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〈芹沢《リンチェ》かぐら〉

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SIAI-マルケッティ S.141〈芹沢《リンチェ》かぐら〉(SIAI-Marchtti S.141 Lince ,STOVL Fleet Defence Fighter ,Itary)

(元ネタ より 芹沢かぐら)

■恋するSTOVL機

 イタリアの超音速S/VTOL機、正統派のCTOL機とは違う「サブキャラ」的機体であり、国家の事情でいまだ実戦参加はないもののその人気は高く、ファンの間では実戦投入シナリオが常に囁かれている。

■STOL機(*注1)

 垂直や短距離で離着陸できる航空機、人はそれを略してS/VTOL機と呼ぶ。このような機体があればただっ広い滑走路や無闇に大きな空母でなくとも離着陸できて融通性はものすごく高く便利な機体になるだろう。
 ジェット時代に入ってエンジン出力が飛躍的に向上するとこのVTOL戦闘機が各国で試作、開発され始めた。著名なのはかのホーカーシドレー〈ハリアー〉だが、もちろん同じようなことはGETTO側でもやっており、まずはフランスが中心となってミラージュ-Vを開発したがこれは上昇用のリフトエンジンを8基(!)も搭載するという誰の目にも使い物にならない機体だった。
 その後、今度はドイツが中心となってVAK191というリフトジェット2基とメインエンジン1基の機体が試作され、そこそこの性能を得たがこれも搭載量が不足気味なのと、何より比較的短い滑走路で離陸できる機体(後のMe111シリーズ)の方が有望視されたため開発は中断。結局VAK191を発展させたフィアットG95/4のみが生き残り、これをSIAI-マルケッティ社が生産したS.131〈プロセラリア〉が70年代に就役し、それに合わせて甲板を強化した空母〈望月《アストーレ》綾芽〉やヘリ巡洋艦に搭載されて配備された。
 この〈プロセラリア〉、〈ハリアー〉に対抗できる機体として宣伝好きなイタリア人の気質もあってよくマスコミにも登場したが、実際のところリフトエンジン2基を装備するシステム方式ではどうしても搭載量や性能に限界があり、実際の航続距離はわずかに200km程度、搭載量も少なく、レーダーも弱いとなんとも中途半端で使いにくい機体となってしまった。それが一番よく判るのがPACTO側のコードネームでその名も〈フォージャー〉(偽者の意味)。見掛け倒しの機体と言われても仕方ないだろう。
 だがどんな機体でも経験は積める。〈プロセラリア〉でVTOL機の運用経験を積みつつ、海軍は新たなる機体の要求を提示した。開発されているCTOL機達と互角に渡り合え、情報が入りつつあるPACTO側の同業者。つまり二八式垂直離着陸戦闘機〈春風〉(英国では〈アドバンスド・ハリアー〉、スペインではNH806〈アルファ〉)を圧倒できること。超音速で飛べること、垂直離着陸が容易であること。
 この普通に聞いたら飛び上がりそうな過酷な要求に対してSIAI-マルケッティ社がCTOL機ともほぼ互角に戦える戦闘能力を与えたものがS.141〈芹沢《リンチェ》かぐら〉である。〈プロセラリア。の運用実績から離陸は短距離滑走を基本とし、ペイロードを減らしてしまう垂直離陸は必要なときにのみとされた。
 東方ロシア帝国が実用化し、少数が配備された超音速S/VTOL機ポリカルポフPo1010(通称〈ヤードマスター〉)と同様の超音速機であるが性能は一段上、容姿もステルス性を取り入れて全くの別機体に仕上がっている。特にステルス性は重要視された。なぜなら仮想敵が日本機動部隊に配備されている艦載戦闘機や長距離から来る陸上戦闘機、たとえば日本の三七式戦闘機〈鳴風《晨風》みなも〉、あるいは開発が進んでいると情報が入っている日本の次期VTOL戦闘機〈春日《海風》せりな〉である。このような立派なヒロインともいえるCTOL機に対して宿命的にパワーや搭載量で劣るSTOVL機(サブキャラとでも言おうか)で互角に渡り合い、同系統の機体を圧倒するためにはどうしても普通の機動性能だけでは足らない。そのため機体形状もステルスと機動性を追及した独特かつ美しい形状となった。
 主翼はデルタ翼の後縁を前方向に折りたたんだ独特の菱型形状。これに先端を斜めにカットしたカナードがつき、控えめでかつ滑らかなストレーキが機首部分まで伸びる形を取って低速、離着陸時の安定性を向上させている。
