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〈三好《ダンケルク》育〉

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〈三好《ダンケルク》育〉

カクテルソフト「univ〜恋・はじまるよっ〜」三好 育

ポケット戦艦が導火線


 〈三好《ダンケルク》育〉は公式には〈春原《ドイッチュラント》七瀬〉級に対して計画されたが、むしろそれは予算要求理由であり、この手の小型戦艦案は各国にもあった。そうでなければ30年代後半の中型巡洋戦艦ブームが説明できない。
 そもそも通商破壊や海外警備にあたる「装甲巡洋艦」はフランスが発祥なのだから。絶対不敗のマジノ線のおかけで予算が回ってこない仏海軍としては〈春原《ドイッチュラント》七瀬〉級をあえて過大評価することで予算をまんまとせしめたことになる。
 彼女の存在は非常に大きく、対抗策に苦慮したイタリアは新型戦艦が出来るまでのつなぎとして〈フランチェスコ・カラッチョロ〉級を大改装。ドイツも〈春原《ドイッチュラント》七瀬〉の4〜6番艦を諦め、〈木ノ下《シャルンホルスト》留美〉級に走るしかなくなった。
 更には日米、挙句にオランダやソ連までもが3万トンクラスの装甲巡洋艦を造りだす。正に一つの火が一挙に燃え広がるかのような状況を呈していた。
 さてそんな中での〈三好《ダンケルク》育〉はというと、排水量、主砲口径どちらにしても既存の仏戦艦よりも小さい。というかポケット戦艦を抜きにすれば世界のどの戦艦よりもコンパクト。言い方を代えれば「お子ちゃま」レベルの彼女の意義は何か。
 そう、このクラスは戦艦ではない(仏では「戦列艦」と分類した)、フランスが伝統としてきた装甲巡洋艦の新世代版なのだ。
 主砲は小さいが最大射程は41700m。かつ近距離では高初速によって38センチ砲並の貫通力を持つ。そして4連装砲塔と副砲と高角砲の統一(*注1)を図った結果排水量の実に42%にも達する装甲重量、ポケット戦艦には劣るとはいえそれでも長大な航続力。ヒットエンドランを狙う機動部隊(*注2)の中核の役割を持ち、同時に〈メイフェア《ジョッフル》〉級空母と〈ラ・ガリソニエール〉級軽巡洋艦、及び駆逐艦がセットとして計画された。
 31年、34年計画で1隻づつ、更に36年計画で〈氷室《リシュリュー》微〉級の補助として1隻が計画されて建造されている。


脱出だ脱出


 開戦時〈三好《ダンケルク》育〉と〈ストラスブール〉は第一戦隊を編成してポケット戦艦の捜索や護衛を担当、その後地中海に移って伊艦隊への抑えをなした。
 イタリアの参戦はまだ後と観られていたが、デンマークを席巻しノルウェーを攻めるドイツは次にはフランスに来るだろう。確かに陸軍は絶対不敗のマジノ線で食い止められるが海にマジノ線はない。ドイツ艦隊を抑えるべく〈三好《ダンケルク》育〉と〈ストラスブール〉は地中海を〈リヨン〉級に任せてボルドーに戻る。フランス期待の「ヒロイン」〈氷室《リシュリュー》微〉は英国ポーツマスに移動し、やがて大西洋に出てくるであろうドイツ艦隊に備えた。
 ところがドイツ軍はアっという間に低地諸国を制圧、マジノ線を迂回して電撃戦をかけて来たのだ。たちまちのうちに仏英軍は分断されダンケルクに追い詰められる。〈三好《ダンケルク》育〉はドイツ空軍の爆撃を縫って艦砲射撃を食らわせていた。
 6月17日、新首相のペタン元帥が休戦を放送。だからといって話は終った訳ではない。海軍はドイツ軍に艦艇を渡すわけにはいかない。サン・ナゼールで儀装中だった〈ルミラ《ジャン・バール》〉と〈アレイ〉は大慌てで脱出し、ドック上の〈佐伯《クレマンソー》玲奈〉は無理やり進水させた後駆逐艦の助けを借りてそれぞれカサブランカへ。他の港からも艦船が脱出していく。
 残るはブレストの第一戦隊と〈フランドル〉〈ブルゴーニュ〉、それと儀装中の〈メイフェア《ジョッフル》〉。もちろん脱出準備が進んでいた。時間は10時間。まずナルヴィクから戻ってきたばかりの兵士を乗せた輸送船が出港。戦艦部隊はせめてもの責任をと最後に出港する。ドイツ軍は防衛線を次々に突破してブレストに迫り上空にはドイツ機がまるで艦隊を値踏みするようにパラパラとやってきては雨漏りのように爆弾を落とし、艦によっては至近弾で浸水するものまで現れた。とりあえずバケツやタライ(!)で浸水を受け止めるように命じたが脱出できなければ意味がない。
 早くしないと・・・〈三好《ダンケルク》育〉に座乗するド・ラボルト提督がのたのた動く輸送船をイライラ見ていると、その輸送船がいきなり爆発した。しかも一番水路の狭いとこで着底。それでも横はすりぬけられそうだ。〈三好《ダンケルク》育〉はしずしずと進んで輸送船の横を抜けようと・・・出来なかった。なんと輸送船と桟橋との間でつまってしまったのだ。とにかく脱出しないと情けない上に終ってしまう。艦長は全速後進を命じた。しかしなかなか抜けない。
「いい眺めだな」
そのうちドイツ機がやってきて詰まった〈三好《ダンケルク》育〉を呑気に眺めている。
「こうなったら最大出力で後進しろ!」
 半分恥さらし気味になっているド・ラボルトが命ずる。すると猛烈な衝撃が艦に走った。後進に出力をかけすぎて抜けられたのはいいが勢いが止まらず、そのまま艦尾を埠頭にぶつけてしまったのだ。これでは情けないを飛び越えてどうしようもない。
「・・・終ったな」
 陸地側を見れば騒動に気付いたドイツ軍の戦車があたふたと転がってきている。ド・ラボルトに出来るのはダルラン提督の命令「どんな場合でも艦隊をドイツに渡さない」を信ずることだけだった。


