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〈端本《チーニョ》久美子〉

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〈端本《チーニョ》久美子〉

フェアリーテール「Natural2-DUO」「Natural ZERO+」端本久美子


 数奇な運命からイタリア空母となった南部連合最後の新造航空母艦。ちなみに南部連合時は〈端本《リプライザル》久美子〉という艦名を名乗った。

建造経緯


 ポスト隆山条約空母である〈アンティータム〉級(英国の〈アーク・ロイアル〉級の準同型艦)の発展型で、英国側発展型である〈神尾《イラストリアス》観鈴〉をタイプシップとしている。違う点は〈神尾《イラストリアス》観鈴〉では114ミリもあった格納庫側壁の装甲を38ミリに減らして格納庫を大きくし、搭載機を増加させるとともにフランス式の水雷防御と〈メイフェア《ジョッフル》〉級が採用した斜め発着艦装備をとり入れていた。機関はオーソドックスなパーソンス式タービンと英国ご用達の3胴式ボイラー、対空兵器はフランス式の13.5センチ両用砲と宿敵合衆国にも売りつけた商売上手のボフォース社謹製対空機銃。
 外見的には後方に傾斜した煙突と後部にある用途不明の大型起倒式クレーンが特徴である。
 総合的に英国的堅実さと仏国的斬新さを備えた空母であり、日本との戦いで〈橋本《エセックス》まさし〉級をほとんど失った合衆国に対するプレッシャーをかけるとともにフランス流の遊撃戦による通商破壊、あるいは機動作戦などの戦いの柱となるべき新鋭空母であり、ヒューストンのブラウン社に発注され、建造が急がれた。しかし日米戦の早期終結と合衆国の立ち直りの早さは南部の予想を越えていた。そしてその時頼るべき英仏はその力を失っていたのだ。Uボートもかくあらんというニミッツ提督の潜水艦作戦も効果は薄かった。合衆国は英国と違って自給自足が可能、かつ戦闘が陸戦中心かつ陸上交通が発達していたからだ。


主人


 期待された新兵器というのは得てして「出来た時にはもう手遅れ」というパターンが多いが〈端本《リプライザル》久美子〉も同様であった。南北海軍の激突となった44年6月からのカリブ海の一連の海戦に間に合わず、就役時には南部連合の命脈は途切れようとしていた。まるで末期ガン患者のように。
 それでも〈端本《リプライザル》久美子〉は残された艦載機を搭載して出撃した。目標はミシシッピ河戦線。フロリダ半島で絶望的な抵抗をしている友軍のおかけで合衆国海軍は支援が間に合わない。ならばまだ勝機はある。ニューオリンズに突進してくる合衆国陸軍部隊に搭載機が全滅するまで空襲をかけ、最後には13.5センチ砲で陸上射撃という離れ業までやり、合衆国側の空襲で中破してヒューストンに戻った。ミシシッピ河流域が合衆国軍の手に落ち、分断された南部連合の命は尽きるのも時間の問題。
 それでも残された僅かな時間でもいい、南部連合という「主人」ともにいたい。廃墟となったガルベストンで形だけの修理を終えて〈端本《リプライザル》久美子〉は出撃準備を整えた。ついてくる護衛は駆逐艦3隻。搭載機は僅かに15機。文字通り「主人」に殉ずる覚悟だった。だが彼女の思いも寄らないところで話は進んでいた。コーパスクリスティーへの退避命令が出たのだ。
〈端本《リプライザル》久美子〉は南部連合の「想い出の品」を積みこんで南下した。既に制海権すらない。しかし運はこんな時にあるもので空襲を避けつつなんとか到着した。


