

 WW2後の改装ではレーダー搭載のために艦橋の大型化、燃料搭載量の増大、主砲を新型の自動砲に換装とそれによる重量軽減のためカタパルトを撤去している。
 この時〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉にはかなり明確な区別がついた。まず〈鳥海《ヴェネチア》空〉の主砲は手数重視の方針をとって給弾装置を強化。全力射撃時には焼きうどんのように砲弾が繋がって見える(もちろん残像)程となり、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉は試験的にホットケーキのように平たく潰れるHESA弾(*注4)を発射出来るように改装。迷彩塗装も〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉が「メイドタイプ」、〈鳥海《ヴェネチア》空〉は「レストランタイプ」と呼ばれる塗装パターンを採用し、見た目からも姉妹の成長と性格の差が現れた。
 ただこの頃から〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉の方は原因不明の機関不調に悩まされる。突然機関が停止しそうになったり、酷い時には機関の蒸気圧を上げるのに24時間もかかるという「お休み」ぶり。 このおかげで艦隊行動試験も不合格になる有様でしばらくは地中海で艦隊支援を担当している。
一方の〈鳥海《ヴェネチア》空〉はというと実に活動的で陸軍の米派遣部隊を載せた輸送船団を駆逐艦〈萌木”ラヴォラトリーレ”玉緒〉や〈メエ”エスポシコ”〉といった「お友達」と共に護衛、あるいはゴアへの輸送などの「アルバイト」に精を出し、姉艦とも言える〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉の分まで奮闘している。
そしてソコトラ沖の後〈鳥海《ヴェネチア》空〉は一応の修理が終った〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉は今度は第4戦隊を結成。〈柴崎”ルクレツィア・ロマーニ”彩音〉による通商破壊戦とレグナティ艦長から一足早く別れたカヴァリーノが少将に進級して姉妹の指揮を執ることとなった。
そして内火艇に乗ってやってくるカヴァリーノを〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉の乗員一同が迎えてることとなる。
「帰ってくるのです・・・」と。何かを企んでいたらしい。
が、慌てて駆け付けた〈鳥海《ヴェネチア》空〉艦長が突っ込んで事無きを得た。彼から言えば「けだもの」にしか見えなかったらしいが。
この後カリブ海に移動してのんびりしたかったのだが、マルティニーク上陸により一変して激闘が始まる。
 第一次ウインドワード海戦では〈桜塚《シュリーフェン》恋〉〈鷺ノ宮《ビューロー》藍〉〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉が加わって大戦果を収めている。〈鳥海《ヴェネチア》空〉は船団攻撃(特に護衛の〈雛山〉級(*注5)攻撃)をためらって出撃しなかったが・・・


宿敵対決WW3編・ウィンドワード

 マルティニーク攻防戦もたけなわな11月、艦砲射撃のために〈クリストファロ・コロンナ〉と〈フランチェスコ・カラッチョロ〉をオリヴァー・ロメロ中将が率い、これに〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉と駆逐隊がつく。
 これに対し枢軸側は偵察機からの報告でこれに気付いたがこんな時に〈桜庭《ミズーリ》香澄〉〈遠場《ニュージャージー》透〉といった高速戦艦は空母部隊の護衛に行っていて不在。やむなく船団護衛をしていた巡洋艦部隊分離、阻止のため出撃をしようとした時英海軍北米戦隊(ハミルトン)から横槍が入った。
「自分達もカリブ海の同胞のために戦っている」
 さすがに自国植民地があるのに戦力を出さないのはまずい、英国は護衛等では奮闘してはいるが残念ながらそれは目立たない。何かアピールが欲しいのだ。装甲巡洋艦に「成長」した〈スフィー〉〈御影〉に将旗を掲げる曽璽中将の元迎撃に向かった。
 この戦いは伊側が艦隊行動で墓穴を掘り、枢軸側は通信齟齬で無茶苦茶な乱戦となった。〈鳥海《ヴェネチア》空〉は〈高瀬〉とすれ違い様に撃ち合った後続けて〈御影〉に「仕事の厳しさ」を教えるかのように15センチ砲を撃ちこんでいる。
 一方、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉には巨大艦がまっしぐらに接近してくる。〈スフィー〉だ。先手必勝。8000から全力射撃をかけて〈スフィー〉に食わせられるだけのHESA弾を叩きつけた。〈スフィー〉の舷側では片っ端からホットケーキのように潰れたHESA弾が炸裂する。命中したのは数十発。それでも倒れない(当たり前だ、相手は装甲だけなら戦艦だ)まさに「底無しの食欲」。
 「今度はこの〈スフィー〉様の凄さを見せてやる」
 反撃の31センチ砲が回転し、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉にお礼の一撃を食らわせる、たちまち端正な巡洋艦がメイド服を裂かれるように叩きのめされる。止めを刺そうとした時・・・反対から魚雷がぶち当たった。〈鳥海《ヴェネチア》空〉だ。〈スフィー〉はいきなり3本も食らったので傾き始めた。よほどまずいものを食ったのだろう。
 「おぼえてろ!」
 と撤退する〈スフィー〉、なんか数年前も同じパターンだったような気がするが、それはそれだ。〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉の両艦もほとんどの主砲塔と構造物を叩き潰されてはいたが奇跡的に戦隊司令部は無事で〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉〈メエ《エスポシーコ》〉といった「お友達」に付き添われて撤退している。


 

