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〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉

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イタリア海軍巡洋艦〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉("Lucretia Romani"/Regina Marina)

フェアリーテール「Natural2-DUO」「NaturalZERO+」柴崎彩音)

求めたものは三つ

 「地中海の覇権を握る」から「地中海を守る」へと戦略を転換したイタリア海軍は、第二次大戦での幾多の海戦の戦訓を元に新たな艦艇の計画・建造に入った。
 得られた戦訓の中で大きなものはエアカバーの無い艦艇の無力さと砲撃戦が意外に接近した状態で行われることだった。
 前者はともかく、後者に関しては地中海ではより激しく行われたが、そこで証明されたのは大口径砲が6インチ砲を中心とする中口径砲にしばしば撃ち負けること、大口径砲による遠距離射撃がそう簡単に当たらないものであるということだった。
 戦艦はともかく巡洋艦に必要なのは手数の多い砲と防空火力。その事に気づいたイタリア海軍では1943/44計画において新戦艦などと共に新巡洋艦の建造を企図し、その中でフォレスト造船官率いるグループの設計案が採用された。この設計案の意図は三つ。敵艦隊を味方の制海権海域まで引き寄せるという「誘惑」の役割、艦隊戦闘時には他の巡洋艦を率いる「姉様」としての役割、単艦または少数の戦隊をもって敵遊撃部隊を偵察、分析、攻撃するという「編集者」としての役割。
 それだけの要素を兼ね備え。なおかつ建造コストをできるだけ抑えるという過酷な要求を一つのフネに合わせて完成したのは巨大な「軽巡洋艦」であった。(予算上の類別、海軍では遠洋装甲艦(Mare Corazzata)に類別している)

その内実

 まず本級の一大特徴である主砲の15.2cm砲。正式名称は152/53OTO1946といい、現在においても世界屈指の艦砲メーカーであるオットー・メララ社が初めて開発した自動砲である。
 発射速度の向上こそが海戦を制するという発想のもと、同様な考え方を持っていたスウェーデンのボフォース社と協力して開発された本砲はスウェーデン巡洋艦〈トレ・クロノール〉級に搭載(15.2cm/53 Model1942)されていたが、OTO社ではさらにこれに改良を加えて発射速度、初速を高めた砲として完成した。
 同砲は自動砲の基本である油圧スライド式の尾栓を採用し、ドイツに習って薬莢と砲弾を一体化。この方式は同じように自動砲を採用した合衆国の分離薬莢弾、日英の段ボールに包んだ簡易薬筒式と比較して被弾時の誘爆に強く、実戦においてそれは見事に証明された。
 発射速度を上げるために各砲には揚弾機が2組づつ設けられており、装填機能の自動化によって毎分平均15発、一時的に(約3分間)ならば毎分22発という驚異的な発射速度を実現。15000mを超える射高をもあいまって用兵家が長らく追い求めていた「敵機を攻撃前に叩き落す」をほぼ実現した。
 しかしその代償としての装甲の強化、揚弾機の複数化(見た目は3連装だが、内部は実質6連装)による砲塔の巨大化は避けられず、砲塔重量は455t。砲塔が乗るローラーバス (回る部分)の直径は8.2mという凄まじい値に達し、しかもこれを下手な機銃真っ青の速度で振り回す。
 5基の主砲配置は前方に背負い式で2基、後方1基、そしてひときわ目を引くのが中央部に互い違いに配置された3、4番砲塔。この梯型(アン・エシュロン)配置は中心線上に砲塔を並べるよりも全長を短縮でき、また防御上有利な中央部に砲塔を置いても前後方向に射撃できるという利点がある。
 その他の兵装としてはこれまた新開発の60口径7.6cm単装両用砲を8基搭載。この砲は初速850m/秒、発射速度毎分70発の性能ながら砲塔内にはたった一人しかいないという無人砲の走りともいえる存在で、計8門という少ない門数を補って余りある威力を誇った。