脱出そして出会い


 東西に分断された南部連合は、その残力をそれぞれタンパとコーパスクリスティーから脱出させていく。それぞれ秘密裏に南部連合存続を図るドイツと日本の力を借りてである。脱出できる限り、それは文字通り根こそぎ奪い取るという表現がぴったりだった。
 これに対し合衆国はこれという妨害措置が出来ない。なぜならこの第二次南北戦争は合衆国側からすると「シビル・ウォー・セカンド=第二次内乱」であり、国内問題として片付ける腹だったのだ。そうすることで南部連合を孤立化させ、少ない犠牲で統一(戦争無しに合併できれはなおよし)する作戦だった、だからドイツ・日本といった他国は「中立国」でありそれを攻撃することは両国に宣戦布告されかねない。敵を増やしていいことなんてどこにもない。更にはカリブ海にはどさくさまぎれの占領を阻止すべく「アルマダ・エスパーニャ」ことスペイン艦隊までが遊弋している。〈川澄《エルナン・コルテス》舞〉と〈倉田《フェルナンド・デ・マガリャンイス》佐祐理〉を始めとするスペイン艦隊は数こそ少なめだがどれも精鋭揃い、一戦交えれば合衆国艦隊といえどもたたでは済まない。結局合衆国海軍はフロリダ海峡を封鎖するにとどまり、メキシコ湾への行動は不活発で終った。
 そしてヒューストンに立て篭もった南部連合政府がついに降伏したその日、つまり南部連合が亡くなったことを見届けるように〈端本《リプライザル》久美子〉はコーパスクリスティーから出港した。しかし軍艦旗は掲げずに。死につつある南部連合軍艦という「籍」を入れるな。新しい道を歩け。それが南部連合最後の艦隊司令官からの「遺言」だった。
 〈端本《リプライザル》久美子〉は忠実にそれを守りつつユカタン海峡を真っ直ぐ抜けていく。敵も味方もいない孤独な彼女。しかし全く別の当事者がそこに現れた。水平線に見えるスマートな巡洋艦。ドイツのものとも日本のものとも違うその艦影は・・・なんとイタリア艦隊だった。ご苦労様なことだがドイツのお義理ではるばるカリブ海まで監視艦隊を派遣したのだ、この艦隊(ビアンケリ)は〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉〈マコティーニ〉の3巡洋艦と護衛艦4隻で編成されていた。はっきりいって顔見せ以外の何者でもない。だがそんなお義理部隊にもいいことはあるものだ。
 〈マコティーニ〉が先に行って〈端本《リプライザル》久美子〉に停船を命じた。相変わらずバタバタと発光信号を出しているがなんとか伝わったようだ。
「と、とまれぇ!」
「『とまれ』とはこうするんですよ」
「『とまれ』・・・こうかな」
「そうそう」
 なぜか向こうでは発光信号訓練が始まっている。そもそも大きさが7倍(4000トンと28000トン)違う上にこれではどっちが拿捕されているかわからないではないか。というよりもこの状況は子供をあやす母親の世界。ビアンケリは他の艦も前進させてこの情けない状況を収束させた。それでも自分達よりも遥かに大きな空母を伴うのは違和感がある。みんなまとめて子供だな・・・そうビアンケリは思った。


新しい家


 地中海に入って伊本国のドックに入った〈端本《リプライザル》久美子〉は自由南部連合(欧州連合側)とイタリアの交渉の結果、イタリア艦となることが決定した。軍艦旗を掲げていない艦は軍艦ではない、それに戦時禁制品まで積みこんでいる。これは拿捕に値する・・・等々。まあ理由は後からいくらでもつけらける。ただこれはイタリア海軍にとっては実にありがたいことである。そこそこの費用で新型空母が手に入ったのだから。
 早速アゴステーニ造船官の元で角度7度のアングルド・デッキとフランス式着艦装置、対空兵器の交換、艦橋上部に円型対空レーダー(通称バンダナ)を装備、燃料タンクの一部を補給用にする改装が行われ、46年7月に〈端本《チーニョ》久美子〉と艦名を変更して再就役を完了した。「リプライザル=復仇」から「チーニョ=白鳥」への変更である。
 就役後はG57/N戦闘雷撃機を積み、護衛として〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉、南部連合への貸与予定がキャンセルされた駆逐艦〈《クリオシーネ》よしみ〉〈《ペレクーセ》ひとみ〉を加えて訓練に励み、来るべき戦いに備えたが、元南部連合艦たる負い目を傍目には感じさせない艦の明るい雰囲気とその補給能力は駆逐艦や護衛艦という「子供達」にも受けがよく、また〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉に対しては「大家」という立場をとりつつ行動していった。


