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〈シエル〉

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フランス民主共和国陸軍主力戦車〈シエル〉

TYPE−MOON「月姫」シエル

 二つのフランスの一方、フランス民主共和国(パリ政権)の新世代主力戦車であり、世界各国に輸出され、地域紛争において出番の多い戦車として知られる。一見すると和み系の外観の戦車ではあるが、フランス戦車だからと油断すると強烈な「バッド・エンド」を食らう羽目に陥る、高い戦闘能力を持つ戦車である。とはいえ、「究極の戦車」を作り出すべく戦車に技術の粋をそそぎ込んだドイツ、「破壊の魔法使い」を送り出した日本、戦車の発明国であることを誇る英連邦らの主力戦車群に比して今一つ地味な存在であることは否めない。
 〈シエル〉の開発はドイツとの共同開発計画「ナポレオン」が決裂した後に始まった。パリ15区の南郊にあるイシ・レ・ムリノー工廠が1985年までに原案をまとめている。計画名称は「空の弓」。
 数台の試作の後、生産仕様がまとまり、生産試作1号車〈エレイシア〉が発表された(注1)。〈エレイシア〉は極秘にロシアの王冠派に送られ、現地でドイツ装甲部隊を相手に徹底的な試験を受けている。ロシアでの試験終了後はイタリアに送られ、今度は〈ナルバレック〉が試験の相手をしている。そのため、本格量産までに多くのマイナー・チェンジがなされている。
 〈シエル〉の仮想敵は、第一の敵として、「宿命のライバル」にしてフランスがその勢力の封印を願って止まないドイツの主力戦車が挙げられ、第二にロシア戦車を敵としている。国力に差があるためドイツへの雪辱は機会あらばということで棚上げし、ロシアに対してはウラル戦線でフランス軍MBTのAMX−30が蛇派のロシア戦車に浸食破壊された恥辱をそそごうとしているのである。なお、浸食されて死都と化したフランス軍陣地ごと、〈アルクェイド《ティーゲル検侫屮螢絅鵐好織奪鼻啻備のドイツ軍が蛇派軍を一掃しており、フランスのドイツへの敵愾心をより煽る結果となっている(注2)。第三の仮想敵は、イタリアの〈ナルバレック〉である。試験や訓練の名目で〈シエル〉を散々にもてあそんだことを恨んでいるらしい。
 本車の命名にあたっては、多少の逸話がある。新型戦車の名称は「空の弓」計画からとって〈ラルク(弓)〉となるはずだったのだが、大統領フランソワ・ミッテランが勘違いして〈シエル(空)〉と発表してしまったのである。大騒ぎになったものの一旦公表したものを今更取り消す訳にはいかず、そのまま〈シエル〉で押し通す事になった。