 船体防御に関しても条約で解体され、保管されていた戦艦の装甲板を流用しただけあって強力で、舷側水線部に傾斜をつけた250mm(上端は220mm)を装着、水平防御はクッションを挟んだ50mmと80mmの二枚重ね。砲塔部分も前面230mm、側面130mmという6インチ砲塔としては破格の重防御を備え、水中防御としても30m近い余裕のある船体幅を生かして多層式とエボナイト充填式を組み合わせた上、更に外側にコンクリートまで充填する念の入った構造で、極めて沈みにくく、かつ戦闘能力を最後まで維持できる艦として幾多の海戦でその強靭さを証明している。
 これらの重防御と高発射速度の主砲からもわかる通り、彼女は中口径砲を搭載する巡洋艦に対しては手数の多さと重防御で文字通り「堕とせる」性能を有し、仮に14インチ砲を有する装甲艦に対してもある程度渡り合える性能を有しているのがわかる。
 しかし艦に対して最大のダメージを与えられる魚雷を装備せず、手数の多い中口径砲のみの武装というのは戦術の問題とはいえ「獲物を堕としても沈められない」というのは実戦では常に問題にされることとなった。

 機関配置はタービン1基とボイラー2基を一つの部屋に入れたものを前に二組、中央砲塔部分を挟んで後ろに二組配置するという一種のユニット方式で、被雷時の被害を最小限度に食い止められるよう4組のユニットがそれぞれ推進軸を受け持つ。
 タービンそのものは今までのイタリア艦艇と同様だがボイラーは効率を上げるために商船で多用された強制循環式を採用、これに微粉炭燃焼装置を付属させた。石炭をそのまま燃焼させる場合に比べて燃焼効率が高まる上に質の悪い石炭も有効に燃焼させることが可能であり、商船や発電所のボイラーでは良く使われている。
 ただしこの方式は石炭を粉末にする装置とそのための動力を食うために少しでも馬力を欲する軍艦ではほとんど採用されなかった。それを敢えて採用したのは重油等の液体化石燃料のほぼ全量を輸入に頼るイタリアの懐事情がそれだけ深刻なものであったと言えよう。
 本級のプロポーションはシアの高い艦首を持つ乾舷の高い平甲板型。その船体の前部に背負い式配置の主砲がやや離れて2基。続いて上部に二基の射撃レーダーを背負い式に備えた大型の箱型艦橋、艦橋構造物の四方に配置された単装高角砲、対空レーダーを載せたマストと半ば一体化したマック。そこから後方V字型に突き出す集塵機を組み込んだ煙突、その後ろに右斜めに3番砲塔。左斜めに4番砲塔。そしてこれまたマック型の後部マストと射撃レーダーを載せた後部艦橋、その四方に配置された高角砲、一段下がって5番砲塔。そして合衆国式の艦尾配置カタパルトと続く。
 口径に比べて明らかに巨大な砲塔と優美だが大型の艦橋構造物、前後に離れた煙突から来る長大さから放たれる印象と迫力はとても2万トンクラスのそれではなく、下手な戦艦を超える圧倒的な存在感、とり憑かれかねない雰囲気・・・言い換えれば妖艶なそれであった。

 !艦長と副長 3隻が建造された〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉級のうち、1943/44計画分の2隻は急ピッチで建造が進み、47年の秋には艤装と公試を同時に進めて竣工、開戦前には既にインド洋に入って訓練を続けていた。
 〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉の初代艦長はカヴァリーノ大佐。地中海で巡洋艦戦隊の副官や参謀長を歴任した彼はマランツィアーノやデ・ラ・ペンヌといった次代を担う若手達と同様、半ば政治的意図を持ってこの最新鋭巡洋艦の艦長に任じられたというのは表の話。本当は自分から艦長就任を人事部に直訴したのである。理由は一つ、副長のレグナティ中佐の強すぎる個性がこの艦を狂わせかねない。そう直感したからである。何せ本来の初代艦長である艤装委員長が副長に支配されるのを恐れて無責任にも逃げ出したぐらいなのだから。
 このレグナティ中佐、カヴァリーノよりも年上でありながら家庭環境とやたらに組織に波風を立てる確信犯的行動の多さから昇進が遅れていたのだが、自身は気にも止めていなかった。今を楽しめればいい。それがこの人物の性格を決めていた。
 両親を早く亡くしたカヴァリーノにとってはレグナティは家族と同様の存在。しかしこの唯一の「家族」はカヴァリーノにとっては荷が重過ぎる存在だった。
 開戦と共に〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉はイタリア東洋艦隊の一員としてインド洋に出撃した。ドイツ東方艦隊と「協力」して通商破壊戦を行うべし。そう艦隊司令部からは命じられていたがそんなことはおかましなし。次から次へと日英の商船に手を出して沈めていった。捕まった商船や護衛艦は降伏して敵側に「調教」されるかそれとも上構がボロボロにされるまで打ちのめされるかどちらしかない。
 最初のうちこそ副長を制止できたカヴァリーノだが、ミイラ取りがミイラになるのにはさほど時間はかからなかった。ソコトラ沖海戦にも加わらずひたすら通商破壊を続ける日々。それはオランダ巡洋戦艦をドイツが接収した〈《フィリブス・ウニーテス》ココロ〉と一時的に戦隊を組み「もう一人の」元オランダ巡洋戦艦〈牧部《春日》なつみ〉や〈スフィー〉などと戦ったSC船団護衛戦の後に上層部のはからいで彼が少将に昇進し、巡洋艦戦隊の司令官として〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉の面倒を見るまで続いた。
 レグナティはそのまま艦長に昇進して〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉と共にそのままインド洋に残ったが、遣印艦隊ミャンマー支隊との戦いで護衛の〈桜井〉級防空巡を撃沈するもの支隊旗艦の防空軽巡〈鳴瀬〉を始めとする支隊の共同攻撃の前に〈氷川丸〉以下の船団への攻撃を封じられて敗北・撤退(南インド洋海戦)、このすぐ後に起こったパナマ上陸の影響もあってインド洋から去っていく。それはインド洋における欧州連合の海上作戦の終焉でもあった。

