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〈桜井《ティフォネ》知絵〉

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アレニアG280〈桜井《ティフォネ》知絵〉(Alenia G280 Tifone)

(元ネタ桜井知絵/結い橋/ういんどみる)

 イタリアの主力戦闘機。制空戦闘から対地攻撃までそつなくこなすその姿は「看板娘」にふさわしい。
 また、A型は特殊な双発機として有名で、その開発過程は「旅」とも捉えられる。

■旅立ち

 70年代、ウラルや中東といった紛争地域での経験を元にした「新世代機」というものが各国空軍を賑わせていた。各国ともに開発に力をいれ、航空機メーカー各社も「我こそは」といわんばかりに設計案を出しては採用を狙って動き回っていた。
 そんな中、ある時フィアット社航空部門と東部連合マーチン社の開発者が合同会議をしていた。この両社は新世代機の設計に乗り遅れたためにフリーに近い状況。ならばこれからの身のふり方を考えようと軽い気持ちで会議を開いたのだ。
 そんな中、フィアット社側からこんな提案がなされた。
「いっそのこと、両社で共同開発しません?」
周囲を見ればみんな新型機、新型機と魔法にでもかかったかのように動き回っている。グラマンとヴォート、両社の影に隠れて下手すれば吸収合併・「浄化」されかねないマーチン。かつての栄光は既に遠く不採算部門となっているフィアット航空部門。両社がGETTO内でも見事に浮いていることは確かだ。
「そうすれば、ちょうどいいですよ」
 マーチン社側は半分呆れた。イタリア人ってのはどうしてこう適当なんだ、だがこんな肩肘のない会話からこそうまく話が展開する。もし相手が堅苦しいドイツ人やプライドが高いフランス人ならこうはいかなかっただろう。
 共同開発は意外な程順調に進み、やがて一号機が完成した。名前は〈桜井《ティフォネ》知絵〉。この愛称もフィアット社の提案。由来や脈略とかはあるのか。マーチン社開発員は問い正した。
「カッコいいじゃないですか」
・・・どこまでもイタリア人だった。
 しかし、一号機が地上テストを済ませて、いざ飛行テストを開始しようとするとおかしな状況が生じていた。エンジンの出力不足で離陸できないのだ。計測するとカタログ・データの三分の二の出力も出ず、特に右側エンジンに至っては半分も出ていない。色々と調べるとエンジン自体の問題とそれを支えるフレームがエンジン震動と共鳴する問題が見つかった。エンジンを交換することも考えられたがそれに付随する震動問題を解決しなければ結果は同じだ。そのためには〈桜井《ティフォネ》知絵〉の機体フレームそのものを大幅に変更、それに合わせてほとんど1から機体を造り直す必要がある。時間は待ってくれない。再度設計をやり直している間に時代は変わるし、何よりそんな予算は無い。
 そしてマーチン社では〈桜井《ティフォネ》知絵〉のために、専用の補助ブースターの作成に入った。これがあれば少なくとも「飛べない」という惨状だけは避けられる。そして少なくとも他の機体並の性能は出せる。
 緊急時には大型ミサイルとなり、また補助の電子装備も内蔵。機体の一部を構成しても空力バランスがとれるよう巧妙に設計された補助ブースター、別名「杖」が完成し、装備した試作機の初飛行に成功する。だがもちろんこれはその場しのぎでしか過ぎない。根本的に直すためにはもっと別の対策が必要。
 「杖」の完成を見届けるようにマーチン社はコンストラクターの座から降り、同時に水面下で進んでいたアレニア社(フィアット社航空部門を再編)とマーチン社の合併話も先送りされた。
 この子=〈桜井《ティフォネ》知絵〉が「杖」無しで飛べるようになるまで、アレニア社がこの機体の面倒を見る。代わりにマーチン社は〈桜井《ティフォネ》知絵〉のコンストラクターである事を伏せる。
 そして、「杖」無しで飛ぶため、マーチン社では新型機用と称してフレームとエンジンの開発が続けられた。〈桜井《ティフォネ》知絵〉の機体構造を造り替えることなく飛躍的に性能をアップできるエンジン、そしてそれをはめ込む軽量ボロン&セラミック製のフレーム。長い旅路とも言えるその開発。だが〈桜井《ティフォネ》知絵〉を黙って引き取り、「看板娘」としてイタリア空軍に提案、そしてなんとか戦力化してくれた(補助ブースター無しで離陸出来ない機体など、欠陥機などというレベルではない)アレニア社のこともある。自ら選んだ長い旅路からは逃げることは出来なかったのだ。

