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〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉

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ノースアメリカンF-107<ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ>

元ネタ:Ripe「ペンシラー☆カナ」/ペンシラー・カナ)

【概要】

 合衆国空軍初のマッハ2級戦闘機。初の超音速戦闘機であるF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉から発展した機体で、当初はF-100Bの番号がつけられていたが、改修の過程で施された事実上新造と言うべき徹底的なリファインにより、全くの別機として生まれ変わった。同時に番号もF-107に変更されている。
 その高速性能と、ラフなドッグ・ファイトから地上の陰影をぬっての爆撃任務までを器用にこなす空戦性能は、多くのパイロットを魅了し、P-51<ムスタング>からF-15〈深海《イーグル》美緒〉へと続くノースアメリカン社製戦闘機の系譜に輝かしい足跡を残したのである。

 

【開発の経緯】

 第三次世界大戦中、合衆国空軍は主力戦闘機をF-86〈上小園《セイバー》繭〉とそのマイナーバージョンアップで乗り切った。これはF-86の優秀性を示すものでもあったが、同時に4年に及ぶ大戦はその限界を露呈させてもいた。
 既に、海外ではフランスがダッソー<シュペル・ミステール>で超音速飛行を達成しており、世界の趨勢は超音速戦闘機に向かいつつある。合衆国空軍でもこの流れに乗り遅れないため、超音速戦闘機の開発に乗り出した。
 まず、ノースアメリカン社ではF-86の主翼を流用し、胴体を再設計したF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉を開発した。これはまずまずの性能を示し、空軍も採用したが、ここで問題が起きた。
海軍が開発した新型のセミアクティブ・レーダー・ホーミングミサイル、XAAM-7(後のAIM-7<モナモナ“スパロー”グレー・カプチ>の射撃実験で、XAAM-7が訓練中のF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉を直撃。「撃墜」してしまったのである。
XAAM-7自体は本来の標的機を撃墜判定していただけに、これを回避できなかったF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉の方が性能に問題があるのでは、とされたのも無理は無かった。この影響で、海軍向けに提案していた準同型機のFJ-6〈麻生《スーパーフューリー》鼎〉はマクダネルのF3D〈犬柳《デモン》くらげ〉に敗れて不採用に終わってしまう。
 しかも、リパブリックがF-102〈佐藤《デルタダガー》ぷりん〉に始まるデルタ・シリーズを投入して猛烈な追い上げを掛けてくるに至り、危機感を抱いたノースアメリカンはより強力な戦闘機の開発に社運を賭けて取り組む事になった。
 それはF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉原型と言いながら、もはやその面影はどこにも残らないほどのものとなった。太い葉巻型の胴体は、エリアルールを取り入れてシェイプアップされ、エア・インテイクも機首から胴体下面へと移動した。これによって機首は細長く整形され、強力なレーダーも搭載されている。
 この時点ではノースアメリカン社内でF-100Bと呼ばれていた同機だが、モックアップをはじめて視察した空軍の将官は
「これのどこがF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉なんだ?新しい名前を考えねばならん」
 と言い、その場でF-107〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉に変更されてしまった。

【評価】

 モックアップ試験を通過した<ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ>は1957年に試作一号機が完成。早速テスト飛行が開始された。
 その結果は目覚しいものだった。初の全速飛行試験において、<ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ>はなんと最大時速マッハ2.2を記録したのである。これはUSA(ユナイテッド・スペース・アンド・エアロテック)が高速迎撃戦闘機として開発中のF-104〈雨月《スターファイター》めろん〉の計画速度(マッハ2.3)に迫る快挙であり、関係者を驚喜させた。
 テストはさらに進み、ミサイルの発射や爆撃試験などを経て、空海軍のその他の戦闘機との模擬戦闘へとスケジュールは進行していった。
 ここで、〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉はその意外な弱点を明らかにした。搭載しているレーダーが、かなり広い範囲に死角を持っていたのである。最初はF-100〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉からの発展型と言う事で「かわいいもんだ」と思っていたF3D〈犬柳《デモン》くらげ〉や F-102〈佐藤《デルタダート》ぷりん〉をきりきり舞いさせていた〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉だったが、バックを取られるとあっさり撃破されてしまう事が多かった。
 特に、機動性能に勝るF3D〈犬柳《デモン》くらげ〉は逃げ足で遥かに勝るはずの〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉に対し、あっさりとバックを取ってたびたび「撃墜」している。
 このため、海軍型を売り込もうと言うノースアメリカンの目論見はまたしても外れることになったが、空軍は総合性能で〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉が〈佐藤《デルタダート》ぷりん〉に勝る事を認め、正式採用を決定。ここに、P-51<ムスタング>より続くノースアメリカン製の制空戦闘機の系譜は新たなページを綴る事になったのであった。
 なお、当時は彼女に特有のものだった機体下面にエア・インテイクを設けるというデザインは、彼女の魔法とも思える成功を見て多くの機体に引き継がれ、後継機であるノースアメリカンF-15〈深海《イーグル》未緒〉やF-16〈御陵《ファイティング・ファルコン》明里〉、F-32〈藍澤《シュライクN》真穂〉などに見られる合衆国航空機の一大特徴となっている。