ヴィシー・フランスへようこそ


 かくて6月18日、〈三好《ダンケルク》育〉以下の大西洋艦隊主力はドイツ軍に捕獲された。これからどうなる?ドイツ野郎の好きに弄ばれ、奴隷にされるのか?
 これからどうするかを決める人・・ペタン元帥は老獪さを発揮してフランス艦隊をドイツに引き渡さないことを条件に休戦条約を調印。これによりフランス艦隊はフランス人の管理要員を乗せてフランス側にとどまることになった。
 この条件は一見安定しているかに見えるが、「この状態が永続する保証」はどこにもない。そして海相ダルラン(のち首相)は「自沈してもドイツに接収されることはない」と英側に言明し、またヒトラーも「フランスの軍艦をドイツが使用することはない」と宣言している。しかし英国は騎士道的約束など信用せず、ましてやヒトラーの約束なぞ信用にも値しない。
 6月27日、英国はアルジェリアのメル・セル・ゲビルに停泊する地中海艦隊司令のジャンスール提督に対し選択肢(*注3)を突きつけた後、〈柳也《フッド》〉を始めとするH部隊の砲撃により〈デュケーヌ〉は爆沈、〈リール〉〈トゥールビル〉は大破着底。
 激怒したフランスは英国と断交。さらに英国はポーツマスに滞在していた〈氷室《リシュリュー》微〉と〈斉藤《ノルマンディー》倫子〉を接収、自由フランスに「ヒロイン」として譲渡した。
 WW1の英雄ペタン元帥をトップに持つヴィシー政権にとってみれば、代表が一介の戦車師団長でしかないド・ゴール中将という自由フランスは「英国の傀儡政権」(*注4)であり、存在そのものが許しがたい。これが長期に渡る「二つのフランス」の始まりとなった。
 ドイツもこの仲たがいを見て艦船の再武装を認可。ドイツ海軍は元々人不足気味なところにもってきて合衆国から戦艦を購入。おかげでフランス艦隊を動かせる兵員はいない。つまるところフランス艦隊を戦力として活用するにはヴィシー側の協力無しでは1mも動かせない状態なのだ。敗戦国に対するにしてはやや寛大過ぎるという声もあったがヒトラーは現実的戦力増加を選んだ。国民に対してはボルドー、ブルターニュ(43年返還)、イル・ド・フランス(54年返還)と、エルザス・ロートリンゲンをドイツに編入することでWW1の借りを返したということで説明された。特にWW1後に取られたエルザス・ロートリンゲンと華の都パリを領有することはドイツ人の優越感を満たすに充分だ。
 ヴィシー側も打倒英国、メル・セル・ケビルの復仇を旗印に対英攻撃に参加していく。そうすることで国内の不満をそらしていかねばならないのだ


