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〈ミレニアム〉

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東部連合防空武器庫艦〈ミレニアム〉

オーガスト「バイナリィ・ポット」よりミリィ

【概要】

 アメリカ連合(東部連合)海軍が省力化のために計画、建造した防空武器庫艦(アーセナル・シップ)の一番艦。海軍力で劣位に立つ東側陣営にとっては「主役」たる通常艦艇群が活躍するためのサポート役ととして、彼女に期待するところ大であったが、皮肉にも彼女は東部連合首脳部が望まない形で大戦の幕を引くのに重要な働きを示すことになる。

【建造の経緯】

 1970年代の後半、東部連合は合衆国に対抗する上で二つの重要な柱としてきた陸軍の強化と、ドイツのトート機関と協力した北米分割要塞線(カエサル・ライン)の建設をほぼ完了していた。
 これと共に、次の目標となったのが、海軍の近代化である。東部連合海軍は〈ミッドウェイ〉級空母改良型2隻を中核とする、東側としては有力な海軍力を保持していたが、自由主義陣営有数の国力を持つにいたった80年代以降の合衆国は海軍の大規模な拡張を開始しており、東部連合は劣勢に立たされていた。
 また、前述の大陸軍とカエサル・ラインの維持費も軍事予算を圧迫しており、東部連合海軍は少ない予算で大きな兵力をいかに調達するかを問われることになった。
 ここで登場したのが、小数の通常艦艇に付き従って戦闘を行う無人艦の構想である。
 甲板上を武装で埋め尽くし、他の有力艦から情報を受け取って戦闘を行う無人艦は、維持コストも安く、戦力の効率的利用としては最適の選択であると考えられた。
 その後、艦の機能を維持するための最低限の人員が50人ほど必要と分かったものの、従来の4〜5分の1の人員で運用可能なこうした艦種の魅力はやはり捨てがたく、1985年に東部連合海軍は本格的に省力化艦の建造に乗り出した。
 建造が決定したのは、いくつかの設計案のうち、固有の砲填兵器は近接防空システムにとどめ、主兵装をミサイルに特化した案である。この案では、省力化艦は固有の戦闘システムを持たず、他の艦のシステムのコントロール下に入って戦闘に参加する。
 汎用艦艇の大型化が著しい中で、7.000トンと言う比較的小ぶりな船体に小さな艦橋だけを持ち、甲板上をVLSで埋め尽くしたこの案は、200発を超える各種ミサイルを運用可能だった。特に対空ミサイルを使用する場合、艦隊に鉄壁の防御を与えてくれる事が期待され、東部連合海軍はこれを「武器庫艦」と言う新艦種に指定。直ちに建造を開始した。

【意思】

 一番艦〈ミレニアム〉が就役したのは1993年である。本来はもう少し早く建造が終了していたのだが、これが遅れたのには幾つかの理由があった。
 武器庫艦は複雑な電子戦闘システムを備える通常艦の従属ユニットとして運用されるわけだが、これに一部の海軍軍人から反対意見が出た。万が一、通常艦艇が先に沈没した場合は武器庫艦が無力な存在になってしまうからである。おまけに、武器庫艦自身の固有武装はわずか2基の30ミリガトリングCIWSのみ、となれば、いざと言う時に自分自身の身を護ることもおぼつかない。
 そして、最大の理由はそんな自分では何も決定できない艦の乗組員になるのは屈辱以外の何者でもない、と言う感情論であった。
 そのため、完成前に若干の修正が行われ、対艦ミサイルの発射機を追加。その運用システムだけは武器庫艦固有の武装システムに組み込まれたのである。しかし、それでも不満が残ったため、東部連合政府と海軍では、武器庫艦の主要士官は全て思想堅固であり、現状に不満を抱かない性格の人間を選ぶことにしたのである。後に「武器庫艦三原則」と言われた3つの条項、すなわち―
 「武器庫艦はコントロール艦に逆らってはならない」
 「武器庫艦はコントロール艦を守らなくてはならない」
 「武器庫艦は上記二つに反しない範囲で自分の身を守らなくてはならない」
を遵守できるものが武器庫艦の艦長となったのであった。
  これで問題は解決したかに見えたが、自分の意思を持ちながら、しかし有事にはほぼ常に他者の意思に従って行動する武器庫艦の乗員と言う立場は、意外なほどのストレスを彼らに強いることになり、やがてこれは大きな問題と化すようになる。
 しかしながら、就役した武器庫艦の戦力は満足のいくものであった。シュミレーションも、搭載されている大量の対空ミサイルにより、戦闘時には100発以上の対艦ミサイル飽和攻撃が行われる状況下でも艦隊は無傷であり、まるで彼女の周りには見えない壁が出来ているかのようだった。
 このため、技術、予算面から枢軸軍のような統合防空(アイギスの盾=イージス)システム艦を大量配備できない欧州連合においても注目される存在となっている。

