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〈《マルダー》レン〉

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〈《マルダー》レン〉

TYPE−MOON「歌月十夜」レン


 ドイツの汎用装軌装甲車。1950年9月9日に制式採用された。装甲兵員輸送車Sdkfz251シリーズの後継としてドイツ陸軍に愛用され、大欧州条約機構軍の主力歩兵戦闘車となった。
 生産の主力は、錆びた黄金色の野原が広がるオストラント大管区、ラインシュタール社のクルガン工場である。「夢」のパターンが複数あるように対空ミサイルや対戦車ミサイルなど各種兵器のプラットフォームとなっている。生産台数は総計で数万両に上る。
 〈《マルダー》レン〉(貂(てん)の意)の原型はイタリアの輸送戦闘車〈《CA47》エリス〉である。〈《CA47》エリス〉は北米戦線において出色の戦いぶりを示し、ドイツ本国でもライセンス生産されることになった。
 投入される先は歩兵戦が続くウラル戦線である。縦横に走る河川、そして雪解けと秋には泥濘と化すロシアの大地。〈《マルダー》レン〉の悪路走破性能と浮航性能は、ロシアで用いるに最適だったのである。
 〈《マルダー》レン〉は確かに必要とされており、確かに必要だから作られた。しかしながらドイツ上層部は〈《マルダー》レン〉を見なかった。Sdkfz251シリーズで十分間に合い、必要無いと考えていたからだ。
 そしてドイツ本国軍が〈《マルダー》レン〉の能力を実際に確認したのは1953年の冬となった。ウラル山脈一帯に盤踞するロシア軍閥の一つ、腑海林派の一掃を図る「アインナッシュ」作戦である。

 前年の9月から10月、ドイツは攻勢に出たロア軍と諸派連合軍に対して、休戦で余裕が出来た西方の戦力を振り向けた。捷羸鐚屐劵▲襯ェイド《ティーゲル供侫屮螢絅鵐好織奪鼻咾鮴萋に押し立てたドイツ軍の反撃は苛烈なものとなり、総統ロンメルから全権をゆだねられたモーデルの指揮のもと、バルバロッサ・ポリス(モスクワ)東方のゴーリキーとカザンの間はロシア兵の死骸で埋め尽くされた。この戦いでドイツは恨み骨髄に徹するロア軍の領袖ミハイル・ロア・バルダムヨォンを討ち取り、その軍勢主力を壊滅させたものの包囲の目が荒く、ロシア諸派連合軍を逃してしまったのだ。
 「アインナッシュ」作戦が冬季に敢行されたのは腑海林派の領域がタイガ地帯だからである。果てしなく続く針葉樹の林、劣悪な道路事情、蛇行する河川、おびただしい沼沢地、ハラワタを踏んだような底なしの沼、腐食しないままの落葉や倒木が水にひたった大地、とっかかりもなく沈んでいく世界。
「ここはどこだ」
「世界の果てさ」
 そう返答がくるような場所だった。だが厳冬期ともなれば湿った大地は凍り付いて榴弾でもえぐれず、河川は極上のアウトバーンとなる。夏には結界として機能する大地が侵攻路に変じるのだ。
 この腑海林派一掃作戦にドイツの同盟軍もまた参加している。それは防御戦を得意とする腑海林派の固有結界を破るべく差し出された餌だった。
 猛攻をかけるドイツ軍の鋭鋒を避けるために後退した腑海林派軍は、包囲戦線の内イタリア軍が担当する箇所を弱体と見、戦力を集中して突破、そしてがら空きの筈のドイツ軍後方を襲おうとした。しかし彼らの前にいたイタリア軍は北米で経験を積んだ精鋭だったのである。周到に巡らした陣地に拠ったイタリア軍が頑強に抵抗して腑海林派軍の攻勢が止まったとき、ドイツの機動予備戦力が腑海林派軍に襲いかかり、これを破砕した。腑海林派の首領も包囲からの脱出はならず、ここに腑海林派は殲滅されてウラル山脈東麓もドイツの領域となり、ウラル戦線はかりそめの安定を得ることとなった。
 この時、ドイツ装甲擲弾兵の足となったのが〈《マルダー》レン〉である。前年にロシア諸派連合軍の脱出を許してしまったのは、戦線の隙間を埋める歩兵戦力を大量かつ迅速に運びきれなかったからだった。機動力を高めた主力戦車に追随するにはハーフ・トラックでは能力不足となっていたのである。
 〈《マルダー》レン〉は期待に違わなかった。ロシア軍に気づかれないよう迅速に装甲擲弾兵を戦線の焦点へ運んで舞台を整え、雪降る中を戦線のほころびを繕うために奔走し、夜間には陣地の弱い箇所を修正し、ときには救急箱を抱えた野戦病院ともなった。その懸命さに装甲擲弾兵らは感銘を受け、猫にまみれた少女を思わせるように〈《マルダー》レン〉の周囲に集っている。
 戦場においては戦車砲を喰らい、腹を切り裂かれて臓物をぶちまけた黒猫のように〈《マルダー》レン〉が無惨な姿をさらすこともあった。しかし装甲擲弾兵のパンツァー・シュレッケや収束手榴弾による決死の反撃で、死神というべきロシア戦車は撃破されている。
 ここに〈《マルダー》レン〉の奮戦ぶりは高く評価され、装甲擲弾兵達の信頼を確実なものとし、ドイツ軍内部における地位を確立したのである。