海峡戦闘


 1942年夏、MB155とD520、LeO451からなる第21戦闘航空群がドイツ軍に協力して英本土攻撃に参加し、潜水艦部隊も大西洋や地中海で活動を行っていた。戦果はそれなりだったが、その存在自体が英国が前年にアークハート外相が国王に申し上げた言葉
「陛下、もう欧州には我々の仲間はいなくなったのでございます」
を証明していた。気付いた時にはもはや大英帝国の同盟国は大日本帝国しか残っていなかった。その日本も地球の反対側で合衆国を相手に苦戦を続けている。
 8月、ヒトラーは一人のフランス海軍提督をレーダー提督に対面させた。その名はマルセル・ブルーノ・ジャンスール。メル・セル・ケビル事件の後辞職願いをダルランに出したのだが彼は却下した。代わりに与えたのは大西洋艦隊司令官の職。行ってこい。チャンスはまだある。
 9月7日、フランス大西洋艦隊はブレストに集結、ジャンスールは〈三好《ダンケルク》育〉に将旗を掲げた。後に続くのは〈ストラスブール〉〈フランドル〉〈ブルゴーニュ〉、空母の〈菜乃花《ベアルン》恵理〉〈メイフェア《ジョッフル》〉からはF4F戦闘機が上空直援に飛び上がり、〈アルジェリー〉を始めとする巡洋艦部隊、駆逐艦部隊もついてくる。
 まずはピエール・ログロアン少尉を始めとするF4F部隊が独機とともに英軍機を叩き落とす。それを見たF5Fを操るマルセイユは苦笑した。これでは独仏対英ではなく米英機対決じゃないか。しかしもう一つの同盟国のイタリアもここにいればマルセイユは寝こんでいただだろう。かの国の海軍航空隊の装備機はF4Uなのだ。
 独仏伊・・・戦前は「航空先進国」と勝手に豪語していた・・・が枕を並べて米機採用という惨憺たる(?)事態をどうにかしないとこれからの海軍航空の発展はない。それに気付いた3国はそれぞれの後継機を生み出していく。
 それはともかくジャンスール艦隊は0930分、ノース海峡を南下する英艦隊の接近を航空隊から受け取った。制空権はこちら側にあるが戦闘機で戦艦は沈められない。28ノットに増速しつつ陣形を組替えた。左右に並べて〈三好《ダンケルク》育〉、〈ストラスブール〉を置き、右側に他の戦艦と巡洋艦以下を配置した。なんと単横陣。これでランズ・エンド岬を南下してきた英艦隊を迎え撃つ。
 まずは単縦陣を取る英艦隊(ラムゼイ)は〈結城《ヴァリアント》貴之〉と〈結城《ウォースパイト》紗夜〉が15インチ砲で先手を取る。相手は単横陣。戦艦もお子様サイズなら戦術もお子様レベルか。しかし10分後に33センチの高初速弾をドカドカ食らった4戦艦は思いっきり叩きのめされていた。4連装砲塔が前しかない〈三好《ダンケルク》育〉級にとって別に相手に横っ面向ける必要などない。素直に真正面から撃てばよい。サイズはお子様、戦術は純粋で素直。だがロイアル・ネイビーも負けてはいない。整列しての撃ち合いがダメならネルソン仕込みの乱戦技がある、ただし艦隊速力がジャンスール艦隊の6割しかないため、なんとなしにゆったりだが独仏航空機の妨害を振りきって同航戦に持ちこむ。この時点で仏側にはこれという損害はない。どう並ぼうが結果は同じ。しかしここからジュットランド沖のドイツ巡洋戦艦から学んだのかなんだか知らないが英艦隊は恐ろしいまだのダメージ・コントロールを発揮する。
 何せ火災消火はまだしも、〈結城《ウォースパイト》紗夜〉などは砲撃戦途中での被弾修理という離れ業(というか人間離れ)をやってのけて仏側に痛打を与える。〈フランドル〉が巨大な煙突が叩き折られ一挙に速度が落ち、〈ストラスブール〉も直撃を受けている。
「何だあの戦艦は!不死身か!」
 ジャンスールはうめいた、と同時に通信員に「留学生を呼ぶように」と伝えた。まさか助っ人に頼ることになるとは。だが切り札を持っているのは英独だけではなく、また切り札は使わなければ意味がない。そして〈前田《ル・テリブル》健一〉に座乗する駆逐隊司令に「留学生」を迎えに行くように命じて駆逐艦2隻を分離させた。帰って来るまでに勝負がついていればいいが。それにしても・・・20発以上食らっても戦闘能力が落ちないとは、ジャンスールでなくても頭を抱えるだろう。挙句に機雷源の方向に向けて全速(といっても19ノット)で突っ込んでいく。