【疑問】

 〈ミレニアム〉艦長は戦災孤児で、親の顔を知らず、国の施設で成長した。この施設は、将来的に東部連合を背負って立つエリートを育成しようと言う教育施設も兼ねており、彼はその第一号の入所者である。厳しい教育と訓練で鍛え上げられた彼はアナポリスの海軍兵学校に進み、優秀な成績でこれを卒業した。
 彼が任官した当時の大西洋はまさに「世界の縮図」とでも言うべき混沌とした世界であった。両岸を欧州連合参加国に挟まれた北大西洋。その中に浮ぶ幾つかの島々…ブリテン島、アイスランドは枢軸側。そして、枢軸、連合どちらにも与しない第三勢力として発展するスペインとその同盟国家群。
 こうした難しい舵取りを強いられる海で、彼は海軍軍人として非の打ち所のない成績を収め、提督の座に就く前の最後の任務として最新鋭艦である〈ミレニアム〉を預けられたのである。
 彼女は武器庫艦の中でも一番艦と言う事から最も運用実績もあり、所属している任務群では一目おかれる存在でもあった。他の武器庫艦が三原則に縛られた軍艦らしくない艦で、味方からは半端な存在と一段低い存在に置かれていたのとは対照的である。
 また、〈ミレニアム〉は見方を守るための盾となる対空ミサイルだけでなく、対地巡航ミサイル8発が搭載され、戦略的攻撃能力を行使することもできた。もっとも、そのミサイルは特別なコードを打ち込まなければ使用できなかったのだが。
 最新の艦を預けられ、海軍軍人としては前途揚々に見える〈ミレニアム〉艦長であったが、海軍軍人として海外に赴く任務も多く、「外」の世界と頻繁に接触する彼は、母国の現状と比較して、その違いに驚いていた。
 東部連合自体は欧州連合参加国の中では物価も安く、土地も広い為に、各地から移民が流入していたが、その為には政府に個人データをすべて預けねばならなかった。それらは連合情報局(CIA)の手で管理され、国民の自由を厳しく制限していた。
 また、東部連合内でチャンスをつかもうとすれば、独裁者であるニクソンとその一派に擦り寄らねばならず、移民は特に政治に参加する権利は殆どないも同然の状態だったのである。ニクソン政権は良くドイツのハイドリヒ政権と比較されるが、少なくとも、ハイドリヒとその側近は国家を私物化してはいなかった。
 この国はこれで良いのだろうか。疑問に捕らわれた〈ミレニアム〉艦長は密かに衛星チューナー付きのテレビを購入し、「外」の世界を視聴するようになった。

【スパイマスター】

 そうした日々の中、〈ミレニアム〉艦長はインターネットにも接続するようになっていた。チャットでは艦名をハンドルネームとして「ミリィ」と名乗り、「アキ」、「マサト」と名乗る友人達と会話をしていた。ハンドルネームからして、「アキ」、「マサト」の二人は東部連合からみれば「西の分断主義者を後援する悪の権化」である日本人のような気もしたが、ネットの世界に国籍はない。
 そして、ある日、いつものチャット上で、彼は〈クロイツ〉と名乗る人物と接触する。
〈ミレニアム〉艦長は驚愕した。〈クロイツ〉はその正体は東部連合上層部の誰かである事だけは分かっていると言う伝説的な大物で、例えネットワーク上であっても滅多にその姿を現す事はない。
 その伝説の人物の遭遇したことで緊張する〈ミレニアム〉艦長に〈クロイツ〉」は告げた。「この国は危険な方向へ向かっている」と。
 事実、もともと強圧的な内政策を採ってきた東部連合…ニクソン政権は、ニクソンの死期が近いという政治的事情の前で揺れ動いていた。治安は悪化し、「ニクソン後」の主導権を争う実務官僚派と軍部の間ではCIAを用いた奇怪なゲームが続いている。〈クロイツ〉はこうした事態を憂いている事を語り、次のように質問した。
「この国は、もはや存在するべきではない。私に代わってこの国を倒して欲しい。私はもう、自力でこの国を倒すには縛られ過ぎているのだ」
〈ミレニアム〉艦長は答えなかった。大きな問題を抱えているとはいえ、東部連合は彼の愛する祖国だった。東部連合海軍は、彼がその人生を捧げて発展に尽くしてきた組織だった。それを消滅させることの決断など、容易にできる物ではない。第一、一介の軍人に過ぎない自分に何ができるだろうか?
「もちろん、すぐに答えを出せとは言わない。だが、よく考えておいてくれ」
〈クロイツ〉からの最初の連絡はそれで切れた。チャットに沈黙が落ちる。〈ミレニアム〉艦長はもちろん、「アキ」、「マサト」の二人も、無言だった。

