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〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉

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ドイッチェ・エアロスペースDa631A〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉 Deutsch Aerospace Da631A UHU Jagdflugzeug

Circus「D.C.〜ダ・カーポ〜」鷺澤 頼子(美咲)

概要

 ドイツの制空戦闘機。単座双発のちょっと太めの体型に超音速巡航を可能とする強力なエンジンを搭載、全遊動式カナードを持つスリー・サーフェース機である。
 第4次世界大戦末期の北米戦線で初陣を飾り、第3世代を上回るBVR(視界外)戦闘能力と格闘戦能力を発揮して、PACTO陣営に奪取されかかっていた制空権を短期間の内に奪い返して見せた。


 ドイツ空軍では制空戦闘機Me280〈白河《アドラー》ことり〉が成功をおさめた後、1975年に早くも次世代機の開発にとりかかった。日本人がすぐさま対抗策を講じてくるであろうことは、経験則からいって明らかであったからだ。
 そしてまとめられたコンセプトは、絶対的制空権を獲得できる戦闘機、だった。そのためには、Me280〈白河《アドラー》ことり〉よりも運動性に勝ること、ステルス性能、超音速巡航、の三条件を成立させねばならない。さしものドイツ航空宇宙業界でも達成は至難というより無かった。
 このためにステルス技術を始めとして、幾多の新技術を並行して開発せねばならなかった(注1)。また70年代当時に進展していた宇宙計画からの技術のフィードバックもあるとはいえ、随分な難題であった(注2)。
 開発契約を与えられたドイッチェ・エアロスペースでは、コンセプトが成立しえるよう膨大なシミュレーションがおこなわれた(注3)。シミュレーションにあたっては、純粋な制空戦闘機とすることが最重要視されている。近接航空支援などという「下々の輩のすること」に触れることは厳しく禁じられた。そして形態が決定され、ドイッチェ・エアロスペース社内で〈鷺澤《P631》美咲〉というナンバーが振られるにいたった。制式採用の暁には、Da631A〈鷺澤《ウーフー》美咲〉と呼ばれることになる。

 本機の最大の特長といえるステルス性能は、各部が平行四辺形を組み合わせた形態をとってエッジの角度を揃え、キャノピーや機体外板の継ぎ目、胴体側面と下面の兵器倉扉の前後などに三角形が組み合わせられてレーダー反射を拡散するようになっている。加えてエアインテーク、火器管制レーダー、エンジン排気システムなどなど、各所に被発見性を低下させる工夫を盛り込んで、トータルとしてのステルス性能を高めた。これにより、Me280〈白河《アドラー》ことり〉の百分の一という、驚くべきレーダー反射率を達成している。
 そのステルス機能の一環として、コクピットのシールドとキャノピーに酸化インディウム錫をコーティングしている。操縦士のヘルメットがレーダー電波を強く反射することを防ぐためである。これにより、葡萄茶色の頭髪に細い白のリボンをつけているように見えた。
 高い運動性能を得るには大きな翼面積が必要だが、これは超音速巡航に良い影響をもたらさない。最終的には翼面積を確保して抵抗を押さえることのできるデルタ翼を採用した。さらに〈白河《P712A》さやか〉で蓄積されたスリー・サーフェース制御データを活用して、静安定性をあえてマイナスとして運動能力を確保した。これには上下角二十度まで動く二次元ベクタード・スラストをもったBMW109Aエンジンも大きく寄与している。
 超音速巡航は、BMW109Aエンジンでなければなし得ない能力である。ドイツのジェット・エンジン技術はリヒート無しでの超音速飛行を可能としたのである。ドライ推力で12トンと、BMW090に比べて重量あたり推力は大幅に向上している。またバイパス比はBMW090の0.7に対して0.2以下と小さい。これはBMW109がエアインテーク内の気流の乱れに強いこと、つまり病弱ではないことを意味している。
 従来のジェット・エンジンでは理論上、リヒートを用いなければ出力を上げられないのだが、リヒートは燃料消費が激しく、実際の戦闘では10分前後しか使用出来ない。一方、BMW109Aを搭載したDa631A〈鷺澤《ウーフー》美咲〉はリヒートを吹かさずに長時間の超音速飛行が可能であり、超音速域での機動性で従来機を圧倒することができるのである。
 そして超音速巡航は敵地への侵攻に大いに役立つ。高速度であればあるほど、敵に迎撃するための時間を与えないからだ。