 そのいわくつきの機体ともいえる〈桜井《ティフォネ》知絵〉だが、その機体形状は欧州機のそれを思わせる秀麗なものとなった。
 すなわち主翼は中翼配置の御馴染み無尾翼デルタだが、デルタ翼の先端の角度を変え、先端部を切り欠いたダブルデルタに近い形状。中翼配置なのは翼下への兵装配置を楽にし、サイズの大きな兵器でも搭載出来るようにしたためであり、ダブルデルタにしたのは機動性の確保のため。翼を小さくすれば翼面積が減って機動性能が鈍り、かといって胴体を長くすれば重たくなってしまう。〈桜井《ティフォネ》知絵〉の独特な主翼平面図はこうして誕生した。

 操縦系統は〈芹沢《リンチェ》かぐら〉と同じ四重デジタルのフライ・バイ・ワイヤ、そしてエンジンにはデジタル制御を使用していることからも判るとおり、運動性と機動性を重視。コクピット表示は各国同様のデジタルCRT。大型のヘッドアップ・ディスプレイは夜間飛行時には暗視ゴーグルを使用して、低空飛行時におけるコクピット反射の低減に努めている。
 機首のレーダーは要求にあった全天候戦闘能力をこなし、かつ要撃能力を備え、やってくる「お客」に対して「看板娘」のように愛想を振りまきつつもその実しっかり「お代」(戦果)を稼げるよう配慮。そのためセレニア社のマルチモードレーダーであるスピカMRLを搭載。探知距離を90kmと短くする代わりに同時追尾能力を高めたこのレーダーによって見事に要求をクリアー、これをいつものブレダ/マウザー機関砲とアスピーデ、ツヴェルクを基本とした空対空装備、あるいは対地兵器、特に「さくらんぼ」と通称される小型爆弾からなる多彩なメニュー(武装)が「お客」を迎えてくれる。
 もちろん当然のことながら海上戦闘も考慮した航法システムを搭載し、海上航法用に小型アンテナを装備、このため機首左舷に髪飾りのようにアンテナが僅かに飛び出している。地中海といえども海上戦闘をすることには変らないのだから、これらの装備はイタリア機の必然ともいえる。
 エンジンは・・・というか、〈桜井《ティフォネ》知絵〉のほとんどの問題はこれに起因する。当初は両側とも「イタリア独自開発」のピアジオTF320だったが、慣れない独自開発(イタリア機のエンジンは第二次大戦以後、ほとんどがライセンスかその改良型)のために故障続出。、まともに推力が出ない上に前述の通り異常震動を起こしてしまう。そのためドイツ、BMW社のライセンス生産品であるフィアットRT85F55を装備してみたがこれをもってしても震動は直らず(むしろTF320の方が震動が少なかった)、結局震動の負担がかかる右側にTF320、左側にRT85を搭載するという異常な状態を生んでしまった。 この右側エンジンについては「自国産業の保護」、つまりなんとしても自分の「足」で歩きたいとも言えるからという説から、極端なのになると「制空権を得るための主力戦闘機がこの状態では戦争にならない」のような中立の言い訳をするために〈桜井《ティフォネ》知絵〉を変則的な状態のまま開発したという無茶な理由まで飛び出す有様。実際のところは震動が直らないための苦肉の策なのだが。

 そして〈桜井《ティフォネ》知絵〉の一大特徴ともいえる「杖」。この「杖」は前述のとおりマーチン社で開発され、右側エンジンフレーム外側に装着。大きさは全長7m、重さ1.8tにも及ぶ。この補助ブースターは前述の通り小型のターボファンエンジンと制御装置を組み込んだ文字通り〈桜井《ティフォネ》知絵〉の体の一部のような存在で、今までの使い捨てロケットブースターとは一線を画す装備といえる。
 ちなみに緊急時にはブースターをそのまま大型ミサイル(着陸時には補助推力は必要ない)として発射することも可能。この時投射された「杖」は超大型空対空ミサイルへと変貌、性能は抜群で射程と威力、そして精度は凶悪そのもので正に「殺人的」とも言える存在である。
 なお、この「杖」、エンジン異常や信管異常などの緊急時にはたとえ着陸時でも強制分離させて母機の損害を防ぐ安全装置が搭載されているが、安全装置や信管が鋭敏過ぎるきらいがあり、格納庫で整備していた〈桜井《ティフォネ》知絵〉が上空から「覗かれた」瞬間に「杖」が自動発射。正確無比な軌道を描いて偵察機の風防正面を直撃、あわや撃墜という事故を幾度か(偵察機の国籍問わず)引き起こしている。