 〈シエル〉には火力、防御力、機動力、データ処理の各面にわたっての各面にわたって多くの新機軸が盛り込まれている。
 主砲は大欧州条約機構のスタンダードである128ミリ滑腔砲であるが、ラインメタル・ボルジヒ製ではなくGIAT製の60口径滑腔砲である。ドイツ、イタリアとの弾薬の共同作戦性はあり、同じ弾薬を使用可能である。しかしラインメタルの55口径砲よりも長い砲身を採用していることから、同じ弾薬を用いても初速が早く、最大で1850m/sに達する。砲身の途中に排煙器をつけず、圧搾空気を吹き込んで排煙する、AMX−30以来の方式を継承している。
 また、ベルトマガジン方式の自動装填装置(22発収容)を採用しており、3発バースト射撃は言うに及ばず、マシンガンのような連続射撃が可能で、最大15発/分になる。「セブン・トリガー」の異名は伊達ではないのだが、これでも〈アルクェイド《ティーゲル后侫屮螢絅鵐好織奪鼻の楔形正面装甲を貫くことはかなわない。ドイツ戦車の強固な防御力は劣化ウラン製APFSDS「黒鍵」ですらも貫通を許さないのである。
 フランクフルト・アム・マイン郊外パルクスハイム演習場での独仏合同演習において、情報交換の筈がいつの間にか口論となり、果ては実弾を交わし合う実戦にまで発展した事件があったが、〈シエル〉は一台の〈アルクェイド《ティーゲル后侫屮螢絅鵐好織奪鼻をも完全撃破できなかった。もっともマシンガンのごとき集中射撃を食らって横転してしまった車両はあったのだが。
 ドイツ側もやられてばかりではなく、フリッカージャブを放つ〈シエル〉に対して、ウィービングによる回避からデンプシーロールに入り、大威力の一撃を放っている。判定はクロスカウンターのダブル・ノックダウンだった。
 この事件は本来ならば国家間の紛争にもなるほどの事件であったが、当事者同士が「単なる挨拶」と口を合わせているため表沙汰とならなかった。恐ろしい「挨拶」ではある。
 ドイツ主力戦車の恐るべき防御能力を知ったフランスは、イタリアと協同して対化け物装備として「黒い銃身」こと電熱化学砲〈ロンギヌス〉の開発に邁進した。それはロシアの統一を目指す片刃派の主力戦車の主砲となるばかりでなく、宇宙戦艦の艦首軸線砲の原型ともなり、地球への衝突軌道に乗った小惑星アリストテレスを迎撃する作戦(注3)や、接触戦争で異星人ヲルラの艦艇に対して火を噴くことになる。
 「黒い銃身」以外にも、フランスは現今では最強の概念武装として「第七聖典」を開発している。多重複合弾頭の戦車砲弾である「第七聖典」は、「冗談か」と言われるほど長大な杭のような形をしており、爆発反応装甲を多用するロシア戦車に効果を発揮した。極めつけに堅い〈アルクェイド《ティーゲル后侫屮螢絅鵐好織奪鼻には効力を発揮しなかったが、対装甲車両のみならず歩兵陣地にも絶大な効果があり、英軍の高性能粘着榴弾のような使い方をされている。あくまでも対戦車用として開発したGIATの技術陣は、前線での想定外の使い方に随分とひねくれたらしい。
 防御面では独創的なアイデアが盛り込まれ、〈シエル〉が「不死身の戦車」と謳われる主因となっている。従来の戦車では装甲が主要構造を兼ねているが、〈シエル〉は装甲と構造が分離しており、基本構造の上にモジュラー式の複合多層装甲を取り付けた形になっている。〈シエル〉はこの構造により、戦闘で損傷を受けても損傷部分の装甲を取り替えるだけで簡単に戦線に復帰できるのである。
 セールス・トークは「世界が〈シエル〉を死なせない」というもので、死んだと思っても見る間に蘇生するとか、矛盾を内包するために「世界は〈シエル〉を死なせない」とか、過剰に思われるほどのトークでもってその防御力が宣伝されている。
 もっとも、英連邦軍が好んで用いる高性能粘着榴弾に対してはいささか分が悪い。被弾により基本構造と取り付け部を歪められてしまうからで、そうなっては新たなモジュラー式装甲を装着することはできず戦線復帰は難しい。つまり高性能粘着榴弾は〈シエル〉にとって即死効果があるのである。インド陸軍の採用試験で発覚した事実であった。なお、粘着榴弾は識別用に黄色く塗装されており、「カレーパン」なる愛称を奉られている。
 〈シエル〉のエンジンは、SACM社のSAVMV8X液冷シュラルモ・ハイパーバー・ディーゼルである。それはV型8気筒のコンパクトなエンジンと小型ガスタービン機関とを組み合わせたもので、小型小排気量ながらも1500hpの大出力を発揮し、〈アルクェイド《ティーゲル后侫屮螢絅鵐好織奪鼻を上回る加速力を実現している。
 もっとも、V8Xはハイ・チューン故に経済的ではなく燃料消費率はいささか高めというか、かなりの「大食い」となっており、「無限の胃袋」と補給担当から呆れられている。さらに複雑かつコンパクトに凝縮されているために前線での整備が難しいという問題も指摘されている。ためにインドとアブダビへの輸出型ではドイツのMTU社(マイバッハ社がダイムラー・ベンツに買収されて改名した)のMB833ディーゼル・エンジンへと換装しなければならなかった。そのため、若干大きなエンジンを収容するために車体後部が延長されており、「でか尻」と形容されている。
 データ処理の面では世界最高級の「魔術回路」を有しており、RAMとROM合わせて1000MBの大容量を誇る。日本の〈蒼崎《四八式中戦車》青子〉もまた同程度の容量であり、1980年代という開発時期を考慮すれば破格の大容量といえる。
 〈シエル〉の「魔術回路」は設計当初からの構想としてデータ・リンク機能を持っていた。自身の現在位置、弾薬や燃料の残量、目標の位置などの情報をデジタル送信するもので、これに対応して連隊司令部には連隊情報システムが備えられている。これにより、〈シエル〉の集団が連隊規模で情報を共有し、共通の地図上で組織だった戦闘を遂行できるのである。いうなれば敵の周囲に巨大な結界を張り、その中において戦闘するようなものである。
 さらに中隊長以上の車両に限っての機能として配下の車両(5台程度)を遠隔操作することができる。「ネクロマンシー」と呼ばれる機能ではあるが、ドイツ軍にはからかわれ、自軍将兵には拗ねられたりと、不評を買っている。
 サスペンションはフランスお得意のハイドロニューマティック方式で、シトロエンDS以来の優れた乗り心地を実現している。もっとも転輪ごとに独立してあるとはいえ、その複雑な配管は技術に凝る日本人やドイツ人をして「何を考えているのか、よくわからない」と言わしめた。