 ステルス性を空力性能を両立させ、なおかつ空母の格納庫に容易に納められるようにする二枚の垂直尾翼は内側に斜めに傾けた独特の形状をとり、主翼も他の艦載機同様上側に折り畳んだ後に垂直尾翼と重ねて格納庫に収納する。
 ステルス性を考慮したためやや変形しているが、カナード付きデルタという姿は欧州戦闘機ではお馴染みの姿で 、〈芹沢《リンチェ》かぐら〉もまたデルタ翼の系譜を継ぐ流麗な機体を受け継ぎ、それをイタリア流に発展させた姿を持っている。
 S/VTOLの鍵となり、実用性能を決めてしまうエンジンは「メインヒロインと同じもの」という訳でもないが出来うる限りの大出力を求めて〈星崎《シュペルミラージュ》希望〉のSNECMA・M90エンジンを採用(ライセンス生産)。これを元にファンとバイパス比を変更。離陸、着陸時における低速性能とVTOL時の静止推力を強化、改善したフィアットR1750V30を搭載。配置は〈プロセラリア〉や〈ヤードマスター〉のように水平飛行ではデッドウェイトとなるリフトエンジンを積む方式ではなく、またハリアーや〈藍澤《シュライクM》華穂〉のようなエンジン噴流をノズルでコントロールする方式も採用しない。もちろん「スラスターの大安売り」としか思えない〈春日《海風》せりな〉/NH〈春日《ベータ》せりな〉のようなどこぞのNH社しか考え付かないような空恐ろしい仕掛けは論外だった。
 代わりに〈芹沢《リンチェ》かぐら〉はヘリコプターの技術を応用する一種独特の離着陸システムを採用した。そのシステムはターボファンエンジンのファンや圧縮機、タービンが取り付けられている駆動軸。この駆動軸からシャフトを前方に延ばし、クラッチとギアボックスで回転を制御。操縦室後方に垂直方向に配置されたファンの動力にしようというリモートファン方式。仕掛けは案外単純だがエンジンは一基でよくシャフト駆動なので軽量になり、飛行甲板を焼きかねない高温の排気を噴出することもない。そしてエンジン出力上昇による効率低下もリフトファンのギヤ比を変更することにより打ち消せる。どの道大層なリフトファンなぞは離着陸にしか使わないのだから軽量単純にしておかないと飛んでいる時に邪魔になってしまう(開口部は水平飛行時にはスライドカバーによって閉める)。
 これと共に離着陸時はエンジンノズルも下向きに稼動させる。こちらはスムーズに排気ガスを流すために多関節、蛇腹式のノズルを開発。垂直どころか下側110度間で可変させ、空戦時にはベクタードノズルとして使用することにより高い機動性を引き出すことが可能になり、目一杯ノズルを曲げるといわゆるコブラに近い機動まで可能。
 なお、左右安定性を確保するために主翼端にコントロールダクトを設け、ジャイロ制御で排気ガスを噴出させる安定装置を持つのはハリアー同様。これらの複雑なVTOL性能を維持するため、操縦系統は四重のデジタルフライ・バイ・ワイヤ。もちろんエンジン制御もデジタルで離着陸時には風速などの外的条件を瞬時に判断、これを後述するような記憶容量の大きなコンピューターに送って昇降舵とエンジンノズル、リフトファンを自動制御。見た目よりも遥かに複雑(*注2)な垂直離着陸時のパイロットの負担を減らしている。
 ただこの方式、1秒間にヤク400回という物凄い速度で回転するエンジンシャフトをクラッチとギアボックスで受け止めてリフトファンへ回転を適切に伝えなければならない。当然クラッチとギアボックスにかかる力量は膨れ上がってなんと約9万馬力。このギアボックスの問題から〈芹沢《リンチェ》かぐら〉はギアが耐え切れず突如空中で「石化」したように停止するという一種奇妙な問題を抱えることとなった。
 搭載されるレーダーは〈雪村《ミラージュ2000》小町〉とほぼ同じ性能を持ち、海上捜索能力を強化したセレニア・スピカMRSを搭載。対艦ミサイルの中間誘導能力を備えたこのレーダーはSTマイクロエレクトロニクス社製のコンピューターに接続され、充実したデータリンクシステムとデータ収集能力と記憶容量は戦闘機というより偵察機に近いほどの性能を与えられた。軽空母では積める機体はは少ない。だから戦闘機でも偵察能力が必要という理由は説得力があり、それくらいデータをメモらないと優勢なCTOL機との戦いはやっていけないとはいえ、「データバンク機」と呼ばれる程の能力を戦闘機に持たせる必要があったのか疑問であるが。