【崩壊】

 1995年、第4次世界大戦が勃発した。東側陣営の西側への奇襲によって始まったこの大戦は当初対艦ミサイルの大量使用に踏み切った東側が、メキシコ湾に展開中の日本海軍機動部隊大損害を与えた事で優位に立った。しかし、枢軸側の反攻が始まると、次第に戦局の流れは逆転していった。
 そして、第二次ニューヨーク沖海戦では、航空機で決着が付かなかった事から、およそ40年ぶりに水上打撃艦艇による艦隊決戦が開始された。この時、優位を確信していたのは連合軍だった。彼らの手元には4隻の武器庫艦があり、理論上食い止められる対艦ミサイルの数は1000発を超えていた。枢軸艦隊の保有する対艦ミサイルは300発。まず、確実に被害を食い止められる計算である。
 しかし、彼らの計算に入っていなかったのは、彼我のミサイル技術、及びそれを迎撃する技術の格差であった。複雑な迎撃回避軌道をとりながら突入してくる枢軸軍ミサイルは、全機撃墜されるどころか、40発以上が迎撃網を食い破って連合軍艦艇に命中した。
 この戦闘で、連合軍艦隊は〈木下《シャルンホルスト》留美〉沈没を筆頭に全艦艇の4割が損害を受ける大打撃を受け、事実上壊滅。武器庫艦も〈ミレニアム〉をのぞく3隻が撃沈された。
 逆に欧州連合艦隊のミサイルも、枢軸軍に配備されていた防護巡洋艦の迎撃によって多くが撃墜されつつも、敵艦隊に突入。大損害を与えた。航空戦でもミサイル戦でも決着が付かなかった事で、なんとベルファスト沖海戦以降、もはや生起することは有り得ないと考えられていた戦艦同士の砲撃戦まで行われている。
 そうした中で、〈ミレニアム〉艦長は〈クロイツ〉からの情報により、戦争がGETTO陣営が望んで始まった事を知った。経済的破滅を避けるため、彼の仕えるべき人々は戦争を望んだのである。そして、東部連合による西側市民の度重なる拉致、情報制限による国民統制の強化…〈ミリィ艦長〉は自国に対する忠誠心を失った自分を見出した。
「人間の心を知らない今の政府に…理想の国家など建設できるはずが無い!!」
 そう叫んだ彼は、東部連合への反逆を決断した。対地巡航ミサイルの発射システムを起動し、パスワードを打ち込む。それは〈クロイツ〉の情報によってもたらされた対地ミサイルに打ち込まれたタブー…自国領内への攻撃を禁止する条項の解除パスワードだった。
「天に星、地に花、人に愛!」
 タブーは解除され、〈ミレニアム〉から8発の巡航ミサイルが放たれる。それは東部連合の虚栄の象徴…ボストンにある89階建ての大統領府ビルをターゲットにしていた。数十分後、ミサイルは全弾が大統領府に命中。ビルを粉微塵に粉砕し去った。
 これにより、ニクソン大統領は大統領府ビルごと爆死。副大統領だったビル・クリントンが急遽新大統領の座に就いた。彼が最初にしたことは、大西洋の制海権喪失や国内の動揺によって急速に戦争継続の意思を失いつつあったドイツと連携し、休戦への道を探ることだった。

【その後】

 数週間後、休戦成立と共に東部連合の従来の体制は崩壊した。クリントン大統領は自身と現政府主要閣僚の総辞職を表明し、代わって国務長官だったアル・ゴアを新大統領とした合衆国との協調と統一を目指す開明的な新政権が発足する。
 もっとも、彼は頑迷な合衆国のブッシュ大統領と対立し、結局統一路線を撤回してしまう。こうして、アメリカの分裂はまだ続くことになったのだが、この時、武器庫艦〈ミレニアム〉は東部連合という「世界」の住人ではなかった。
 ボストンを巡航ミサイルで攻撃した後、〈ミレニアム〉は合衆国軍に投降し、乗組員ごと亡命していたのである。これを助けたのは、〈クロイツ〉ことエドワード・ケネディ・ジュニア東部連合海軍作戦部長だった。合衆国側で海軍長官を務めている一族のアルバート・ケネディと連絡を取り、〈ミレニアム〉亡命の伝手を作っていたのである。また、〈ミレニアム〉艦長とネット上で知り合った〈アキ〉こと空母〈芦原《ウェンデル・L・ウィルキー》洋一〉艦長や〈マサト〉こと弾道ミサイル原潜〈羽根井《コロラド》優希〉艦長らもその亡命に尽力していた。
 戦後、〈ミレニアム〉は合衆国海軍に編入されたが、兵装の規格の違いなどから戦闘任務には就かず、海軍の広報を目的とした特務艦となった。その平坦な上甲板は一種のイベントステージとして使われ、海軍記念日のホストシップを務めるなど、長く国民に親しまれた。

【要目】

基準排水量 7.089トン
満載排水量 8.122トン
全長    178.2メートル
全幅    18.2メートル
速力    30.4ノット

兵装
30丱トリングガン  2基
VLS         216セル
※ 通常編成では対空ミサイル188、ロケット滑空魚雷12、対艦ミサイル16を搭載する。
〈ミレニアム〉では対空ミサイルを180発に減らし、対地巡航ミサイル8発を追加している。