エジプトの夜

 両艦は修理後、マルティニーク撤退作戦を遂行した後地中海に戻った。すでに英日軍はエジプトに攻めこみつつあり半年もしないうちに奪回されてしまった。
 こう急に事態が動くと時間稼ぎが必要となる。巡洋艦以下の艦艇はリビア等への補給の護衛に使われて損害を出していく。
 そんな中〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉はオーバーホール(*注6)の後にクレタ島への補給に出向いた。〈鳥海《ヴェネチア》空〉もついていく予定だったがこちらはベンガシへの補給予定が入ったのでキャンセル。
 補給というあまり戦闘艦艇らしくない任務ではあるが艦内は終始明るかった。しかしイラクリオン(クノッソス遺跡で有名)沖で艦尾を座礁。挙句に漁船に衝突されるわと「大凶」を引いたような事態を引き起こして帰還。カヴァリーノは駆逐艦を経由して〈鳥海《ヴェネチア》空〉に乗り換え、ベンガシに荷物を降ろした後〈鳥海《ヴェネチア》空〉艦長はカヴァリーノに聞いた
「行かない?」目的地はアレクサンドリア。ちょっとしたデートのようなものだ。カヴァリーノも承諾した。補給なんて「仕事」はつまらない。
 静かに沖に到着後、〈鳥海《ヴェネチア》空〉は艦砲射撃を始めた、アレクサンドリアの夜景が火災で明るくなる。観ている分には美しい光景だ(住んでいる人間にはたまったものではないが)。しかしこういう夢のような行動は長くは続けられない。夜明けも近いのだ。
 「もうお終いかぁ」物足りなさと嬉しさを残して〈鳥海《ヴェネチア》空〉は撤退した。もっといたいのに・・・


出撃前夜

 51年7月27日、カヴァリーノは艦隊司令部でイタリア艦隊司令のダ・ザラ大将や他の提督達とマルタへの出撃について激論を交わした。結果は出撃。そして港に戻ってみると・・・〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉の乗員がぐてんぐてんに酔っ払っていた。笑い上戸に泣き上戸。半脱ぎ漫才を始める奴まで。まったく・・・しかし決戦への出撃前の緊張をほぐすのには一番いいかも知れない。ワインを飲み女をメイドや義妹のように囲う。それがイタリア人なのだから。
 次の日、彼らは出撃した。巡洋艦戦隊としてレグナティの〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉と共に「一発攻略」を狙った英軍の重爆部隊を叩き落したが「地道に攻略」してきた艦載機部隊は落としきれずに護衛していた空母部隊を沈められている。
 そして52年3月にカヴァリーノは米戦線の後始末をつけるために渡米した。


そして。

 52年8月、WW3は終結した。しかしここからが大変である。両艦は9月の講和条約に「物語の最後を飾るため」修理された〈霧島《ローマ》佳乃〉の護衛として英国に出向いた後、ないものをかき集めて艦艇を維持していた。なにせ稼働艦艇が巡洋艦3隻と駆逐艦5隻しかいないのではきりきり舞いして働くしかない(*注7)
 54年3月、米派遣軍の撤収も一段落ついたカヴァリーノがラ・スペチアに戻ってみると兄、いや夫を迎えるように〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉は塗装しなおされ、艦内にはエンブレムが飾られていた。薔薇と百合。カヴァリーノは苦笑した。
 「俺にはどちらか一方を選ぶなんて出来なかったのか・・・」
 レグナティに笑われるな、これは。だがこれが自分の選んだ道だ。
 その後両艦とも練習艦となって珠のような将兵を育てた後、65年から改装で後部砲塔を撤去してヘリ巡洋艦へ。そして80年に除籍後、カヴァリーノ達の尽力によってナポリ湾で2隻を係留、その間を浮き桟橋で繋いで海上レストラン兼ホールとなった。姉妹の永遠の絆を象徴するかのように。
 もしナポリに行くことがあれば立ち寄られると宜しいでしょう。少なくとも英連邦博物艦〈スフィー〉で出されるホットケーキよりはよいホットケーキが食べられると思いますよ。英国にグルメ対決で負けたらイタリアが滅びますから。


要目

  • 基準排水量 9615トン 
  • 満載排水量 11810トン
  • 全長 189.3メートル 
  • 全幅 19.2メートル 
  • 喫水 6.9メートル
  • 主機 ベルッツオ式ギアード・タービン2基/2軸
  • 主缶 ソーニクロフト缶8基
  • 出力 115000馬力 速力 33ノット
  • 航続力 14ノットで4000海里
  • 兵装 
    • 55口径15.2センチ3連装砲2基、同連装砲2基(49年に52口径15.2センチ連装両用砲4基と換装)
    • 50口径9センチ単装高角砲8基
    • 54口径37ミリ連装機銃4基
    • 65口径20ミリ連装機銃6基
    • 53.3センチ3連装魚雷発射管2基 
  • 水偵2機、カタパルト2基(49年撤去) 
  • 機雷120個搭載可能
  • 装甲 
    • 舷側140mm(110+30)
    • 甲板45mm
    • 砲塔140mm

同型艦


#注1:同時に大型駆逐艦に対し数を揃えるため、〈カピターニ・ロマーノ〉型が建造されたが、ドック等が足らないため日本の北崎造船に改良型を発注、これが〈マコティーニ〉級である(4隻発注、内2隻は完成前に日本が接収、〈美汐〉級となる)
#注2:伊当局からの公式設定では同サイズだが、「〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉」の方が絶対大きい!」という突っ込みは全世界の戦史関係者や軍事ファンのお約束である。
#注3:両艦攻撃時には「虐めたくなる」「奴隷にしたくなる」などという妙な通信がよく飛び交ったという。
#注4:またはスクワッシュ(潰れる)弾。目標に当たると潰れて(貫通はしない)装甲内部を剥がし、その破片で相手を叩く。
#注5:蔑称は「ゴキブリ」
#注6:「解体される」「暇でしょうがない」と乗員は不満続出だったそうだ。
#注7:他に戦艦2隻と空母1隻、海防戦艦その他がいたが損傷したり予算がなかったりで稼働不能。