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〈羽根井《コロラド》優希〉

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合衆国海軍戦艦〈羽根井《コロラド》優希〉

元ネタ:オーガスト「バイナリィ・ポット」羽根井優希

 合衆国海軍初の16インチ砲戦艦にして、3年計画級戦艦群の第一号艦。日本の〈来栖川《長門》芹香〉に相当する艦である。合衆国海軍戦艦にとっては頼れる「先輩」にして「幼馴染み」とも言える存在であり、1942年の太平洋戦争勃発から1952年の第三次世界大戦終結まで10年にわたる戦火の中を潜り抜け、危機に陥った合衆国にとっていつも救いの手となる艦であった。


建造の経緯

 合衆国海軍が対日英同盟及び南部連合戦を睨んで計画した一大建艦計画、3年計画。発案者の名を取って「ダニエルズ・プラン」とも呼称されるこの計画は、第一次、第二次の2回に分けられ、それぞれ3年の間に各種艦艇500隻以上の艦艇を新造し、周囲の仮想敵国に対しどの正面でも対等以上に戦える海軍戦力の建設を目指すという、壮大極まりない計画であった。当時の合衆国以外…50年代の日本でさえも成し得なかったであろう計画である。
 その根幹をなすのが32隻の新造を予定していた戦艦部隊で、重厚極まりない分厚い装甲と火力を備える戦艦と、巡洋艦に匹敵する世界最速の巡洋戦艦を備え、実現すれば合衆国海軍はまさに最高の環境を持つ海軍として二つの大洋に覇を唱える存在となるはずであった。
〈羽根井《コロラド》優希〉級はその3年計画戦艦群の第一シリーズで、前シリーズの14インチ砲戦艦、〈テネシー〉級を発展させた重装甲の艦体に、45口径16インチ砲を連装4基8門背負い式に装備。伝統的な籠マストを採用した堅実な設計の艦である。
 速力は21ノットとやや低速だが、その重装甲は1ランク上の50口径16インチ砲の直撃にも耐えるものと期待され、仮想敵である〈来栖川《長門》芹香〉級、〈長岡《加賀》志保〉級や英国のR級、〈クイーン・エリザベス〉級に対して十分に対抗できるものと期待された。


条約論争

 しかし、3年計画に対抗して日本が八八(cm)艦隊計画を発動すると、その軍拡競争に耐え切れないと判断した英国は軍縮会議の開催を呼びかけた。もともと国力的に無理をしている日本、対南部陸上戦力を必要とする合衆国もこれに同意し、日本の隆山で軍縮会議が開催された。
 そして、この席上日英共同提案として提出された主要各国の建艦比率案は、合衆国海軍に冷水を浴びせ掛けるもとのなった。その比率とは米:英:日で保有隻数10:10:7、総排水量では10:10:8というものだった。日英同盟の存在を考えれば実質10:17あるいは10:18という合衆国に対して極めて不利なものであり、さらに南部連合やスペインカリブ海艦隊に対する備えを考慮すれば、合衆国海軍は1正面あたり2〜3倍近い敵と対峙しなければならないという、極めて厳しい情勢に陥る。
 これに対し、最低でも1正面あたりの戦力比を彼我1:0.7程度に高めたい合衆国海軍は猛烈な抵抗を見せた。国防上の見地から言えば、既にほぼ完成している第一次3年計画はもちろん、第二次3年計画もその半分は続行することを認めさせねば、日英の圧力に効し切れない。合衆国海軍は「対日英7割」を合言葉に、米英日の比率を13:10:7とする案を提示したが、これは否決され、結局さまざまな政治的要因から隆山条約案を呑まざるを得なかった。 
 この隆山条約における「敗北」は合衆国海軍にとって苦々しい記憶となり、以後、日英同盟を完全な仮想敵国に想定した合衆国海軍の戦略は、南部連合を第一の仮想敵に据える陸軍戦略と乖離して、国家戦略分裂の一要因になっていく。
 