 兵装はステルス機の常として同体内に格納、対艦ミサイル・マルテMk3、あるいはツヴェルクやアスピーデといったAAMのいずれかを4発搭載、他にOTOブレダ27ミリ機関砲を左右のエアインテイク根元に装備している。搭載量の少なさはステルス機の宿命的欠点だが、特に〈芹沢《リンチェ》かぐら。は機体内にリフトファンとその開口装置、シャフト、ギアボックスまで抱え込んでいるの搭載できるミサイルはたったの4発。一応対地攻撃にために爆弾を積むことも出来るが、搭載するときにはもちろんミサイルと入れ替えなければならない。こんな事情のために下手をするとヘリコプターであるユーロコプターAS534〈森《フュリース》青葉〉よりも「小さい」(搭載量が)という問題を抱えてしまった 。SIAI社ではあれこれ考えた末、主翼下にもペイロードを儲け、ここの爆弾等をぴったり張り付く形で懸架させて搭載量を増やしたが、こんな「猿でも出来る増加方式」ではステルス性能の減少をカバーできず、たまたま飛行経路が一緒になったボンバーディアBDE707〈桜井《グローバルサーチ》舞人〉の搭乗員に感知された挙句に秘密データ(*注3)を傍受されて大恥をかく羽目になってしまった。

■強くなる、あの人のために、あの国のために

 色々な問題はあったにせよ、〈プロセラリア〉の経験やリフトファンに対するアグスタシコルスキー社の支援などもあり、〈芹沢《リンチェ》かぐら。は1987年に初飛行に成功、テストの方も搭載量以外は言うこと無し、それどころか十分メインヒロインも張れると太鼓判を押され、レーダーロドームを装備し、早期管制ヘリとなった〈森《フュリース》青葉。と共に竣工したばかりの〈プリンシペ・アメディオ〉〈パルミオ・トリアッティ〉の両軽空母に配備。ダークグレーを基本としたシックな塗装に彩られたその姿はコンパクトながら流麗、かつ高性能。当然のことながら世の注目を集めていく。いわく「戦闘力はどうなのか」「攻略できるのか」「搭載量はどのくらいなのか」…
 〈プロセラリア〉いや〈フォージャー〉の頃は内心鼻で笑っていた〈ハリアー〉擁する英国も〈芹沢《リンチェ》かぐら〉となるとさすがに対策が必要になってくる。同じSTOVL機でも相手はステルス性能を持ち、しかも超音速で飛べるのだからシャレにならない。所詮は強化型である〈アドバンスド・ハリアー〉にあぐらを掻くヒマもなく、その姿から「ハコフグ」「ひよこまんじゅう」と散々言いたい放題言っていた合衆国のJSFこと〈藍澤《シュライクN》眞穂〉計画に言い訳しながら参加。対策を講じる他なかった。
 そして実は一番驚いたのは誰であろう合衆国空軍関係者。〈芹沢《リンチェ》かぐら〉の期待形状はマクダネル・ダグラス社がF22〈彩坂《ラプター》愛美〉の開発時にアイデアスケッチから「謎の戦闘機」と呼ばれ模型屋を賑わせたF19 似かなり近かったからである。もちろんF19と〈芹沢《リンチェ》かぐら〉には何の関係もない。単にカナード付きデルタのステルス性能を強化したらこうなっただけであり、単なる偶然。そんなことを言っていたらKEY〈Air供團織ぅ奸璽鵝奸咾肇哀薀泪鵤-14〈剣《ジャガー供充。はどうなんだということなってしまう。
 ちなみにステルスといえばレーダー反射率だが、さすがにステルス性能を持たせただけあって「他の機体と違って弾むような反射がない」という評価を管制機やレーダーサイトから受けるほど。最もその評価すらまだパイロットには不満だったのか、その通信を受けた途端「そ、そんな」と言わんばかりに「石化」してしまう有様だったが。