「あのなぁ・・・」
 なんとなくコケにされているような気がしないでもない、だが機雷源の向こう側に行かれるのはまずい。独仏空母部隊の方は〈椎名《MTB》繭〉隊やら英攻撃隊の群れを追い払うのに手一杯。巡洋艦の「コピー」のように13.5センチ砲で水平射撃をやっている〈メイフェア《ジョッフル》〉やら15.5センチ砲に魚雷発射管まで持っている〈ベアルン〉はまだしも、〈愛沢《ライン》ともみ〉達の方はそんなバイトのような芸当はできない。
 結局仏艦隊も付き合うしかなかった。向こうは隊列を逆にして砲撃を始めようとしている。もはや漫才レベルの敵艦隊(しかも異様に戦闘力と回復力がある)に付き合わされるジャンスール以下の仏大西洋艦隊の面々もご苦労なことである。助っ人の方はもう少しかかる。戦闘力は残っているが速度の落ちた〈ストラスブール〉には、持ちそうにない〈フランドル〉の乗員救出と帰還を命じ、自らは〈三好《ダンケルク》育〉と〈ブルゴーニュ〉を率いて戦闘を継続、ようやく追いついた巡洋艦以下には雷撃を命じた。
「年寄りは早く沈みなさい!」
 〈三好《ダンケルク》育〉が〈結城《ヴァリアント》貴之〉に引導を渡すべく射撃を再開した。しかし相手もさるもの、大火災に包まれながらまだ主砲を撃ってくる。
「お嬢ちゃん、年寄りを馬鹿にしてはいけないよ」
 艦暦にして20年の開きをもろともせずに〈結城《ヴァリアント》貴之〉が〈三好《ダンケルク》育〉に直撃弾を艦首に食らわせた。集中防御区画以外にぶち当たった15インチ砲弾は艦首区画を破壊して18ノットに落とした、だがそこまでが限界だった。
 さしもの「古武士」〈結城《ヴァリアント》貴之〉も40発以上の命中弾から来る物理法則からは逃れ得ず、尊厳を残しながら沈んでいった。正にジョンブル魂の具現化のように。
 ジャンスールは無傷の巡洋艦と駆逐艦に「助っ人」への合流を命じて帰還の途についた。しかしまだ彼は常識外の敵と戦う運命が待っている。
 残された〈結城《ウォースパイト》紗夜〉、〈ベンボウ〉、〈エンペラー・オブ・インディア〉は出撃とは逆にランズエンド岬を戻っていく。そしてフランス側にはまだ切り札が残っていた、〈前田《ル・テリブル》健一〉〈高田《ランドンタブル》正義〉で編成される第10駆逐隊が呼んできた(護衛してきた)〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉が「助っ人」として駆け付けたのだ。先の海戦であまり出番のなかった護衛の巡洋艦部隊が阻止のために突撃していく。
「来いヤンキー!打ち沈めてやる!」
「かかってきなさい!」
 〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉の36センチ4連装砲が回転し、いきなり巡洋艦部隊をアウトレンジする。さらには3戦艦にも至近弾が降り注ぎただでさえ遅い〈ベンボウ〉と〈エンペラー・オブ・インディア〉が更に遅くなる。〈結城《ウォースパイト》紗夜〉も撃ち返す。しかし化け物じみたダメコン技術を発揮した反動で兵員の疲労は頂点に達し、命中弾どころか至近弾も出せない。しかしここで最後の助っ人が駆け付けた。なんと日本機。日本の遣英艦隊の中で唯一残存していた〈千鶴()〉が攻撃隊を出してきたのだ。数は少ないが「欧州に日本機がいる」という事態が重大なのだ。それに追撃側には航空兵力はない。ここは下がるしかない。こうして1942年9月8日は終った。
 結局仏側は〈フランドル〉を失い〈ブルゴーニュ〉が大破、〈三好《ダンケルク》育〉〈ストラスブール〉が中破、他にも損傷は多数。これに対して〈結城《ヴァリアント》貴之〉を沈めた上〈ベンボウ〉〈エンペラー・オブ・インディア〉を大破したのだからなんとか勝利ではある。しかし・・・。