 ドイツでは〈《CA47》エリス〉をライセンスし、〈《マルダー》レン〉として生産するにあたってドイツ人好みの改修を加えている。それは徹底したもので、原型と大きく異なることになった。
 装甲は前面で20ミリ弾に耐えられるようにし、側面装甲も6ミリ厚の増加装甲をスペースド・アーマー式に取り付けた。
 砲塔は2名乗りで、右側に車長、左側に砲手が搭乗する。主砲はラインメタル・ボルジヒ製の20ミリ機関砲で、砲塔の上部に外装式に装備されている。同軸機関銃はマウザーの7.9ミリ。この外装式に機関砲を取り付けたことで、〈《マルダー》レン〉は大きなリボンを付けたように見える。 懸架装置はクリスティー式のままだが、〈《CA47》エリス〉の履帯を外して高速移動する能力は不必要と判断されて廃された。
 〈《マルダー》レン〉には数度に渡って近代化改修が施されている。1970年代には20ミリ機関砲を二重給弾方式とし、イメージ増強式の暗視装置と赤外線ポインターが追加された。これにより〈《マルダー》レン〉は「赤い瞳」をもつことになった。また、指揮車を除く全ての〈《マルダー》レン〉は砲塔右側に〈ミラン〉対戦車ミサイルのランチャーを三脚毎搭載するようになった。
 1980年代になってからはシャーシや懸架装置を改良し、さらに車体のほぼ全面にわたって装甲を追加している。砲塔もエリコン35ミリ機関砲を内蔵した大型砲塔に換装し、車体側面のガン・ポートも潰された。乗車戦闘が現実的でないと判断されるようになったからだ。これらの改修により、〈《マルダー》レン〉の車重は最終的に20トン台に達している。

 〈《マルダー》レン〉は歩兵戦闘車の成功作として高く評価されている。原型の〈《CA47》エリス〉が「見習いどじ悪魔」ならば、〈《マルダー》レン〉は「悪魔の領域に達した夢魔」というべき極めて高いポテンシャルを有しているのだ。主力戦車用の優れた「魔術回路」を移植されており、実際にアルゼンチンでは〈《マルダー》レン〉に105ミリ砲を搭載したTAM中戦車を主力戦車としている程である。
 それ故に、主力戦車を揃えられないほど国力の弱い国家では〈《マルダー》レン〉を主力戦車扱いしている。あれこれと手を入れただけあって〈《マルダー》レン〉は高価で、MBT〈レオパルト〉並にまでなっているのだ。ドイツ軍にとっても安い買い物ではないのである。そのため、軍備を維持できずにドイツ製兵器に食われてしまう、つまり借金で身動きがとれなくなる国家が出てくる事例が相次いでいるのだが。
 かくて、〈《マルダー》レン〉はドイツ兵器の一大ベストセラーとなって諸国との契約は多い上に下手な主力戦車よりも人気は高く、原型たる〈《CA47》エリス〉よりもメジャーとなって歩兵戦闘車の代名詞ともなっている。それは21世紀になっても代わるところはなく、兵器市場において日英や伊仏の歩兵戦闘車とシェアを激しく競い合っている。特に英日共同開発の警戒偵察車を市場から押し出すべく奮戦中である。

要目

A1型(括弧内はA3型)

  • 全長 6.8m
  • 全高 2.98m
  • 全幅 2.94m
  • 戦闘重量 18トン(22トン)
  • 発動機 マイバッハHL120TR(MTU MB883水冷ディーゼル)
    • 出力 350hp(600hp)
  • 最高速度 68km/h(71km/h)
  • 航続距離 300km(500km)
  • 懸架方式 クリスティー式
  • 武装
    • ラインメタル・ボルジヒ20ミリ機関砲×1(エリコン35ミリ機関砲×1)
    • マウザー7.9ミリ機関銃×1
    • ガン・ポート×4
  • 乗員 10名(内訳4名+6名)