 〈シエル〉は1990年から量産が開始され、フランス本国とケベックに配備されて、その数量は1400両に上る。輸出型を初めて採用したのはインド陸軍であり、その際にエンジンをドイツ製に換え、主砲は英連邦軍と共通の127ミリ・ライフル砲に換装している。俗に言う〈シエルインド〉である。インドの次に〈シエル〉を採用したのはアラブ首長国連邦のアブダビ陸軍である。アブダビからは486両(MBTが388両、訓練車が2両、装甲回収車が46両)の発注がなされている。
 1995年から翌年にかけて戦われた第4次世界大戦において、〈シエル〉は北米のオンタリオ戦線と、ユーラシアのウラル戦線で活躍をみせた。
 オンタリオ戦線での相手は英連邦軍の〈遠野《チャレンジャー2》秋葉〉である。それは「竜虎相打つ」とも「獅子と大蛇の戦い」とも呼ばれる超絶的な戦いとなった。〈シエル〉〈遠野《チャレンジャー2》秋葉〉の放つ高性能粘着榴弾に対して分が悪かったものの、優れた機動力と不死身ぶりを発揮してモントリオールへの突破を阻むことに成功している。「視線の及ぶ範囲のものを燃やし尽くす」〈遠野《チャレンジャー2》秋葉〉には一対一では必ずしも勝利できなかったが、何度倒されても戦線への復帰を果たす〈シエル〉のしぶとさと、「イカサマ遣い」と敵に罵られる程のフランス軍の欺騙行動に英軍は音を上げたのだった。
 ウラル戦線においては、ロシアの混沌派と蛇派の共闘の前に苦戦を強いられた〈アルクェイド《ティーゲル后侫屮螢絅鵐好織奪鼻部隊を図らずも援護する形となり、おいしいところをさらったと言われている(注4)。
 地味だの脇役っぽいだのと言われながらも、〈シエル〉は世界各地における紛争での出番が多い。フランス連邦共和国(アルジェ政権)との競争が原因ではあるが、フランス民主共和国が国際連盟(LN)の平和維持活動に多く参加しているからである。
 〈シエル〉は平和維持の教師役として勝手気ままに暴れる生徒(ゲリラ)と戦いつつ、今も多くの迷える子羊を導いている。


注1:工廠近くにある、フランス人の亭主(来日経験あり)とヴェトナム系の細君とで経営しているパン屋の一人娘の名前からとられたとのことである。彼女は立派なパティシェを目指していたはずだったが、両親ともども行方不明となった。同じ頃、パン屋のある街区一帯もまた無人となっており、アルジェ政権のエージェントの一掃を図った対外治安総局DGSEの仕業ではないかと噂されている。
注2:フランスはナチス・ドイツの暴虐を言い立てているが、かつてのフランスもまたリシュリュー枢機卿による三十年戦争への介入、皇帝ナポレオン・ボナパルトによるドイツ侵略など「悪行」をなしている。特にナポレオンの侵略は神聖ローマ帝国の手足を分断し、賠償金の支払いに苦しむ諸邦を眺めて、その嘆願を無視し、血の貯水庫に鉄の塊でできた蓋を落として押しつぶすようなもので、フランスこそドイツにとっては「黒い悪魔」だった。つまるところ第一帝政は流血と淫欲に満ちた栄光ある「悪の時代」にして、民主主義から独裁者が生まれるという、拭いがたい「忌まわしい記憶」でもあるのだ。
注3:小惑星アリストテレスは火星軌道を通過する頃に8個に分離している。それらには地球を除いた八つの惑星の名が付けられた。マーキュリーは南米に落下し、大部分が大気圏内で燃え尽きたが僅かに残ったものがアマゾン流域上空で爆発をおこし、樹木をクレーター状になぎ倒している。プルートーは電離層で爆散して、血のように赤い空を現出させた。アリストテレス迎撃戦でもっとも活躍したのはRSFの戦艦〈ネルソン〉で、ヴィーナスとサターンを撃墜破壊している。なお〈ネルソン〉はサターンを撃墜した時に破片を避けきれずに大破して軌道からはじき出され、乗組員は損傷を修理しつつ地球軌道への帰還の努力を続けたが戦没した。艦長ゴドー大佐をはじめとする全乗組員にヴィクトリア十字章が追叙されている。
注4:1996年10月の、ベルリンで起きたクーデター事件においても〈シエル〉装備の装甲部隊が活躍を演じたとのことである。但し、クーデター部隊の主力を担った武装SS「クロムウェル」に切り込んだ国防軍レーザー装輪装甲車実験小隊の支援に徹している。

要目

  • 全長 10.87m
  • 車体長 6.88m
  • 全高 2.53m
  • 全幅 3.71m
  • 戦闘重量 54トン
  • 発動機 SAVMV8X−1500 水冷V型8気筒ハイパーバー・ディーゼル 出力1500hp
  • 最高速度 71km/h
  • 航続距離 550km
  • 懸架方式 油気圧式(ハイドロニューマティック)
  • 武装 
    • 火砲 128ミリ滑腔砲×1(L60)
    • 銃器 
      • 12.7ミリ機関銃×1
      • 7.9ミリ機関銃×1
  • 乗員3名