翼人から我々は解放されなければならない


 9月10日、カージフから小艦隊がひっそりと出港した。編成は〈柳也《フッド》〉と〈裏葉《ユニコーン》〉〈神奈《イリジスティブル》〉。ある極秘目的・・・「EX計画」に基づく出港なのだがそんなことは敵側には関係ない。巡洋戦艦1隻と空母2隻がカナダ方面に脱出しているということが懸案事項なのだから。
 この時、ランズ・エンド岬沖海戦後に一旦ブレストに戻り、再び上陸支援のために出撃していたフランス大西洋艦隊のみが追撃可能な距離にいた。さてどうする?相手は砲撃戦も航空戦もそこそここなせる戦力であり、巡洋艦程度では呆気なく弾き返される。
 ジャンスールの今の手持ちは応急修理を追えたばかりの〈ストラスブール〉〈アルジェリー〉〈コルベール〉〈フォッシュ〉〈ジョルジュ・レイグ〉〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉、及び駆逐艦6隻。これに〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉がつく。これならなんとかなるだろう。ただし航空攻撃が来ないという保証があればの話だが。
 9月12日2200分、一旦スウォンジーで空襲をやり過ごした英艦隊は一路カナダへの道を進んだ。途中ある計画に基づいて脱出した〈八百比丘尼《フューリアス》〉らと合同してカナダに向かうのだ。
 2200分、ジャンスール艦隊は別の小艦隊を見つけ、これに〈ジョルジュ・レイグ〉と駆逐隊を向かわせる。〈八百比丘尼《フューリアス》〉の部隊だ。
 0010分、〈ストラスブール〉のサディ・レーダーが〈柳也《フッド》〉達を捕らえた。対して〈柳也《フッド》〉側もその前に仏艦隊に気付いており、気配を消してはいたが見つかっては仕方ない。0020分、〈柳也《フッド》〉が15インチ砲を発射。8日の海戦では何ら成すことなしに味方艦隊の苦戦を見ているだけしか出来なかった〈柳也《フッド》〉である。射撃精度、練度は抜群で2斉射目から仏艦隊に至近弾をお見舞いしていく。3斉射目は〈ストラスブール〉に直撃、格納庫と後部副砲をそっくりふっ飛ばす。
 〈結城《ウォースパイト》紗夜〉達との戦いで、英艦隊の技量の高さと闘志に圧倒された仏艦隊はどうしても引き気味になりがちでなかなか攻撃態勢を整えられない。それでも〈アルジェリー〉〈コルベール〉〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉が突進。20センチ砲を叩きこむが相手は名だたる巡洋戦艦、この程度ではかすり傷にもならない。
 〈柳也《フッド》〉は雑兵を払いのけるように主砲を撃ち、〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉を叩きのめした。もう一撃で沈むだろう。だが彼等の目的は敵艦隊殲滅ではない。あくまでカナダに逃れることだ。
 そう逡巡した瞬間、〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉は最後の武器である魚雷を発射、これが見事に〈柳也《フッド》〉に命中、続けて一番後ろにいた〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉の36センチ砲弾が3番砲塔直前の甲板を貫通、誘爆はしなかったものの3番砲塔は使用不能になってしまった。
 手傷を負ったがその損害をもろともせずに〈柳也《フッド》〉は撃ち返す。それに対し仏艦隊は8日の英艦隊の粘り強さの記憶があって優勢を生かし切れない、やむなくジャンスールは一旦撤退を指令、航行不能の〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉を処分、〈八百比丘尼《フューリアス》〉攻撃に向かった部隊と合流して態勢を立てなおすこととした。相手の行動も兵力も推定しきれないのだから。
 9月14日0005、〈神奈《イリジスティブル》〉達は、中破したもののなんとか生き抜いた〈八百比丘尼《フューリアス》〉と合流、再びカナダへの航路をとった。
 ほぼ同一時、その艦隊を追撃するジャンスールは驚くべき命令を受けた。何の命令かは未だもって不明(本人が戦死したため)だが、彼は〈神奈《イリジスティブル》〉達を撃滅することを固く決めた。彼女達のようなものを生かすことは出来ない。
 なぜなら・・・。