■看板娘

 〈桜井《ティフォネ》知絵〉はブースターを装備したままという変則的な状況で量産が開始された。もちろん右側エンジン部が「治る」という条件をつけてはいたが。とりあえずはこの状況でも戦力化をしなければならない。さし当たっての問題としては補助ブースターを搭載しているために航続力は短く、戦闘行動半径は400kmほどしかないこと。この戦闘航続距離の短さをカバーするべく〈桜井《ティフォネ》知絵〉には電子機器ポッドが「杖」とのバランスを取るかのように機体左舷側に装備された。イタリア各基地に分散配備された〈桜井《ティフォネ》知絵〉はレーダー基地や早期管制機が敵機を発見次第、一番近い基地に待機している同機が駆け上がって即座に迎撃するというシステムが構築された。もちろん分散配備なので数が揃うまでは優勢な敵機との戦いを強いられることはありえる。そのためこの電子機器ポッドには電波妨害を始めとする強力な通信機器と本格的な戦術戦闘システムが収められ、右に左にと敵をさばくことが出来る。
 ただこのポッド、通信設備が強力なのはいいがその便利さに惹かれて携帯電話代わりにやたらに通信をしまくるパイロットが続出、気づいてみれば通信料と電波使用量が悩みの種になるわ、通信禁止にしようとすると「あれを取り上げられたら死ぬしかない!」とパイロットが文句を言いまくるわと空軍を悩ませることとなってしまった。
 とはいえ、〈桜井《ティフォネ》知絵〉はこのような変則的な機体でありながら実用性は上々。特にグレーと白を基調とした塗装パターンは「メイド服」と呼ばれて人気を博し、制空から戦術攻撃まで「杖」の存在が気にならないほどの実力を発揮。特に低空爆撃による地上部隊の「料理」は正にプロ級。同じように攻撃してもなぜか「殺人料理」と呼ばれた〈朝倉《ファルケ》音夢〉とは良い対象を示している。
 とはいえさすがに「杖」無しでは離陸すら出来ない機体を「看板娘」として配備するのは空軍当局も気が引けたらしく、スペインで提案されていたNH720<タイガーシャーク>のイタリア仕様版であるノースロップ・ホルテンNH721〈高月《ティグレ》美依〉をサポートのような立場として配備。〈桜井《ティフォネ》知絵〉の周囲を同塗装パターンでちょこまか飛び回る〈高月《ティグレ》美依〉という光景がしばしば名物となっている。