 

カリブ海

 49年6月、西インド諸島の警戒とドイツ軍によるグアンタナモ上陸作戦の支援を兼ねてイタリア・カリブ海艦隊が編成された。といっても〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉を旗艦として他に巡洋艦と駆逐隊少々の小所帯。これにおまけとして上陸支援用にと海防戦艦〈江崎《エンリコ・ダンドロ》日奈美〉が付属する。対ポケット戦艦用としてスウェーデンから発注された艦を買い取った〈江崎《エンリコ・ダンドロ》日奈美〉は主砲口径と打たれ強さは抜群だがとにかく脚が遅く、出撃のたびに足を引っ張られて調子が狂ってしまう〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉からは「狸」と言われる始末。
 こうした割とのんびりとした雰囲気は枢軸軍のマルティニーク上陸によって一変する。彼女達がマイアミにいたところをドイツ北米艦隊・カリブ海支隊のハイエ少将から臨時戦隊を結成してマルティニークに殴りこむ作戦を聞かされると
 「面白そうだね」
 レグナティは即決し、〈江崎《エンリコ・ダンドロ》日奈美〉に事後処理を押し付けた上、〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉を引き連れて勝手に出撃していく。後に残るは〈江崎《エンリコ・ダンドロ》日奈美〉からの「この女狐〜」という叫び声だけだった。
 〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉を連れた〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉は奇襲攻撃に慌てふためく敵艦を垣間見ながら一番近くにいた犠牲者に15.2cm砲を叩き込む。その犠牲者は重巡洋艦といっても薄っぺらい装甲しか持たない〈キャンベラ〉。反撃も何もする間もなくアっという間に火達磨と化す。堕としがいのない艦だ。
 大戦果を挙げて意気揚々の帰り道、レグナティはハイエに向けて一言だけ通信を送った。
「これで終わりだと思うな」
 輸送船に手を出せなかったことか?しかし敵空母からの攻撃を考えると引くべき時は引くべきだ、ハイエが返信を送ろうとした時、雷跡が〈桜塚《シュリーフェン》恋〉をギリギリで掠める。合衆国の旧式潜水艦〈S−44〉が老骨に鞭打って放ってきた魚雷だった。
 終わりではなかった。大戦果に酔って周囲への気配りを忘れていたのだ。駆逐艦がいない艦隊がのんきにまっすぐ進むことがいかに恐ろしいか。そしてこれからの戦いがいかに大変なことになるか。〈S−44〉の一撃はそれを暗示していたのだ。