第一次改装

〈羽根井《コロラド》優希〉級もこうした海軍内の変化に合わせて改装が施されることとなった。合衆国海軍が掲げたのは、〈スウィングバイ戦略〉と呼ばれるもので、艦隊の機動力をこれまで以上に高めることで、太平洋、大西洋、カリブ海に必要なときに必要なだけの艦艇を素早く送り込むことがその眼目であった。
 従来重装甲・大火力・低速の戦艦と、軽装甲・高速の巡洋戦艦の2本立てで艦隊を編成してきた合衆国海軍は、低速戦艦群の高速化によってこの目的を達成しようとした。すべての戦艦の最高速力を従来の21ノットから、一挙に27〜8ノットへと高めようというのである。このため、新型機関の搭載や、装甲の一部軽減などが計画された。
さらに、海軍では電波兵器にも注目し、数の上で優位な敵に質的優位で対抗できるようにこれらを積極的に導入。艦艇の上部構造物上には無数のアンテナが林立する事になる。
 これに、海軍部内の保守派は一斉に激しい抵抗を見せた。その急先鋒となったのが〈羽根井《コロラド》優希〉艦長である。合衆国海軍きっての砲術の達人で、自ら発射用装薬の配合を研究し、常に最適のブレンドを追及し続けている彼は、特に装甲を減らすことに激しく抵抗した。
「そんな露出度の高い服を着るような恥ずかしい真似はできない」
「戦艦は忙しく駆け回るウェイトレスじゃない。もっとどっしり構えているべきものだ」
 と言うのが彼の主張である。しかし、主観的には「乏しい」戦力を弾力的に活用するためには、これらの改装は避けて通れない。保守派の抵抗も空しく、新旧18隻の戦艦は1930年代に入ると順次高速化改装を受けることとなった。
〈羽根井《コロラド》優希〉は1933〜35年に改装を受け、ヴァイタル・パート以外の装甲を減らして新型機関を搭載。速力は21ノットから28ノットへと高まり、さらに次期主力戦艦のテストヘッドとして、新型の塔型艦橋とマストを搭載した。結果として、その性能はほぼポスト条約型戦艦である〈夕凪“ミネソタ”美奈萌〉級に匹敵するものとなっている。
 この改装によって〈羽根井《コロラド》優希〉は3年計画型戦艦16隻の中でもひときわ目立つ近代的で美しい艦容を持つことになったが、従来の籠マストに郷愁を抱く艦長は、自らの艦を見るたびに
「こんな恥ずかしい格好は嫌だ」
 と嘆くのが常であった。 
 残念なことに、ロング政権の成立と、これによる合衆国の隆山条約体制脱退により新型戦艦の建造が優先され、3年計画戦艦の中で改装を終了したのは〈羽根井《コロラド》優希〉の他にレキシントン級の〈加藤《サラトガ》あおい〉だけにとどまっている。


太平洋戦争

 1942年、対日戦勃発とともに、「潜水艦攻撃で合衆国艦隊は大損害を受けた」との誤った情報を受けて出撃してきた日本の空母機動部隊をミッドウェイで叩いた合衆国海軍は内南洋へ侵攻した。〈羽根井《コロラド》優希〉は小回りの良さを生かし、島嶼上陸戦に先立つ艦砲射撃などの任務に投入され、各地で活躍している。艦長が編み出した新配合の装薬による発砲は破壊力抜群で、上陸部隊はほかのどの艦よりも〈羽根井《コロラド》優希〉の支援を喜んでいる。
 そして、この戦争の帰趨を賭けた決戦、東太平洋海戦にも彼女は参加し、第一のライバルだった〈来栖川《長門》芹香〉級、〈長岡《加賀》志保〉級と激しい砲火を交わしている。
 しかし、この戦いは合衆国海軍の戦術的敗北、戦略的大敗北だった。欧州戦線では英海軍相手に経験を積んだイタリア海軍に大苦戦を強いられ、世界中から嘲笑された日本海軍戦艦部隊も、経験と新型射撃管制システムの導入によって急速に技量を上げており、合衆国戦艦を圧倒したのである。
 旗艦で75000トンの新鋭超巨大戦艦、ケンタッキー級の〈森本《オハイオ》奈海〉は〈高瀬《大和》瑞希〉との砲戦に敗れて撃沈され、その他の水上戦闘群も不利に陥って、砲戦開始から2時間後には合衆国海軍は7隻の戦艦を失っていたのに対し、日本海軍の喪失は2隻のみ。ここに至り、勝敗は事実上決していた。
 しかしながら、合衆国海軍も最後に意地を見せる。〈羽根井《コロラド》優希〉は〈遠場《ニュージャージー》透〉と共に殿に立ち、追撃してきた日本艦隊と最後の交戦を行った。結果、〈佐藤《土佐》雅史〉など2隻を撃沈して日本側の追撃の意思を挫き、残った艦隊をクリスマス島まで撤退させることに成功している。