 このように各国から色々と注目された〈芹沢《リンチェ》かぐら〉だったが、配備されてからが〈芹沢《リンチェ》かぐら〉にとっては「ヒロイン」を目指す大変な道が始まった。同じように艦載型として開発されたヘリである〈森《フュリース》青葉〉が戦闘はともかくその多用途性とかいがいしさから海軍の「家事全般」を取り仕切り、妹のような存在としてGETTO制式艦載ヘリへの地歩を固めているのとは対照的に〈芹沢《リンチェ》かぐら〉はステルス+S/VTOLという機体構造と独自開発は当たり前ながら費用がかかる上にイタリア自身の配備数は60機余り。ならば輸出を考えるのは当然で、アグスタシコルスキー社が前に出て積極的なセールスを行うことになった。先にG280〈桜井《ティフォネ》知絵〉はエンジン欠陥で輸出どころの騒ぎではなくなったためにMB337〈八重樫《ヴルペス》つばさ〉と共に輸出を考えるのは当然だろう。
 しかし考えてみればすぐに判るが、もともとこういうタイプの機体は「他に選択肢がない」時にしか役に立たない。フランス海・海兵隊向けにカナードを「猫耳」と呼ばれるほど大型化し、「あわてずさわがずよくなつく、小動物的戦闘機」(確かにリンチェ=山猫だが…)とどこでも離着陸できて揚陸艦にも載せられることをアピールしたものの「空母機を使えばいい」という意見が強く失敗。
 ならばと東部連合向けを目指し、エンジンと機器の一部を東部連合製に換装したS.141E〈小津《ジャネット》千歳〉が東部連合海兵隊向けに開発されたが配備までにはいたらず、何の因果か民主フランス経由で合衆国にアグレッサーとして回ってきた試作機が合衆国による(東部連合の)首都攻撃作戦に参加するという数奇な運命をたどっている。
 ただ後に東部連合のマーチン社がCTOL化。これを東部連合空軍がマーチンF-19〈カーマイン〉として採用したため、本当に「F-19」が出現。こちらはリフトファン部分が無いため搭載量で悩む必要もなく、それどころか原型機以上の電子機能を持って「ハッカー」としてあちこちで戦果を挙げ、しまいにはF22〈彩坂《ラプター》愛美〉と空戦になってしまうという合衆国にとっては悪夢に近い皮肉が生まれたのだが、〈芹沢《リンチェ》かぐら〉の本来にルートとは外れるため別項に譲る。

■もしも歴史が変わるなら…

 WW4ではイタリアは警戒態勢のまま中立を保っていた。しかし中立といえども実戦体制を取っていたのは他国と変わらない。海軍も予備役に入っていた艦を復帰させて久々の全力召集をかけ、警戒行動にあたっていた。当然のことながら〈芹沢《リンチェ》かぐら〉も2隻の空母に搭載されて地中海から大西洋へと警戒行動を取ることになる。