【奇妙な出会い】

 1958年、<ペンシラー“アドヴァンスド・セイバー”カナ>の初の実戦部隊が編成された。配備先は現在合衆国最大の防衛目標となっているメキシコ湾岸油田地帯に近い地域で、ガルヴェストンに配備されている海軍のカリブ海艦隊とも共同作戦を取りやすい位置だった。この危地には主に戦闘爆撃機として配備が開始されている〈佐藤《デルタアロー》ぷりん〉や海軍の〈犬柳《デモン》くらげ〉と言った当時の最新鋭機が続々と飛来し、〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉も北米防空計画の原画を描く役目として大いに期待された。
 <ペンシラー“アドヴァンスド・セイバー”カナ>の主な任務は北米分割線付近における哨戒飛行である。担当空域はアルファからデルタまで4つあり、一回ごとに空域をスライドさせて警戒にあたるのが基本のローテーションだった。
そうした哨戒飛行の最中、〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉は見慣れぬ機体と遭遇する。機首下面にインテイクを持つ高翼式の洗練された機体。東部連合海空軍が主力戦闘機として採用している最新鋭機、チャンス・ヴォートF8〈佐原《クルセイダー》みるく〉であった。詳しい諸元は判明していないが、海軍のみならず空軍も採用し、さらにあの自国生産品第一主義では人後に落ちないフランス海軍が同機を採用したところから見ても、極めて高性能の機体であること確実視されていた。
両者はミシシッピー川に沿って東西に幅15キロのDMZ(非武装地帯)に平行して飛んだ。第三次世界大戦の終結よりまだ6年。死力を尽くして戦った生々しい記憶が昇華されていないとは言い切れなかったが、それでもまだ東西の間に同朋意識は残っていた。
 パトロール飛行の度、両軍のパイロットたちは無線が使えないので翼端灯などを用いてモールス信号を送ったり、手信号を送ったりして束の間の交歓を果たした。共に飛ぶ時間は短く、あまり大した話は出来ない。せいぜいが世間話のレベルであったが、この奇妙な関係はしばらくの間続く事になるのである。
基地でも、なかなかに騒がしい日々は続いていた。〈犬柳《デモン》くらげ〉は相変わらずバックを取ってのセクハラのようないやらしい攻撃で〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉を悩ませていたし、〈佐藤《デルタアロー》ぷりん〉のパイロットたちは〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉の銀色の熱線反射塗装を見て「もっと可愛い服を着せましょうね」とばかりに派手に塗装、しかも滑走路に引き出して晒し者にすると言うような事をしでかしていた。
 〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉も常に弱かったわけではなく、テスト飛行中の〈雨月《スターファイター》めろん〉と出会っては、マッハ2以上で飛行する際の注意点をアドバイスしたりもしている。

 