 歴史はその通りになった。マルティニークという小島を舞台にした激戦は「鉄底」と言われるほどに関係した国のフネを呑み込み、大西洋では両陣営の空母が航空機を潰しあう。
 いつのまにかお義理でつきあっていたイタリア艦隊も空母やら戦艦まで持ち込むハメになっていた。
 中部大西洋海戦では空母〈端本》チーニョ》久美子〉の護衛として合衆国空母からの攻撃隊を片端から叩き落し、休む間もなく仏独艦艇を率いてマルティニークに殴りこんで艦砲射撃を加え、更には阻止にやってきた枢軸連合艦隊(ただの寄せ集め)と説明するのも疲れ果てるような無茶苦茶な戦いを演じる(第四次ウインドワード海戦)
 この一連の海戦で〈椎名《浪速》ゆうひ〉に向けて〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉は150発以上もの15.2cm砲弾を叩き込んで(命中は41発)一時廃艦にするほどの恐るべき威力を発揮する。しかし続けて現れた〈遠場《ニュージャージー》透〉は前者の彼女より有能だった。
 〈遠場《ニュージャージー》透〉にとって重要なのは艦砲射撃を阻止すること。護衛と戦う必要は無い。だから〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉からの砲撃で両用砲がほとんど吹っ飛んでも彼女を狙おうとしなかった。
 「お前の運命は定まった」
 冷徹な〈遠場《ニュージャージー》透〉が狙ったのはマルティニークを艦砲射撃のキャンバスに変えようとしていた〈河田《フランチェスコ・カラッチョロ》穂鳥〉だった。彼女を狙った16インチ砲弾は〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉の上空を文字通り飛び越えて次々と命中。〈河田《フランチェスコ・カラッチョロ》穂鳥〉を大破炎上させて脱落させ、続けて接近してきた独軽巡と駆逐艦を主砲の水平射撃で軽く追い払い、機関だけは無事だった〈椎名《浪速》ゆうひ〉を援護しながら余裕で撤退していく。
 残された〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉は〈河田《フランチェスコ・カラッチョロ》穂鳥〉をなんとか戻すよう駆逐艦に命じた後、司令部の海岸乗り上げ命令を無視して輸送船をマルティニークまで送り届け、「姉様」としての責任を果たしている。
 
 〈遠場《ニュージャージー》透〉艦長が言ったとおり、この海戦によってマルティニークの運命は定まった。確かに輸送船は島までたどり着いたとはいえ、その程度では島の兵士を維持できないほど追い詰められていたのではどうにもならなかった。翌年の撤退作戦だけは見事に成功さねせたものの既に沈んだフネや人は救えない。たった一つの島にこだわった報いはあまりにも大きすぎた。
 〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉もまた〈氷村《アドミラル・シェア》遊〉と共に行ったカリブ海での通商破壊戦を最後に地中海に戻ることとなる。
 『忘れるな。火にあぶられたドイツ民族の痛みを。忘れるな、我らの苦しみを。忘れてはならぬ』
 レグナティはウインドヒル戦隊に敗れた〈氷村《アドミラル・シェア》遊〉から放たれた上記の発光信号を読み、そして即座に、そして吐き捨てるように呟いた。
 「つまらないな」
 自分を被害者面して恨みを正当化する者に将来はない。将来の無いものを助けてもつまらない。レグナティ、そして〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉はカリブ海から去った。それは英軍の攻撃によってエチオピアのマッサワが陥落する4日前のことだった。

最後の戦い

 地中海に戻った〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉を待っていたのは紅海からスエズを突破しつつある英日軍。そして叩いても減らず、押してくる敵、押され、そして減って行く味方。
 ひたすらに戦果を欲し、上ばかり見ていたイタリア軍。その自分の足元が崩れていた事に気づいた時、敵は既にシチリアまでやってきていたのだ。
 マルタ沖海戦は〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉級3隻が揃って参加した唯一の海戦だが、1ダースも駆り出してきた日本大型巡洋艦を相手にしてはさすがに衆寡敵せず。旗艦と艦隊司令を失った時には既に夜明け近く、そして混戦の中でイタリア艦隊は半ば包囲されつつあった。
 戦死したダ・ザーラから艦隊指揮を受け継いだカヴァリーノ。彼が率いる〈鳥海《フィレンツェ》千紗都〉〈鳥海《ヴェネチア》空〉からなすべきことはただ一つ。生きて港に戻ること。しかし敵はこちらの3倍以上。しかも退路は塞がれ包囲網は縮まりつつある。
 彼はレグナティに通信を送った。そして返信される。考えていることは二人とも同じ。カヴァリーノは一瞬笑った。そしてあらん限りの大声で艦隊に伝えた。
 「全艦、敵艦隊に向けて退却しろ!」
 その瞬間、生き残っていたイタリア艦隊があらん限りの速度で突進する。方向はもちろん枢軸艦隊のド真ん中(つまり日本艦隊)。慌てて日本艦隊は迎撃に入ろうとするが味方と味方の間をあらゆる砲を乱射しながら強引に突破してこられては同士討ちを恐れて攻撃が及び腰になってしまう。そして駆けつけた空母機にしたところで下手に誘導爆弾や誘導魚雷を撃とうものなら味方に当たってしまう。敵味方接近状態では誘導能力が逆に仇になる。手をこまねいている間にイタリア艦隊は数グループに別れたまま枢軸艦隊を突破。枢軸艦隊に鮮やかな撤退劇を見せつけつつ各自の港に戻って行く。
 この後に行われた英軍主導の伊艦隊全滅作戦「Last regretIII」において最重要目標にされた〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉だったが、それすらも楽しむかのごとく見事に跳ね返し、それどころか52年1月には〈萌木《ラヴォラトリーレ》玉緒〉や〈桜羽》コラディオーソ》吉野〉といった駆逐艦を率いてエオニア諸島を艦砲射撃、地中海戦は終わったと思っていた枢軸軍を唖然とさせている。