■決断

 前述した「旅路」からようやく戻ってきたマーチン社の技術担当は、ある提案をアレニア社に持ち込んだ。その提案とはエンジンフレームを同じ形状だが新素材を多用した軽量のものとそっくり交換、同時にエンジンを左右ともギャレット社開発のF220へと換装するという「大手術」を敢行することである。
 これが成功すれば一挙に問題は解決するどころか超音速巡航能力を持ち、ステルス性能こそ劣るがDo631A〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉に匹敵・・・いや、それすら超えるメイド(戦術戦闘機)になることが出来るだろう。何せこのF120エンジン。小型だが最大推力は15トン近くになる大出力と超音速巡航を軽々こなせる能力を備えた素晴らしい性能。しかしそれを搭載するためには上記のようにエンジンフレーム一切を東部連合製に交換しなければならない。つまり自国製エンジンを捨てること。今までアレニア社や現場整備者達が自力で、苦労して、開発し、一部としてきたものを失うこと。マーチン社技術担当から紹介されたギャレット社の開発者は「今の我々なら、可能です」と言い切った。F220ターボファン。研究に研究を重ねて開発した超音速巡航可能な高性能エンジン。P&W社に対して圧倒的不利で、採用されたエンジンといえば民間機を除けば台湾のAIDC〈桜瀬《IDF経国》由美子〉くらいしかないギャレット社。当たり前だがギャレット社としてはこれがコケる訳にはいかない。もちろんマーチン社としてもF35〈香坂《ホーリーキャット》チカ/ちより〉計画から離れた以上、この「大手術」を成功させることは義務感とともに航空再編時代への適応を図ろうという意味合いがあった。
 確かにこれを埋め込めば「杖」などは必要とせずにアルプスだろうが2万メートル近くの上空だろうが昇っていける。だがそれは自分の「足」ではなく、全く別の「足」を使って。すでに「右足」ともいえるP320エンジン自体、震動と故障続出でほとんど使い物にならないことも多く、なんでもない練習飛行で停止、一緒に飛んでいた〈高月《アバンティ》一海〉に付き添われ、慌てて格納庫に戻される事態では「治る」かもという希望的観測が空言にしか聞こえない。しかし今まで苦労してきた「足」を捨ててもいいのか、当局の悩みは深かった。「大手術」をすれば自国開発の灯を消すことになってしまう。それでもいいのか?
 いつも一緒にいた〈高月《アバンティ》一海〉(*注)からは「お前がいなきゃ意味ないんだよ!お前と一緒に飛びたいんだよ!」という通信が入っていた。そう、「看板娘」たる〈桜井《ティフォネ》知絵〉がいなければ誰が空を仕切る。そしてこの通信が全てを決めた。
 何もかもすっきりさせよう。自分の力で歩きたいという夢。失うことへのこだわり。それが決心だった。全てをすっきりさせる。「大手術」によって。
 そして換装は終わった。もちろん成功。それを聞いた〈高月《アバンティ》一海〉が駆け込むように飛んできた。
「行くぞ!」
 〈桜井《ティフォネ》知絵〉の今まで弱々しかったエンジンが生まれ変わったように大出力を叩き出し、〈高月《アバンティ》一海〉を追って一気に高空に駆け上がる。そのまま編隊を組んで自力でアルプス、そして一万メートルの高度へと駆け上がる。たとえエンジンは東部連合製でも積んでいるのは〈桜井《ティフォネ》知絵〉。間違いなく〈桜井《ティフォネ》知絵〉は自分の力で駆け上がったのだ。もう「杖」はいらない。自分の力で、自分の「足」で一歩を踏み出せたのだから(換装後はB型と名乗る)
 〈桜井《ティフォネB》知絵〉、その性能は凄まじく、模擬空戦でドイツ自慢の〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉を軽々とあしらうほど、さすがにインスタントで「メイド」になったものと当初から「メイド」的要素で活動してきたものとの差は違う。何しろ推力重量比は2を超えた上にベクタードノズルまで装備しているのだからその運動性は素晴らしく、しかも「ご主人様」の命令があればどういう戦闘行動(プレイ)だってやってくれる万能ぶり。

■これからも・・・

 アレニア・マーチン社合併式典。白塗装に身を包んだ〈桜井《ティフォネB》知絵〉がその上を祝福を込めて飛行している。自分の脚で、自分の力で、自分で踏み出したその空に祝福の軌跡を描きながら飛び続ける。これからも変らない空を。「杖」はなくなったが代わりにそれを転用した対地ミサイルを抱えて。
 イタリア自身が大戦には参加していないので〈桜井《ティフォネB》知絵〉の真の実力は評価しきれないが、間違いなく同機はこれからも主力戦闘機であり続けるだろう。一歩を踏み出す勇気があるならばどんなものでも乗り越えられるのだから。


 

#注:特異な形態のビジネス機ピアジオP180アバンティに電子機器を搭載し、高速偵察管制機としたもの。

■データ

全幅 9.92m
 全長 14.75m
 全高 4.60m
自重 6750kg
 最大重量 15100kg(補助ブースター含む、B型は14089kg)
発動機 フィアットRT85F55(推力5550kg A/B8510kg)(左側)
    ピアジオTF320(推力5520kg A/B8402kg)(右側、実質推力はこの半分以下)
ギャレットTEE31-A(3100kg)(補助ブースター/AAM兼任)
ギャレットF220-7I-155(推力10330kg, A/B15500kg)×2基(B型)
最大速度 M=1.8(B型はM=2.4)
最大航続距離 1900km(B型は3500km)
武装 27mm・ブレダA27-6機関砲2門
各種爆弾4500kg ハードポイント6+補助ブースター(B型は7)
乗員 1名

■ピアジオP180E〈高月《アバンティ》一海〉(Piaggio P180E Avante)

全幅 14.33m
 全長 15.41m
 全高 3.94m
自重 3402kg
 最大重量 6880kg
発動機 P&W-PT7A-77(7800馬力)×2
最大速度 820km
最大航続距離 4870km
乗員 2名+操作員2名