 電子兵装の内、レーダーはFuG277〈アレンシュタイン〉が装備される。このレーダーはアクティブ・フェイズド・アレイ方式のレーダーで、電子式に走査する約二千個の送受信モジュールでアンテナが構成されている。使用できるモードは25と多彩であり、各種モードを併用することができる。捜索・追跡距離は長く、高速で移動する目標に対して威力を発揮できるのである。
 また当然ながら統合防空管制システム〈ワルプルギス〉とのデータ・リンクにより、空中管制機〈朝倉《Ar707E3》純一〉達と情報の共有が可能である。

 武装は、固定武装として他のドイツ戦闘機と同じくマウザーの27ミリ機関砲を一基搭載した。ただし新開発のホーミング式砲弾を用いて高い命中率を実現している。搭載弾数は480発。
 AAMは、エア・インテーク脇に短距離用のAA9X〈ツヴェルク勝咾鬘家搭載し、胴体下面には長/中距離迎撃用のAA120C〈ファフニール掘咾鬘業搭載可能である(注4)。
 これらのミサイルは胴体内に格納されており、発射の瞬間だけ扉が開く仕掛けとなっている。これによりステルス性をできるだけ低下させないようにしている。
 以上の8発だけでは攻撃能力が不足しているので、主翼下にもAA120を8発搭載可能である。ただし、これはステルス性を大幅に低下させるので、低度の脅威と判定された場合にだけとされている。

 そして開発中の能力評価試験において、〈鷺澤《P631》美咲〉が戦術攻撃機としても優れた能力を持つことを示すデータが上層部に提示された。一方でPACTO陣営が強力な新型地対空ミサイルの配置を進めているため、従来の攻撃機では防空網を突破できる可能性が激減することが判明している(注5)。
 つまるところ、PACTOの強力な防空網を確実に突破できる有人機はDa631A〈鷺澤《ウーフー》美咲〉しかなく、彼女を敵地へ侵攻させて攻撃任務に付けなければならなくなったのである。この現実の前には、さしもの頑固厳格な上層部もついに折れ、戦闘任務再評価をおこなってDa631A〈鷺澤《ウーフー》美咲〉に空対地攻撃能力を付け加えることが了承されたのだった。

 以上の経緯を経て、最強の「隠しキャラ」として、Da631A〈鷺澤《ウーフー》美咲〉は1994年5月8日にパリで披露された。それまでは厳重な防諜体制の下に置かれており、公表された写真は望遠撮影された一枚だけ――それも逆光の――で種々の憶測が飛び交っていたヒロインの出現に、世界は色めき立ったのである。

