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〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉

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〈多上《レジナ・マルゲリータ》愛姫〉

フェアリーテール・FC03・DreamSoft「Natural」「Natural Zero+」多上愛姫

対大和用戦艦


 1942年4月、マルタ攻防でイタリア艦隊が対戦した日本戦艦〈高瀬《大和》瑞希〉のデータは欧州各国に強い衝撃を与えた。これまで欧州各国はそれぞれの仮想敵国の主力艦を意識し、それよりも上の主力艦を造っていれば足りる。だが日本(と合衆国)はその一段上を進んでいることを欧州は北海で、地中海で見せ付けられた。
 そもそも戦艦を沈めるために必要な艦隊航空兵力が決定的に不足している独伊仏が〈高瀬《大和》瑞希〉を始めとする新鋭戦艦を攻略するには同じ戦艦を持ってくるしかない。 後から考えてみれば実に無駄なことをやったものだが、戦艦を軍事力・国力の象徴としてみるならばその気持ちを知ることは出来るだろう。総統ヒトラーは戦艦を軍事力の象徴として失うことを恐れ、出撃を出し渋ったことは余りにも有名だが、多かれ少なかれ他国でも同じような考えを持っていたことを忘れてはいけない。
 かくて欧州諸国は対〈高瀬《大和》瑞希〉級用の戦艦を建造することになった。