 地中海、夏。リビア・シルテ沖。哨戒行動を取っていたイタリアを中心とする南欧艦隊。機関に復帰したばかりの〈霧島《ローマ》佳乃〉の対空レーダーが警戒を鳴らし、対空ミサイル発射機が動き始める。警戒の主は国籍不明機。しかもイタリアの領海。つまり領空侵犯。慌てて〈芹沢《リンチェ》かぐら〉が〈プリンシペ・アメディオ〉のスキージャンプ甲板を蹴って飛び上がる。もちろんAAMを抱え込んだ戦闘態勢。しばらく飛ぶと国籍不明機の正体が判明した。
 双垂直尾翼。二つに分かれたエンジン部分。日本の四三式支援戦闘機〈丘野《陽光》ひなた〉だ。電子装備を簡易化したツケで「おっちょこちょい 」と陰で言われる同機だ。航法を間違ったのか、それとも意図して入り込んだのか。万国共通の警戒信号。そして誘導信号。
 「貴機は、イタリアの領空を侵犯している、直ちに針路変更せよ。」
 だが〈丘野《陽光》ひなた〉は反応しない。撃墜か否か。〈芹沢《リンチェ》かぐら〉の引き込み式ウェポンベイが反転し、ツヴェルクAAMが顔を出す。それと同時に27ミリ機関砲の安全装置が解除。海上に向けて信号射撃が放たれる。
 「我が方の誘導に従え」
 領空内、ここまで来るともう相手は撃墜されても文句は言えない。だが相手は第四次世界大戦での交戦国。対処の仕方によってはイタリアもまた大戦に引き込まれる危険があるし、日本もそれを見越して落合中将率いる地中海艦隊を派遣している。表向きは地中海に配備されたGETTO戦略潜水艦の封殺だが、もちろんイタリアに対する押さえが本当の目的なのは判り切っている。もちろん落合中将にも「先制攻撃があった場合、敢然と応戦せよ」との命令が与えられていた。つまりこの空戦の結果次第によっては第四次世界大戦が地中海にまで広がってしまうことになる。南欧艦隊はイタリアだけでなくギリシア、リビア、クロアチア、セルビアの各艦艇が加わっていることを考えれば些細な衝突が戦争の拡大に繋がることは目に見えている。
 当時日本の三九式垂直離着陸戦闘機〈春日《海風》せりな〉に手こずっていたGETTO陣営としては、かのハンムラビ法典ではないが「VTOL機にはVTOL機」とばかり〈芹沢《リンチェ》かぐら〉をぶつけよういう動きがあり、そのためにはイタリアを戦いに引き込むことも考慮されていた。イタリアの中立とはそのような中での{崩れそうな結界}のような危うい存在だったのだ。
 そのことを知ってか知らずか〈芹沢《リンチェ》かぐら〉は更に接近。ヘッドアップディスプレイに〈丘野《陽光》ひなた〉の姿が捉えられ、ロックオン信号が〈丘野《陽光》ひなた〉に伝わる。
「うにゃ♪」
「うにゅ!!!」
 慌てふためいて〈丘野《陽光》ひなた〉が飛び去っていく。どうやらステルセが災いして気づかなかったらしい。戻ったら上司や「兄」がカンカンに怒っているだろう。そして〈芹沢《リンチェ》かぐら。は戦わずして第四次大戦の終結を見ることになった。
 湾岸戦争でも空母に載って出撃したが、結局周辺哨戒だけで〈芹沢《リンチェ》かぐら〉の出番は終わり、21世紀に入っても「いつでもどこでもここにあり」というVTOL能力を生かして紛争地帯での哨戒や監視といった任務についている。〈芹沢《リンチェ》かぐら〉同様のコンセプトと離着陸システムをを持つ東部連合開発のグラマンF35〈香坂《ホーリーキャット》チカ/ちより〉が配備され始めた現在、〈芹沢《リンチェ》かぐら〉はアビオニクスの強化と搭載量を増やそうとアグスタシコルスキー社(1997年にSIAI社を吸収合併)では相変わらずの努力が続き、日本の言うところの「グローバルマルチファイター」を目指すべく改良型も計画されているらしい。{(br)} もしも歴史が一度だけ変って〈芹沢《リンチェ》かぐら〉が戦うことになるとしたら、また違った物語が織り成されることとなっただろう。だが「戦わない」ことは「強くなる」ことにも繋がっている。戦わずして終わる。そんな兵器があってもいいのではないだろうか?非武装中立論者は信じないだろうが、兵器とは「戦わない」ことの方が「戦う」よりもずっと難しく、そして強く、重要なのだから。
 〈芹沢《リンチェ》かぐら〉はついに戦闘では「ヒロイン」にはなれなかったが、「ヒロイン」よりも遥かに強く生きていくことで「ヒロイン」になったのだ。

#注1:VTOL機=垂直離陸(艦)して垂直着陸(艦)する機体。
    STOVL機=短距離滑走で離陸(艦)し、着陸(艦)は垂直にする機体
    CTOL機=普通の離着陸(カタパルト含む)をする機体。(つまり普通の航空機)

#注2:垂直離着陸時には昇降舵、ファン、スロットル、エンジンノズルの4つを同時に操作しなければならない。これだけでも難しいのに着艦ともなるとさらに母艦も揺れているのだからその難しさの程が判るだろう。

#注3バスとアップ体操からアイデアを得たという妙な説が流れている。確かに恥ずかしいことこの上ない。

■データ

全幅 9.81m
全長 17.2m
全高 5.22m
自重 13900
最大重量 20500
発動機 フィアットR1750V30(推力9500圈。繊殖臓。隠沓毅娃悪圈■孱圍錬婿11500)
最大速度 M=1.9
最大航続距離 2100km
武装 27弌Ε泪Ε供次殖錬圍魯屮譽正ヾ慄ぃ果
   AAM×2+ASM2(胴体内)、ハードポイント2(翼下)
乗員 1名

■各型

A型:艦上戦闘攻撃機型
B型:空軍型
C型:航続力やアビオニクスを強化したタイプ
D型:フランス/ドイツ向け輸出型、不採用
S.141E〈小津《ジャネット》千歳〉:東部連合向け。数機が採用された。
F19〈カーマイン〉:リフトファンを撤去して電子機器を強化したCTOL型。マーチン社が主契約者となる。