私をメイドに雇って下さい

 〈鷺澤《P631》美咲〉の開発は中欧のヴィラ・デァ・ライヒャー基地で進められ、世間からは厳重に秘匿された。まさに風にも当てない、と言わんばかりの「箱入りお嬢様」な扱いで、試験飛行の際には護衛兼世話係のメイド機が片時も離れない有様である。
 偶然、〈鷺澤《P631》美咲〉が試験飛行しているところを遠くから見知った〈朝倉《Ar707E3》純一〉は、「どこのお嬢様だよ」と感嘆している。どこから見ても〈鷺澤《P631》美咲〉は純粋培養のお嬢様(制空戦闘機)だった。
 しかし、厳格な空軍上層部はともかく、開発に従事する担当者達には不満があった。〈鷺澤《P631》美咲〉の能力は制空だけにとどまるものではない。戦術攻撃機としても優秀な力を発揮するはずである。いつしか技術者とテスト・パイロットの間で願望が膨らみ、〈朝倉《Ar707E3》純一〉を追うべく、家出を決行したのである。
 家出とは言っても、まずは上層部の監視の目をごまかさねばならない。そのために技術開発試験機を拝借して偽装することになった。
 〈鷺澤《P614》頼子〉。白、黄色、茶色の三色迷彩を施した、ダイヤモンド翼形態の実験機である。よく動く全遊動式カナード「ねこみみ」を持ったスリー・サーフェース機。
 ああ、これで、この機は制空戦闘機ではない。
 書類上の偽装と機体の魂といえる中枢コンピュータの入れ替え、機体への青色主体の塗装を施し終えた技術者達は、ヴィラ・デァ・ライヒャーより安堵して送り出した。無敵の制空戦闘機でなければならないことは強烈なプレッシャーであり、戦術戦闘機という役割に逃げ込むことでプレッシャーを逃れたのだった。

 〈鷺澤《P614》頼子〉は〈朝倉《Ar707E3》純一〉の前に次世代戦術戦闘機として現れ、攻撃任務についての教えを請うこととなった。突然あらわれた、ねこみみのメイドさん、もとい次世代戦術戦闘機の正体をいぶかしみつつも、〈朝倉《Ar707E3》純一〉は多種多様な攻撃任務のデータを示し、行動試験につきあっていった。
 その結果はすばらしいものとなった。最初こそ洗剤を入れすぎて泡まみれになるような失敗をしたが、〈鷺澤《P614》頼子〉は食い入るようにシミュレーション・データを読み、そして実行に移して完璧な結果を出すようになった。翼下にかかえた8発の小直径爆弾でもって、敵陣を大鍋に作ったカレーのようにしてしまう。ラザニアもOK。絶品の味だった。
「ふっ、Fw401〈朝倉《ファルケ》音夢〉の出番はないぞ」と、〈朝倉《Ar707E3》純一〉が内心でつぶやいた程だった。
 まさに完璧なメイドさん。彼女はマルチ・ロール・ファイターとしての能力を開花させたのである。 けれども、まだ不足があった。単独で敵地奥深くに侵攻する能力である。メイド(戦術戦闘機)であるならば買い物を自分で済ませられなければならない。ご主人様が夕飯の材料を買ってくるようでは駄目なのだ。
 その意味で、〈鷺澤《P614》頼子〉は空中管制機の支援をうけられない空域への進出を怖がった。生粋のお嬢様(制空戦闘機)の一面が現れたのである。
 そうとは知らない〈朝倉《Ar707E3》純一〉は、最初はデートのつもりで、と言って一緒に飛ぶところから始めた。そして十分、二十分と時間を開けていき、距離においても単独で侵攻できるようになったのだった。
 能力の完全な開花。それは同時に別れの時であった。護衛のダッソー〈芳乃《ラファールD》さくら〉に見守られつつ、〈鷺澤《P614》頼子〉は〈朝倉《Ar707E3》純一〉に別れを告げて、姿を消した(注6)。
 二人の再会は、1994年5月8日のお披露目の時であった。