 1943年2月、これまでの戦いで損耗した戦艦を補い、かつこれから対戦するであろう新型戦艦を上回るべく新戦艦の設計が開始された。1年前には8隻を数えたイタリア戦艦部隊も今や5隻に減少(この後更に1隻を喪失)しており、これからの戦いを考慮すれば補填が急務。だが限られた予算では「質的優位」を狙うしか道は残されていなかった。
 これに応えるべくヴァイス・フォレスト造船総監が総括指揮を執り、5万5千トン、31ノット、42センチ3連装4基で計画がスタート。主砲開発のためにフォレスト総監自らドイツに出向き、そこから電話回線で仕様書を送る珍しい方法で部下を指揮した。
 しかし、42センチ砲を12門積み、対18インチ防御を施し、30ノット以上で走らせ、かつ5万トン台の排水量で収めることは最初から無理という他なく、予算と資材から来る排水量、建造費抑制と要求性能との板挟みは設計陣を悩ませ、激しい論争が夜を徹し、延々と繰り広げられていく。
「こんな平凡な性能で海戦が出来ると思っているんですか!」
「やかましい!こっちは資料に囲まれて毎日徹夜で要求に合わせようとしてるんだ!だいたい戦艦がそう簡単に完成すりゃ世話ねぇよ!」
「その分建造が遅れるんですよ!資材調達にどれだけ苦労すると思っているんですか!」
とまあ、設計局では設計と建造の担当がそれぞれのプロ意識を武器に壮絶な言い争いを始める有様。しかし幸運なことに黒海沿岸のマルティー南造船所で建造中に捕獲された〈櫻井《ソヴィエツカヤ・ウクライナ》詩乃〉をイタリア本国に曳航、二番艦用の資材を流用して建造を続行するという荒業によって予算制約が緩和され、それとともにこの壮絶な言い合いを直視した軍令部副長イアッチーノからのの「思うがまま造りなさい」というお墨付きにより6万トンどころか実質では7万トンに達する巨大戦艦として建造されることとなった。
 艦型からいえば46センチ砲を載せられるが製造能力と防御強化のために敢えて42センチ砲を採用、これを最初は3連装砲塔4基に収める予定だったが、更なる防御力強化のために2、3番砲塔を連装に変更。この砲は砲身そのものはドイツのそれと同じ(共同開発、砲身長は47口径)だが、自国設計の砲塔と装填装置を使用、装薬を増やして初速を950m/秒に高め、46センチ砲をも凌ぐ強大な攻撃力を有している。これと共に副砲も対空防御と対巡洋艦・駆逐艦を兼ねて新型の15.2センチ3連装自動砲を搭載。この砲塔は〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉と同じものだが、対主力艦戦闘を考慮して若干防御が強化されており、これを2番、3番主砲塔脇に背負い式に配置(合計8基24門)ポスト隆山戦艦としては異様に副砲の門数が多いが、これは発射速度の速い両用砲であること、当時のイタリア技術では小口径砲弾を近接信管化出来なかったことがあげられる。もう一つの武器であり、近代戦艦には欠かせない対空砲は6.5センチ単装砲を積む予定だったが、射程不足が指摘されて7.6センチ単装砲へと変更。これをイタリア戦艦の伝統(?)に基づいて片舷8基を一列に装備。他に35ミリ機銃を空いたスペースに搭載している。
 なお、水上機設備は計画上は存在していたが、対空防御の強化が叫ばれて廃止され、運用スペースには機銃座が設置され、格納庫には内火艇が入り込んでいる。
 防御に関しては主砲門数を減らし、42mもの艦幅を有しているだけでも強固さが判るが、艦容に違わず対18インチ砲弾を絶対条件とした複合装甲と多層水中防御は優秀で、後々の海戦においても充分過ぎるほどの成果を発揮している。
 機関は量産され、信頼性も高い〈カピターニ・ロマーノ〉級のものを出力を上げて採用、ボイラーには〈ニーノ・ピクシオ〉級(1914年竣工)以来の多種燃料燃焼装置が設置されて燃料の融通性を図り、前級でも採用された主舵と二枚の副舵による良好な運動性が継承されている。
 艦容はイタリア艦らしく芸術的かつ優美、シアのついた艦首は航行性能の優秀さを表現し、艦橋も戦訓により大型化、測距儀の左右ウイングをあたかも「もみ上げ」のように上下に延ばし、更に塔型に大きくしてレーダーを搭載、この合計3基のレーダーを活用して電子技術の弱さを補うと共に決戦距離での命中率を高めている。(ただしあくまで決戦距離であり、遠距離での命中率はかえって低くなっている)
 このため艦橋は前部煙突と一体化、後部煙突も対空火器のスペースを稼ぐためにマストと一体化してマック式とされ、すっきりしたデザインとなっている。
 確かにこれだけの巨艦になってしまった彼女は国力の無駄使いかも知れない。だが「決戦距離において〈高瀬《大和》瑞希〉級(当然、〈川上《ケンタッキー》由里己〉級も入っている)に打ち勝てる事」という簡単かつ難しい至上命令を限られた予算、不足気味の国力で実現した事は高く評価されるべきであり、仮想敵である〈高瀬《大和》瑞希〉級との対戦こそ実現しなかったものの、
「枢軸海軍は彼女を撃沈出来なかった」
という冷酷な事実は彼女の存在意義を見事に証明しているだろう。
 彼女を沈めたのは砲弾でも魚雷でもましてやミサイルでもなく、ある意味反則、または「鬼畜な」超巨大爆弾なのだから。

要目

  • 公試排水量 68821トン
  • 常備排水量 73290トン
  • 全長 283.8メートル
  • 全幅 42.1メートル
  • 喫水 12.3メートル
  • 主機 ベルッツォ式ギアード・タービン4基/4軸
  • 主缶 ヤーロー・アンサルド缶8基(多種燃料燃焼装方式)
  • 出力 240000馬力 
  • 速力 31ノット
  • 航続力 15ノットで7800海里
  • 兵装
    • 48口径42.5センチ3連装砲2基 同連装砲2基
    • 53口径15.2センチ3連装両用砲8基
    • 62口径7.6センチ単装高角砲16基
    • 70口径35ミリ連装機銃20基(後に70口径40ミリ機銃に換装)
  • 装甲
    • 舷側460ミリ
    • 甲板260ミリ
    • 砲塔450ミリ

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