女王様ではなく・・・

 枢軸側のあらゆる「攻略」を弾き返した〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉はそのままイタリア艦隊旗艦となった。何しろ金がない、艦もないという情けないというより悲惨な状態では生き残った僅かな艦船のうち最大の〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉が「編集長」として切りまわすしかない。 まずやる事は仕事。戦いが終わってもやる事は山ほどある。エオニア諸島砲撃で〈桜羽《コラディオーソ》吉野〉を失い、「実の妹が病死したように」落ちこんで鬱となっていたシオルオ中佐をフリゲイトの〈マリーノ〉が切り盛りする練習艦隊に叩き込んだ。落ち込んでいる場合ではないのだ。
 さすがにシオルオもこれに気付いた。自分はまだ幸せな方だと。そして彼は〈マリーノ〉を初めとする艦艇乗員の献身によってなんとか立ち直っていく。
 60年代後半に主砲を毎分30発という驚異的レベルにまで高めたOTOの15.2cm完全自動連装砲へと換装し、更にはベルリングウェル大統領の座乗艦として日本を訪問。東京湾にその衰えを知らない美しく堂々たる姿を見せたこともある。
 艦暦ちょうど40年で退役し、ラ・スペチアで記念艦となった〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉。国力の低さを独創性でカバーし、最大の効果を発揮させる。その具現化である彼女は大戦を縦横無尽に駆け巡った。
 記念艦となった彼女を見て誰となく言う。
 「彼女は畏怖される『女王様』ではない、慈しむべき『姉様』」だと。

要目

  • 基準排水量 21,920t
  • 常備排水量 25,990t 
  • 満載排水量 27,210t(搭載燃料によって差異あり)
  • 全長 221.3m
  • 全幅 29.2m
  • 喫水 7.5m
  • 主機 パーソンス・ギアード・タービン4基/4軸 
  • 主缶 アンサルド強制循環缶8基(多種燃料燃焼装置付き)蒸気温度350度 蒸気圧力30kg/cm
  • 出力 176,000馬力 
  • 速力 34ノット
  • 航続力 15ノットで10,000海里
  • 燃料搭載量 2,920t(全て重油のみの場合、搭載燃料によって重量に差異あり)
  • 兵装
    • 152/53OTO1945・53口径15.2cm3連装両用砲5基 
    • 76/60OTO1946・60口径7.6cm単装高角砲8基
    • 35/70B1942・70口径35mm連装機銃8門
  • 水偵4機 カタパルト2基
  • 装甲
    • 舷側250mm(10度傾斜・水線部、上甲板までは220mm)
    • 甲板130mm(80+50mm)
    • 砲塔230mm(前盾)/130mm(側面)/85mm(天蓋)/60mm(背面)
    • 司令塔 220mm
  • 乗員 750名

同型艦

  • 〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉 Lucretia Romani OTO(リヴォルノ) 1947年10月22日竣工 1987年記念艦となる
  • 〈麻生《ルチア・エドワルド》鈴音〉 Lucia Edowrdo CRDA(トリエステ) 1947年8月15日竣工 1951年7月31日着底
  • 〈ヴィアンカ・ヴィスコンティ〉 Bianca Visconti カステラマーレ工廠 1949年竣工 1951年7月30日沈没