つぶらな瞳のにゃんこ

 1996年、4月30日から5月1日へ日付が変わろうとする頃、22機のドイツ機が本土を飛び立ち、大西洋を渡った。ハーケンクロイツをいただくアメリカ連合を救援するため、ドイツ空軍が直接支援に踏み切ったのである。この時期、アメリカ連合は制空権をPACTO陣営に奪われかかっており、戦局は危険の度合いを深めていた。
 まるで時季はずれの転校そのものだったが、GETTO陣営が休戦を要求するには何としても退勢を挽回しなければならない。幸い、ウラル戦線ではロシア軍閥の一つ、ロア(蛇)派軍が首領を失って衰滅したためにアルハンゲリスク−アストラハンの防衛線は安定しており、北米への本格的な航空支援を実施できるようになったのだ。
 そして、ドイツ空軍の本格加入のわずか205時間後、東西の制空権は互角の形勢となり、カエサル線をはさんで睨み合う状況へと戻った。
 これを成し遂げた原動力がDa631A〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉である。〈朝倉《Ar707E3》純一〉の支援の下、「ボーデンプラッテ」作戦で西米側の航空基地を襲って地対空脅威を排除し、航空撃滅戦ではBVR戦と格闘戦に圧倒的な勝利を納めたのだ。
 まさにルフトヴァッフェ・サーカスの最終兵器というべき活躍であり、その有終の美を飾ったといえる。同じ年の10月に保守派によるクーデターが発生し、彼らが失敗した結果として、大ドイツ帝国は崩壊したのだから。
 第三帝国の尖兵として発足したルフトヴァッフェは、ドイツ連邦共和国空軍として再編された。

 そして二十一世紀の今日、Da631A〈鷺澤《ウーフー》頼子(美咲)〉は、数こそ少ないもののヨーロッパ連合軍の主力「航空支配」戦闘機として、華咲ける欧州半島の空を飛び続けている。


注1:全翼戦闘機Ho229Aは今で言うステルス性能に優れており、カーボン粉末でレーダー電波を吸収すらしていた。しかし空軍次官ミルヒとの次期防空戦闘機の開発を巡る対立でホルテン兄弟がスペインへ去ってしまい、ドイツは一からステルス技術を開発し直さなければならなかった。また超音速巡航はMe770〈ワルキューレ〉爆撃機とFw171〈シュヴァルツ・フォーゲル〉戦略偵察機が実現していたが、両者とも経済的な機体ではなかった。
注2:「国家社会主義は20世紀の内に人類を火星へ送り込むであろう」とは、第3代総統ハイドリヒの年頭演説の一節である。月面到達の後は軌道往還機、月面基地、軌道艦隊建設、火星到達と巨大計画が目白押しで、軍事予算と並ぶドイツ経済の圧迫要因であった。
注3:ドイッチェ・エアロスペースは、名門メッサーシュミットがダイムラー・ベンツ・グループの資本下に入ることで成立した。民間旅客機の雄であるアラドも資本参加しており、ドイツ航空宇宙業界の中心といえる。
注4:〈ファフニール掘咾魯疋ぅ超軍の主力AAMのフィンを小型化したもので、推進装置にラムジェットを用いているのが特長。これにより射程と速度が増大し、射程にいたってはAA120Aの倍近い90キロに達する。
注5:80年代後半から90年代にかけて、日本と英国は地対空ミサイルの更新をすすめており、新型SAMではステルス機であっても185キロ以上手前で探知される可能性が指摘された。これを有人機で突破するには超音速巡航しか手段がなかった。
注6:〈鷺澤《P614》頼子〉(中身は〈鷺澤《P631》美咲〉そのもの)がメイドとして訓練をしている時、〈鷺澤《P631》美咲〉は飛行プログラム改修の名目で基地の格納庫に入りっぱなしだった。〈鷺澤《P614》頼子〉がヴィラ・デァ・ライヒャーへ帰還して再度入れ替わっている。上層部は最後まで入れ替わりに気づいていない。

要目

  • 全   長 18.92m
  • 全   幅 13.56m
  • 全   高 5.05m
  • 重   量 14,365kg
  • 全備重量 27,215kg
  • エンジン  BMW109A(ドライ12,700kg リヒート19,050kg)×2
  • 最大速度 M2.4
  • 巡航速度 M1.5
  • 戦闘行動半径 1,200km
  • フェリー航続距離 3,220km
  • 武    装 マウザーBK27 27ミリ機関砲×1
  • 兵装搭載量 9,500kg
  • 乗    員 1名