!!!〈麻生《ミネルヴァ》久遠〉 !!Baseson・Tactics「ONE2〜永遠の約束〜」麻生久遠 !新偵察艦 {{br}}  海戦の激化、兵器の進歩は駆逐艦に大型化の道を歩ませ、第三次大戦前には4000トンクラスの巨大駆逐艦(*注1)までが建造される状況となっていた。{{br}} 更に新たな仮想敵となった日本では○6計画が推進されており、この情報は中立国を通じて欧州連合へと伝わっていた。{{br}}  このような大型駆逐艦に対抗する勢力としては、既に〈カピターニ・ロマーノ〉型が建造されていたがいかんせん3700トンでは兵装強化に限界があり、日本を始めとする枢軸国の駆逐艦達に対しての優位性が保てなくなってきていた。{{br}}  それに対するには結局、偵察艦も大型化するしかない。高性能の15センチ自動砲を搭載し、大戦中に損耗した巡洋艦勢力の補填、更には遠洋偵察巡洋艦として計画された〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉級の補完も含めた多様な任務をこなす偵察艦として建造されたのが本級である。{{br}}  予算の問題から出来るだけコストを減らし、数を揃える必要がある。別に「ヒロイン」でなくてもよい、ただし強大な「サブヒロイン」、必要ならば「ヒロイン」をも超える能力を持つこと。それが骨子だった。{{br}}  この難題をアドリアティコ造船とルモーニア造船官が引き受ける。設計期間の短縮を図り、かつ余裕のあるスペースを確保するため〈ルイジ・カドルナ〉級の船体設計を流用、艦首に顕著なシアを設け、船体構造と舷側装甲を強化することで原型の欠点である凌波性能と船体構造の弱さ、復原性能を改善。機関に駆逐艦のものを使用して量産性とコストダウンを図り、ボイラーも当然多種燃料燃焼方式を採用した。{{br}}  主砲は〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉と同く15.2センチ。各砲に揚弾機を二組づつ備えた自動砲で、これを軽量の連装砲塔に収めて前後に背負い式に配置。これと7.6センチ単装砲、新型のボフォース社製40ミリ機銃(70口径、発射速度分あたり240発)で武装を固め、他に上下二段に4連装発射管を重ねた8連装発射管を両煙突間に装備。原型では航空設備に与えられていた後部煙突後方のスペースに7.6センチ単装砲を左右並べて配置し、レーダーと連動したピアニストを思わせる強力な防空能力、世界初の8連装発射管から手刀のように放たれる強力な雷撃能力を持ち合わせることに成功した。{{br}}  一番変わったのが艦橋部分で、後方に傾けた前部煙突と一体化し、トップにレーダーを装備した〈貴島《ストロンボリ》和宏〉に近い姿に変更されており、イタリアらしい端整な艦容がより強く映えている。{{br}}  少しでも予算を節約し、量産態勢を整えるために建造は二社(アドリアティコ造船、リウニティ造船)に一括発注され、それぞれ女神名と形容詞艦名を名づけられて連続建造が図られたが戦局の悪化はそれを許さず、更に悪いことシチリア島パレルモで建造されたリウニティ造船分は空襲激化のため途中放棄され、結局完成は4隻のみに終わった。{{br}}  彼女達は重兵装のきらいがあり、後に問題を起こしたが約5000トンでこれだけの兵装と適度の防御、優秀な航行性能を持ちあわせたのはイタリアの建艦技術の優秀性の表れと素直に褒めるべきであり、端整で優美な艦容に負けず就役後の実績も高く、主目的以外にも一時的に(性能上・任務上の不満はあったが)船団護衛にも使用され、マルタ沖海戦では自分よりも大柄な日本巡洋艦相手に見事に立ち回って「限界」というものを払拭。戦後も第一線で活躍している。{{br}}  後から見ればイタリアの国力からすれば、巨大かつ高価な〈柴崎《ルクレツィア・ロマーニ》彩音〉級よりもむしろ本級を多数整備するべきではなかったと思われる。{{br}} {{br}} {{br}} #注1:それどころか第三次大戦後期に出現した〈小松原《雨霧》妙子〉級「駆逐艦」は実に排水量7500トンに達した。{{br}} 「こうなると、艦種というものは、何が何やらわからなくなってくる」(福井静夫「世界戦艦物語」から){{br}} !要目 *基準排水量 5425トン *常備排水量 6220トン  *全長 170.3m *全幅 15.5m *喫水 5.2m *主機 ベルッツォ式ギアードタービン2基/2軸  *主缶 ソーニクロフト水管缶4基(多種燃料燃焼方式) *出力 110000馬力  *速力 38ノット *航続力 14ノットで5000浬 *兵装 **52口径15.2センチ連装砲4基  **62口径7.6センチ単装砲5基 **70口径40ミリ連装機銃8基 **53.3センチ魚雷発射管8連装1基 **機雷120個搭載可能 *装甲 **舷側65ミリ **甲板30ミリ **砲塔80ミリ !同型艦 *〈麻生《ミネルヴァ》久遠〉 1949年10月2日竣工  *〈ウラニア〉 1950年竣工 1951年7月30日マルタ沖で沈没 *〈ダナイデ〉 建造中止 *〈ガランテュオーモ〉  *〈テリビーレ〉 1949年竣工 1951年10月20日沈没 *〈アルディート〉 1951年自爆処分