 

危機

 東太平洋海戦直後に勃発した第二次南北戦争により、合衆国の危機は依然として続いていた。〈羽根井《コロラド》優希〉は数少ない稼動戦艦としてカリブ海に乗り込み、南部連合軍と激戦を繰り広げた。ここでも彼女は陸上陣地への艦砲射撃、空母機動部隊の護衛といった気乗りしない任務であっても忠実にこなし、南部連合軍に大打撃を与えている。
 第二次南北戦争終結後は太平洋艦隊に復帰。将来の対日戦をにらんで再度の改装が実施され、レーダー設備の強化、両用砲のMk-38からMk-41への換装などが行われている。
 この結果、一見旧式で電子戦や対空戦が苦手なように見えながら、実は合衆国戦艦の中でもそれらの戦術に関しては随一といっていい実力を身につけた。彼女は目に見えない電子から戦艦まで、あらゆる相手に対して十分な「接客」ができる艦になったのである。いわば、優秀なウェイトレスといっても良いだろう。
 その実力が遺憾なく発揮されたのは、1952年初頭のパナマ侵攻作戦「贖罪」における活躍である。この戦いではドイツ軍が投入した核弾頭装備弾道弾の攻撃と、その後の航空攻撃によって合衆国軍は大打撃を受けた。しかし、〈羽根井《コロラド》優希〉はいち早くECM効果で損傷したレーダーを復旧し、臨時に防空戦指揮艦として生き残った艦隊を統率。果敢な迎撃戦闘を展開して多数のドイツ軍機やその発射した誘導弾を撃墜し、味方を守った。彼女の持つリーダーシップが遺憾なく発揮された戦いであり、仮に彼女がいなければ合衆国海軍は文字通り全滅していたかもしれない―とは後世の戦史研究家の言である。