最期の輝き


 ジャンスールは〈ストラスブール〉〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉を真中に、巡洋艦部隊と駆逐艦で〈神奈《イリジスティブル》備命〉達を包囲する作戦をとった、これまでの戦いで英艦隊は攻撃隊を出していない、ならば包囲殲滅が出来ると踏んだのだ。翼を持つもの=空母は夜にはその輝きを失う。この夜に叩けなければ奴等は勢力圏という「山」を越えてカナダに逃れるだろう、それだけは避けたい。
 0100分、西側から回り込んだ〈アルジェリー〉〈コルベール〉と駆逐艦は〈神奈《イリジスティブル》〉、〈裏葉《ユニコーン》〉に護られた(空母が空母を護るのも変だが)〈八百比丘尼《フューリアス》〉に接近した。護衛艦を追い払えば巡洋艦でも空母に勝てる。だが
「翼か!」
〈八百比丘尼《フューリアス》〉が残存の搭載機を夜間発艦させたのだ。
 低速でも安定性が優れたアルバコア雷撃機が僅か5000メートル先の〈コルベール〉を雷撃、3発の魚雷を食らった同艦は10分で沈没、続けて〈アルジェリー〉にも魚雷1本が命中して大破。
 しかし駆逐艦が数に任せて放った魚雷が〈八百比丘尼《フューリアス》〉に2本命中、旧式かつ損傷の酷い彼女にはこのダメージは耐えられず、〈神奈《イリジスティブル》〉〈裏葉《ユニコーン》〉に看取られながら沈んでいった。すぐに〈柳也《フッド》〉が駆け付けて他の艦を追い払う。泣いている暇はない、我々は脱出せねばならないのだから。
 しかし0330分、〈ストラスブール〉〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉が3隻に追いついた。〈柳也《フッド》〉が応戦するが数には勝てない。至近弾が次々に降り注ぎ巡洋艦と駆逐艦は包囲突撃をかける。これが最期だ。ジャンスールは勝ちを確信した。>
 だが直後、〈神奈《イリジスティブル》備命〉が輝やき(発艦用サーチライト?)、搭載していた新鋭戦闘機〈Air〉を全て発艦、自らも盾となるべく突っ込んできたのだ。その結果は・・・、
〈柳也《フッド》〉と〈裏葉《ユニコーン》〉はそのままカナダへの脱出に成功、〈ティナ《ラファイエット》ハミルトン〉乗員は「翼を持った女神を見た」という証言を残した。1人2人ならともかく、2000人近い乗員のほとんどが見たというのは現代においても謎である。
 ジャンスール提督は〈ストラスブール〉もろともかき消すように消滅(沈没)、他に〈フオッシュ〉〈ジャン・ド・ヴィエンヌ〉と駆逐艦3隻も沈没、残存部隊は撤退。
 この両海戦で仏海軍は合わせて戦艦2隻、巡洋艦4隻、駆逐艦5隻を失い、ドイツに対し占領地域の建造中艦の完成を確約させることとなる。


#注1:ただし砲塔装甲が重いため旋回速度が遅く、対空射撃の威力は低かったらしい。
#注2:ここでいう「機動部隊」とは後に日本などが編成した空母部隊のことではない。
文字通りの機動力を持った小艦隊の意味。
#注3:英国側につく・英の港に移動する・西インド諸島に移動する・自沈する・戦闘するという選択肢。
#注4:もちろん自由フランス側はヴィシー政府を「ナチスの傀儡政権」と蔑称していた。

要目

  • 基準排水量 26500トン
  • 常備排水量 30750トン
  • 全長 215.1メートル
  • 全幅 31.1メートル
  • 喫水 9.6メートル
  • 主機 パーソンス・タービン4基/4軸
  • 主缶 スラ・インドレット缶6基
  • 出力 130000馬力
  • 速力 31ノット
  • 航続力 17ノットで16400海里
  • 兵装
    • 52口径33センチ4連装砲2基
    • 45口径13センチ4連装砲3基
    • 45口径13センチ連装2基
    • 37ミリ機銃連装4基
    • 13ミリ機銃4連装8基
    • カタパルト1基
    • 水偵4機

同級艦

  • 〈三好《ダンケルク》育〉 1935年竣工 1985年除籍
  • 〈ストラスブール〉 1938年竣工 1942年北大西洋にて消滅
  • 〈アレイ〉 1940年竣工 1950年南大西洋にて沈没