空母機動部隊


 〈端本《チーニョ》久美子〉が日々の訓練を送っていたその頃、〈今村《スパルヴィエロ》正樹〉は改装を終えて艦隊に戻り、〈ビアンジール〉級空母の建造も進み、まもなく空母部隊が編成できるところまで来ていた。そうなるとこの空母群をどう使うか。なにせイタリアは複数の空母を運用したことがない。WW2では個艦ごとに艦隊護衛につけて行動させ、搭載機も輸入のF4U戦闘雷撃機とそのライセンス生産版Ba201で済ませていた。空軍との取り決めで保有機に制限がある海軍としては1機種でなんでもできる機体の方が都合がよいからだ。
 しかしどこにでも画期的な意見を言う人間はいる。ドイツではノルトマンがその役だったがイタリアではカヴァリーノがその役目を担った。ただし・・・
「航空母艦?しかも崩壊した南部連合の?まさにそれは『若くて綺麗な未亡人』!萌える展開ではないか!俺はこれを待っていたんだぁ!」
 カヴァリーノはそう叫び早速戦艦をも含めた防空陣形からなる機動部隊案を海軍に提出した。これはノルトマンが提案した空母機動部隊案に近い。しかし彼が戦術的発想から出した真面目な提案だったのに対し、カヴァリーノの方はどちらかというと邪な発想から現出した不真面目なものだった。要するに空母が守りたいだけ。
 ところが真面目に提案したノルトマンが遠ざけられたのに比べ、半ば不真面目なカヴァリーノの案は認められた。なんとなればドイツのように艦艇に余裕があるわけではない上、地中海で英艦載機に苦しめられた経験を持つイタリアには自然と防空陣形が備わっていたのだ。
 〈今村《スパルヴィエロ》正樹〉艦長アディジオ(後の第1空母戦隊司令)の了解も取り付けカヴァリーノの案は採用された。ただし当の本人は巡洋艦戦隊司令に飛ばされたが(さすがに堂々と叫ばれては・・・)。
 代わりの空母部隊(第1空母戦隊)司令はジョヴァンニ・カセラ少将、かつて〈ヴイットリオ・ヴェネト〉艦長時、シルテ湾海戦で〈千鶴()〉の鬼のような雷爆撃から命からがら逃げかえった人物で航空攻撃の威力は体の芯からわかった人物だったが、防空に傾斜しすぎて攻撃がおろそかになりがちな欠点を持ち、それがスエズ攻防戦で露呈することとなる。
 そしてカヴァリーノが第2戦隊と第1空母戦隊を機動艦隊として統一指揮できるようになった時、もはやイタリアの敗勢は決定的なところまできていた。同じような提案をしたノルトマンも彼と同じ運命をたどったのは歴史の大いなる皮肉だろうか。どちらも芸術肌の人間(カヴァリーノは音楽家、ノルトマンは画家)というところも。


WW3


 〈端本《チーニョ》久美子〉はソコトラ沖では空母部隊旗艦として上空直援、弾着観測機護衛などを担当してイタリア艦隊大勝の要因を創り、その後はカリブ海にDuo艦隊の一員として転戦、ドイツ北米艦隊カリブ海支隊やフランス・カリブ海艦隊と共に行動した。
〈愛沢《ライン》ともみ〉達の訓練に付き合ったり、あるいは〈山名《ロードアイランド》春恵〉の艦載機が行方不明になった時には〈神楽坂《MC207R》潤〉を飛ばして連れかえらせたり、他にも〈鳥海《ヴェネチア》空〉を「バイト」としてドイツ側に助っ人に派遣、共同行動を取らせたりもしている。
 熾烈な戦いを差し置けば最も独仏伊三国の協調が取れていた時代なのかも知れない。しかし英日軍のスエズ奪回が始まると否応なく帰還することになった。
 スエズ陥落後は船団護衛や直援に活動。そして51年夏、念願の機動部隊司令となったカヴァリーノは旗艦となる〈端本《チーニョ》久美子〉を訪問した。広大な飛行甲板上では何かが燃えている。それは南部連合崩壊時に持ち出した品々を燃やす炎だった。そして最後の形見である南部連合の軍艦旗を焼こうとした時、カヴァリーノはそれを止めさせた。
 想い出を引きずってもいいじゃないか、もう南部連合の復興はないかも知れない。だが何もそれに決別しなくても、こちらは全てを受け止める用意はある。元が何だっていいじゃないか。
 そして全てを受け入れて〈端本《チーニョ》久美子〉はイタリア第一機動艦隊旗艦として出撃、集中攻撃を受けて沈没となった時、艦長は艦と運命を共にすることを決意した。イタリアという新しい「あの人」に殉じて・・・。


要目

  • 基準排水量 27120トン
  • 常備排水量 30200トン
  • 全長 245.3メートル
  • 全幅 30.2メートル
  • 喫水 7.4メートル
  • 飛行甲板 250.6メートル×47.2メートル(最大)
  • 主機 パーソンス・タービン4基/4軸
  • 主缶 アドミラルティ式3胴缶4基
  • 主力 148000馬力
  • 速力 32ノット
  • 航続力 18ノットで6000海里(南部連合時は12200海里)
  • 兵装
    • 45口径13.5センチ単装両用砲6基
    • 60口径6.5センチ単装高角砲12基
    • 70口径35ミリ連装機銃12基
  • 搭載機 60機
  • 装甲
    • 飛行甲板76ミリ
    • 舷側38ミリ

同型艦