【F-8U亡命事件】

 就役からしばらくして後、とてつもない大事件が勃発することになった。1957年の9月、何時ものようにパトロールに出た〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉隊は、一機の〈佐原《クルセイダー〉みるく〉がDMZ内を飛行しているのを発見した。もちろん、完全な休戦協定違反である。警告しようと思った矢先に、その〈佐原《クルセイダー》みるく〉が翼端灯を明滅させて送ったメッセージに、パイロット達は仰天する。
「ワレ、亡命ヲ希望ス」
これにはさすがの合衆国空軍司令部も蜂の巣をつついたような大騒ぎとなった。何しろ、当時の国家社会主義陣営では最新鋭の戦闘機である。調査すればどれほどの利益が得られるかわからない。まさに宝の山である。
 その一方で、これが下手をすれば戦争の火種になりかねないことも彼らは理解していた。新型機をむざむざ敵の手に渡すくらいなら、自らの手で破壊する。東部連合がそう宣言して攻撃隊を送ってくるかもしれない。合衆国は当然それを迎撃せねばならないだろう。そうなれば完全に戦争だ。
 政府上層部が苦慮と焦燥の色を深める中、前線基地には〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉隊が大挙進出。24時間基地に詰める「缶詰め」状態で亡命してきた〈佐原《クルセイダー》みるく〉を守っていた。
 そして、空軍は〈佐原《クルセイダー》みるく〉を帰すかどうかという問題を超えて、どうあっても彼女のことをもっと良く知る決意を固めていた。徹底的な分解・組み立てを決めたのである。最も優秀なスタッフとして〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉の開発チームが送られ、機体の隅から隅まで調べ尽くす調査が始まった。どこが長所なのか、どこを責めれば弱いのか、どんな戦法を使ってくるのか…調査は一週間に及んだ。
 その間、前線付近では既に小競り合いが始まっていた。東部連合が送ってきたのは、グラマンがメッサーシュミットMe1101を参考に開発した可変翼機、F10F<佐原“ジャガー”兄>。性能は良いが、整備にも操縦者にも相応の腕が求められ、東部連合随一のエリート達が乗る部隊にのみ配備されている機体である。
 〈佐原《クルセイダー》みるく〉は俺のモノだ、と言わんばかりの強引な〈佐原《ジャガー》兄〉の挑発行動にも、〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉隊は自重して乗らなかったが、亡命8日目、遂に東部連合軍が動いた。〈佐原《ジャガー》兄〉がいつもの示威行動と見せかけて〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉隊に突入したのである。
 一部は突破して〈佐原《クルセイダー》みるく〉への攻撃に向かい、別の一部は〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉との交戦を開始した。さすがにエリート部隊だけあり、その攻撃は執拗かついやらしかった。徹底して背面を取ってくる〈佐原《ジャガー》兄〉によって部隊は完全にその場に釘付けにされてしまい、基地攻撃を阻止することはできなかった。〈佐原《ジャガー》兄〉は抱えてきたナイフのように鋭い爆弾を投下し、一目散に逃走した。
 〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉が帰ってきたとき、そこには惨劇が待っていた。爆撃により、〈佐原《クルセイダー》みるく〉は下腹部を抉られ、完全に各坐していたのである。オイルが血のように流れ出し、彼女を救うことは不可能に見えた。

【奇蹟の魔法】

 しかし、奇蹟は起きた。いや、それは必然だったのだろうか。既に〈佐原《クルセイダー》みるく〉の事を知り尽くしていた技術陣は、まるで魔法のように代わりの部品を作り出し、元と寸分変わらぬ状態への修復を成功させたのである。
 そして、合衆国政府も決断を下した。機体は手放し、東部連合へ返却する。しかし、パイロットは亡命を認める。
 それらの一連の行動は、合衆国は東部連合が隠そうとした戦闘機に関する機密を、完全に握ったと言う事を示すものだった。失敗を悟った東部連合はこれに応じ、修復された〈佐原《クルセイダー》みるく〉を引き取った。
 数日後、パトロールに出た〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉は、DMZの向こうを飛ぶ〈佐原《クルセイダー》みるく〉を見た。ためしにしばらく並行して飛んでみたが、向こうは何の反応も示さなかった。事件のために合衆国と東部連合の関係は著しく悪化し、もはや前のように友情を確かめ合う事はできないのだ。しかし、それもしょうがない事か、と〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉の隊長は考えた。自分達には、それなりに友情を確かめた思い出がある。それさえあれば、何時かは…例え時代は移り変わっても、必ず統一の日がくるはずだ、と。

【その後】

 1970年代まで主力の座にあった〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉は、後継機F-16〈御陵《ファイティング・ファルコン》明里〉、F-15〈深海《イーグル》未緒〉らの登場によって退役が開始された。最後の一機が退役したのは1982年のことである。その後継機たちを見れば、エア・インテイクを機体下面に配置し、中翼・単垂直尾翼を持つと言った機体構成は、〈ペンシラー《アドヴァンスド・セイバー》カナ〉のラインを引き継いでいる事が容易に理解できるはずである。
彼女こそ合衆国における近代的戦闘機の祖であり、前身である〈麻生《スーパーセイバー》鼎〉がAIM-7<モナモナ“スパロー”グレー・カプチ>と激突した事は、合衆国の航空産業に幸運をもたらした運命的な出来事だったと言えるだろう。

【要目】

全長:18.84m
全幅:11.15m
全高:5.99m
自重:10.295kg
全備重量:18.840kg
エンジン:GE−J92−GE−9A(11.637kg)
最大速度:マッハ2.2
武装: 20ミリ機関砲×4
AAM 最大4発
最大搭載量:2.700kg