営業

 第三次世界大戦も後半の1951年半ば、合衆国海軍には沈滞したムードが漂っていた。
 パナマ奪還戦からカリブ海戦線までの戦いで相次いで大損害を受けた海軍に対し、政府が不信感を抱いていると言う情報が流れたのである。
 無論、状況は芳しくはない。だが、努力次第では昔のような強大な海軍を再建することは可能だった。しかし、当時の合衆国にはそれを待つだけの余裕―人的・物的資源、予算、時間がなかった。ようやく開始された北米地上反攻作戦―〈オーヴァーロード〉が莫大なそれらを要求していたためである。
〈羽根井《コロラド》優希〉艦長は海軍の現状をまとめたレポートを手にして駆け回り、危機を訴えた。最初は楽観していた者も、次第に真剣に彼の言うことに耳を傾けるようになり、海軍再生に向けての真剣な話し合いがあちこちで行われた。
 その結果は、ある意味王道的な実績の積み重ねしかない、と言うことに尽きた。少しでも多くの戦果を上げ、海軍が役に立つ存在であることを示さねばならない。
 そこで、〈羽根井《コロラド》優希〉艦長は密かに決意した。それは、地中海戦線への派遣である。英国が担当する同戦線では、侵攻する英国軍と、それを防ごうとするイタリア軍の間に激戦が展開されていた。そこで、現状では比較的戦力に余裕のある合衆国海軍に増援が依頼されていたのである。
 カリブは落ち着いたとは言え、戦況予断を許さない本土地上戦を何らかの形で支援したいと思っていた海軍は、この英国の申し入れに難色を示していたが、〈羽根井《コロラド》優希〉艦長の志願により、地中海派遣部隊の編成を決定。この艦隊編成は、地中海戦線を北大西洋戦線―英本土奪還の陽動としたい枢軸海軍司令部の思惑から拡大し、最後には〈羽根井《コロラド》優希〉と共に〈川上《ケンタッキー》由里己〉〈夕凪《ミネソタ》美奈萌〉からなる戦艦部隊、そして最新鋭の超大型空母〈芦原《ウェンデル・L・ウィルキー》洋一〉までをも含む大艦隊へと発展する。
 艦隊旗艦の〈《サイパン》サトミ〉は損傷した軽空母を改装した指揮通信艦、〈芦原《ウェンデル・L・ウィルキー》洋一〉はこれが初陣で、新人ウェイトレスや新米店長のように頼りない部分もあったが、ヴェテランの〈羽根井《コロラド》優希〉はこれを上手く支え、地中海艦隊の運営を円滑なものとした。その手腕はこれまた運営能力では人後に落ちない〈川上《ケンタッキー》由里己〉をも感心させるものだった。
 地中海に展開し、英軍の支援に当たる事になった〈羽根井《コロラド》優希〉以下の合衆国艦隊は、主に対地支援攻撃に従事。戦場の沖合いに到着すると、敵陣へ向けて
「お客様、申し訳ありませんがもう閉店のお時間です。速やかに占領を解除して下さいね」
 と人を食ったような退去勧告を出し、拒否されると容赦なく艦砲射撃を打ち込んだ。フライパンを打ち鳴らすような猛射撃は、時々近所の英軍陣地近くに着弾して抗議が来るほどの活発さで行われ、対戦するイタリア軍に大損害を与えている。
 地中海最後の艦隊決戦となったマルタ島沖海戦でも、マルタ島で苦戦する英陸軍の支援を実直に行って戦闘に参加せず、英軍が反撃に転じるまでの時間を稼いだ。こうした地道な「営業」が実り、合衆国艦隊の評価は上昇。「お客さん」たる英国から合衆国政府へ感謝の意が伝えられると共に、いつしか海軍削減の噂も立ち消えになっていた。


 

その後

 1952年、第三次世界大戦終結。これと共に、主要参戦国では大規模な軍縮が行われた。合衆国も例外ではなく、〈羽根井《コロラド》優希〉は最古参の戦艦として退役リストに載せられ、現役を引退。解体された後、破壊された中西部のインフラ再構築のための資材に転用された。彼女は最初は海軍を、次は国家そのものを再生する礎としてその生涯を全うしたのであった。
 この彼女の偉大な功績に対し、合衆国海軍は1980年代にようやく保有することのできた戦略ミサイル原潜の一番艦に〈羽根井《コロラド》優希〉の名を受け継がせている。そして、二代目の彼女は第四次世界大戦の終結にあたって大きな役割を果たすことになるのだが、それはまた別の物語である。
 
 

要目

竣工当時

  • 基準排水量  32.500t
  • 全長 190.2m
  • 幅 32.9m
  • 主機 ターボ・エレクトリック 4軸
  • 出力 31.000馬力
  • 速力 21kt
  • 兵装
    • 主砲 16インチ連装砲4基
    • 副砲 6インチ単装砲10基
    • 高角砲 5インチ単装砲8基
    • 機銃 23ミリ機銃 16丁
  • 搭載機数 3機

第一次改装後

  • 基準排水量  34.220t
  • 全長 190.2m
  • 幅 32.9m
  • 主機 ターボ・エレクトリック 4軸
  • 出力 121.000馬力
  • 速力 28kt
  • 兵装
    • 主砲 16インチ連装砲 4基 
    • 両用砲 Mk‐38連装5インチ砲 8基
    • 機関砲 ボフォース40ミリ 4連装2基 連装8基
    • 機銃 ブローニングM‐2 12.7ミリ 24丁
  • 搭載機数 3機

最終状態

  • 基準排水量  36.750t
  • 全長 190.2m
  • 幅 32.9m
  • 主機 ターボ・エレクトリック 4軸
  • 出力 130.000馬力
  • 速力 28kt
  • 兵装
    • 主砲 16インチ連装砲 4基 
    • 両用砲
      • Mk‐41単装5インチ自動砲 8基
      • Mk‐34 連装3インチ自動砲 14基
    • 機銃 ブローニングM‐2 12.7ミリ 68丁
  • 搭載機数 ヘリ3機